オススメの短編小説をオールジャンルで紹介!【29作品】

  • 2022年4月2日

はじめに

短編集の魅力は長編作品の魅力とは種類が違う

一冊の本の中で様々な体験が出来たり、1つの物語だと思っていたらそれぞれの物語が繋がっていたりと、短編集だからこそ味わえる多くの要素が存在する。

さらに、好きな作家の違った作風の物語に触れられるのも短編集が多い。おそらく実験的に短編で試すことが多いのかもしれないが、新たな魅力に出会えることも多い。また、空いてる時間にサッと読み終えることが出来るので、電車で読書に勤しむ方々にも優しい

今日はそんな短編集の中で、僕が実際に読んで面白いと感じた作品を厳選してオススメしたいと思う。

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ルールとして

  • 実際に読んで面白かった作品をまとめとして紹介
  • 2016年の段階で読んだことがある本をランキングではなく順番はランダムで紹介する[随時更新]
  • 現在個別ページがない作品もいずれ個別ページを作成し、映画、ドラマ、漫画、アニメなど、他の媒体になっているなどの詳細情報はそちらに
  • 基本的には良い部分をフォーカスする。気になった点は個別ページに書く
  • あらすじ・ストーリーは基本amazonからの引用で読んだ時に最大に楽しめるように基本的に重大なネタバレなし
  • ダラダラと長い記事なので目次を活用してもらえるとありがたい
  • 短編集の中で特に僕が読んでほしいおすすめ作のタイトルも記載する
  • シリーズ物の短編は除いて単独で楽しめる作品に限定する

新しい作品との出会いのきっかけになれば嬉しく思う。

きみはポラリス #三浦しをん

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あらすじ

どうして恋に落ちたとき、人はそれを恋だと分かるのだろう。三角関係、同性愛、片想い、禁断の愛……言葉でいくら定義しても、この地球上にどれひとつとして同じ関係性はない。けれど、人は生まれながらにして、恋を恋だと知っている──。誰かをとても大切に思うとき放たれる、ただひとつの特別な光。カタチに囚われずその光を見出し、感情の宇宙を限りなく広げる、最強の恋愛小説集。

感想

三浦しをんの最強恋愛小説・・・といっても「恋」というよりも「愛」という印象の素晴らしい小説集になっている。あらすじに書いてあるように何でもありの恋愛小説なので、ありきたりなキャッキャウフフな話はほとんど描かれない。そして、それぞれの主人公達にとって何より大切な光り輝くポラリス*1が描かれているが、その姿はひとつとして同じものはない。全ての作品はシンプルな愛情ではなく、ひと癖もふた癖もある出来事と寄り添っているような愛情なので、とても心を掴まれる。一風変わった恋愛小説を読みたい人へ強く勧めたい短編集。めっちゃ面白い本。

おすすめ作

わたしたちがした事

・本当はこの作品に限らず、全部オススメしたい短編集です。

独白するユニバーサル横メルカトル #平山夢明

あらすじ

タクシー運転手である主人に長年仕えた一冊の道路地図帖。彼が語る、主人とその息子のおぞましい所行を端正な文体で綴り、日本推理作家協会賞を受賞した表題作。学校でいじめられ、家庭では義父の暴力に晒される少女が、絶望の果てに連続殺人鬼に救いを求める「無垢の祈り」。限りなく残酷でいて、静謐な美しさを湛える、ホラー小説史に燦然と輝く奇跡の作品集。

感想

オススメするのをためらってしまう平山夢明の作品。おぞましく反吐が出るような残酷な作品集。僕自身は残虐性の強い作品に対して耐性があると思っていたが、その斜めに上回る作品だったので非常に衝撃を受けた。思わず顔をしかめたくなるような描写もあったが、それでも最後まで読んでしまう力のある文章で、ただ残酷でエグい表現を使うわけではなく、主軸となる物語の骨格がぶれないからこそ残虐性が強いスパイスとして物語に馴染んでいたように思う。ちなみにΩはマツコデラックスをさらに巨大にしたのイメージだった。グロい描写の作品なので読むときは注意して読んでほしい。

おすすめ作

Ωの聖餐

・エグいですが読んでりゃ慣れます。

君は素知らぬ顔で #飛鳥井千砂 

あらすじ

文具メーカーで働く由紀江は耕次と付き合って半年。気分屋の彼は機嫌が悪くなると手がつけられない。耕次の怒りを理不尽に思いながらも言い返せない由紀江。次第に彼の態度はエスカレートしていき……。(「今日の占い」より) とある女優の成長を軸に、様々な時代を生きる人々の心のささくれを丁寧に描いた六編。最後に新鮮な驚きと爽やかな感動が待っている、連作小説の傑作!

感想

個人的に大好きな飛鳥井さんの作品。それぞれの短編が絶妙にリンクする連作短編集。「ゆうちゃん」という愛称で人気の女優が、すべての話に少しずつ出てきており、その「ゆうちゃん」の存在が主人公たちに影響を与えていく。日常生活にある小さな心のささくれと、その後の小さなかさぶたを文字にして読ませてくれる飛鳥井さんらしい作品なので気に入っている。登場人物たちの心の在り方や物事の捉え方が感覚的に近く感じられるのは飛鳥井さんの素晴らしさだ。人はそこに存在しているだけで誰かに影響を与えている。逃げたくない時、負けたくない時は、胸を張って遠くを見つめて踏ん張ろうと応援してくれている作品だ。

おすすめ作

「どこかで誰かに」

・ゆうちゃんが素敵に登場しますよ。

金曜のバカ #越谷オサム

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あらすじ

天然女子高生と気弱なストーカーが繰り返す、週に一度の奇天烈な逢瀬の行き着く先は―?(「金曜のバカ」)「また、星が降る夜に逢えたらいいね」―流星雨の夜に出会った少女が残した言葉が、今胸によみがえる。(「星とミルクティー」)不器用だけど一途な思いを抱えた“バカ”たちが繰り広げる、愛と青春の日々。何かを好きになった時のときめきと胸の高鳴りに満ちた、ほっこりキュートな傑作短編集。

感想

愛すべきBAKA達を集めた越谷オサムの短編集。ジンワリとバカだなぁと思ったり、ほっこりとバカだなぁと思ったり、ホロリとしながらバカだなぁと思ったり出来る不思議な作品。想像と違った展開で楽しめる表題作の『金曜のバカ』などは、長編で書き直しても成り立ちそうな作品。他にも素敵なカップルになりそうで読んでいてウキウキしてしまう恋人同士の話や、女子高生と犬のそれぞれの視点を介して、読者に自然に客観性を持たせている素敵な作品まで多種多様に楽しませてくれる。気楽な気持ちで読んでもらいたい柔らかい作品集だ。

おすすめ作

「ゴンとナナ」

・おバカな話のはずなのに、視点の違いでホロリとさせてくれますよ。

短劇 #坂木司 

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あらすじ

懸賞で当たった映画の試写会で私が目にしたのは、自分の行動が盗撮された映像だった。その後、悪夢のような出来事が私を襲う…(「試写会」)。とある村に代々伝わる極秘の祭り。村の十七歳の男女全員が集められて行われる、世にも恐ろしく残酷な儀式とは?(「秘祭」)。ブラックな笑いと鮮やかなオチ。新鮮やオドロキに満ちた、坂木司版「世にも奇妙な物語」。

感想

普段は優しい小説を書いている印象の強い坂木司の短編集。坂木さんらしい爽やかな短編もあるが、良い意味で坂木司らしくない”黒い作品”も散りばめられた一冊になっている。僕は黒い坂木司も好きかもしれないと感じており、前半部分の作品よりも後半の作品の方が自然な流れを生み出している作品たちに見える。全体的に想像以上の面白い短編集だったので個人的には満足したが、評価が分かれる作品なのかもしれない。坂木司の他の作品を読んでいる人なら、ギャップを感じてひり付く感覚を楽しめるのではないだろうか?

おすすめ作

「穴を掘る」

・この短編集の中ではこの話がなんか好きです。

Presents #角田光代

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あらすじ

私たちはたくさんの愛を贈られて生きている。この世に生まれて初めてもらう「名前」。放課後の「初キス」。女友達からの「ウェディングヴェール」。子供が描いた「家族の絵」―。人生で巡りあうかけがえのないプレゼントシーンを、小説と絵で鮮やかに切りとった12編。贈られた記憶がせつなくよみがえり、大切な人とのつながりが胸に染みわたる。

感想

角田光代先生のプレゼントにまつわる短編集。人に贈ること、人から贈られること。そのどちらもとても素敵な行為だという事を改めて感じる事が出来る温かい作品。オープニングを飾る作品である『名前』がとても印象的だ。今までは意識をしたことがなかったが、確かに生まれて初めて贈られるプレゼントは名前で、その多くの名前には感情が込められている。誰もがもらっているプレゼントのはずなのに、その大切さには中々気づかないものだとしみじみ感じた。この作品たちを読むとプレゼントとは物の形をした“気持ち”を贈る行為であることに気付かされる。

おすすめ作

「初キス」

・照れる。ああ、もう照れる。

大人のための残酷童話 #倉橋由美子

あらすじ

名作童話を名アレンジ、黒い笑いを誘う創作童話に。取り扱い注意。嵐の夜の海で遭難した王子を助けた人魚姫(倉橋童話の人魚姫は上半身が魚、下半身が人間)。魔女に頼んで上半身も美しい女に変えて貰い、王子と再会。けれども王子が別な女との結婚を決めた時、人魚姫が再び魔女に願った無邪気で残酷な望みとは。世界中の名作童話を縦横無尽にアレンジ、物語の背後に潜む人間の邪悪な意思や淫猥な欲望を露骨に焙り出す。著者一流の毒に満ちた作品集。

感想

倉橋由美子が贈る剥き出しの童話から紡ぎ出す剥き出しの教訓。非常に面白くブラックユーモアに溢れた作品集。それぞれの話には教訓があり、一寸法師が姫に恋して姫の自慰行為を手伝ったりする『一寸法師の恋』での無理のある教訓から、『子供たちが豚殺しを~』や『鬼女の島』などの昔話の形をした、現代社会への皮肉に溢れた教訓など様々な表情を見せる。決してハッピーエンドの作品たちではないのだが、胸が痛くなるほどの毒でもないので、これくらいの毒にならずっと浸かっていたいと思わせてくれる作品集だ。

おすすめ作

異説かちかち山

・骨格は変わらずとも、視点が変われば物語は変わりますね。

四畳半神話大系 #森見登美彦

あらすじ

私は冴えない大学3回生。バラ色のキャンパスライフを想像していたのに、現実はほど遠い。悪友の小津には振り回され、謎の自由人・樋口師匠には無理な要求をされ、孤高の乙女・明石さんとは、なかなかお近づきになれない。いっそのこと、ぴかぴかの1回生に戻って大学生活をやり直したい!さ迷い込んだ4つの並行世界で繰り広げられる、滅法おかしくて、ちょっぴりほろ苦い青春ストーリー。

感想

森見作品らしい森見作品。短編と中編の間くらいの長さで描かれる、同じ時系列を過ごす4つのパラレルワールドの話で、連作短編集ともいえるし長編としても読める作品になっている。導入部に森見作品特有の読みにくさを感じるものの、世界観に慣れてからは想像もつかない展開の連続で、とにかくユーモアにあふれていて愉快。世界観に慣れてハマった人は、短編ではないが『夜は短し歩けよ乙女』も好きになれると思うのでオススメ。人間死ぬような目に合うと他人に対して寛容になる気がするので、苦労とは買ってでもするものだなと思う。すべての平行世界には決まったセリフが出てくるが、最後の話だけセリフがひっくり返るところが何ともオツだ。読んでいてニヤリと出来るはず。

おすすめ作

八十日間四畳半一周

・この発想は一体どこから生まれ、どうやって形になったのか興味が湧きます。

代筆屋 #辻仁成

あらすじ

どうしても伝えなきゃいけない想いがある。自分では表現できないほど強い想いがー。舞台は、吉祥寺の井の頭公園のそばにあるカフェ「レオナルド」。小説家のはしくれの「私」は、口コミで広がった「代筆屋」として、恋に悩む青年から、88歳の老女まで、老若男女のさまざまな想いの代筆を依頼されます。恋あり、別れあり、喜びあり、悲しみあり、依頼人らの人生模様と切実な想いは、手紙を通してあなたの胸を優しく包みこみます。思わず大切な人に手紙を書きたくなる一冊です。

感想

ラジオでメールのことをカードと呼んでいた辻仁成の小説というよりドキュメンタリーのような文章。おそらくフィクション。多くの人々の気持ちを代弁する代筆屋として関わった人々とその手紙が短編形式で描かれる作品。“代筆”という行為を本当に必要としてる客が出てくる作品もあったし、自分の人生の分岐点の手紙ぐらい甘えてないで自分で書けや!と思えるような客が出てくる作品もあるので、嫌な視点から見ても楽しめる。ただ、なんとなく作者のナルシチズムが感じられて気恥ずかしくなってしまう作品でもあるので、学生のラブレターの話ぐらいが感情的にはちょうど良かった。

おすすめ作

名前も分からぬ人へ向けた恋文の書き方

・恋文は素敵なものです。

教場 #長岡弘樹

あらすじ

君には、警察学校を辞めてもらう。この教官に睨まれたら、終わりだ。全部見抜かれる。誰も逃げられない。前代未聞の警察小説!アマゾンのあらすじが非常に短いので補足説明を入れるが、警察学校の教官である風間が学校内で起こる事件や、学生たちへの訓練として様々な手段を講じて修羅場を生み出し演出していく。警察官を育成するために必要なものの範囲をはるかに超えているように感じる指導だが、その指導を超えたものは皆成長していく。

感想

警察学校をモチーフにした連作短編集。基本的には風間教官がどの話にも関わっている点が共通している。風間教官の万能さは『ジョーカーゲーム』の結城中佐を思わせるので、一瞬同じ作者かと確認してしまった笑。作品としては、しっかりと話し合えば解決するような問題を取り扱った問題や、ぞっとするほど冷たい作品もあったので読みごたえがあった。個人的趣味としてはもう少し全体的にえげつなくても良かったが、警察学校という設定が存在する以上、やりすぎも良くないことに気が付いた。ちなみに続編の『教場2』もすでに発売されている。

おすすめ作

蟻穴

・ああああ、思い出しただけで耳がゾワゾワっ!

他人事 #平山夢明

あらすじ

交通事故に遭った男女を襲う“無関心”という恐怖を描く表題作、引きこもりの果てに家庭内暴力に走った息子の殺害を企てる夫婦の絶望(『倅解体』)。孤独に暮らす女性にふりかかる理不尽な災禍(『仔猫と天然ガス』)。定年を迎えたその日、同僚たちに手のひら返しの仕打ちを受ける男のおののき(『定年忌』)ほか、理解不能な他人たちに囲まれているという日常的不安が生み出す悪夢を描く14編。

感想

平山作品は素晴らしく不条理で胸糞悪く、読後感の悪さを楽しめる作品ばかりでこの短編集も例に漏れず悪夢のような内容。人が人に無関心であることはこれほど恐怖を生み出すのかと思うと恐ろしくなる。個人的に好きだったのは『定年忌』。ブラックだけどユーモアに溢れており、なんとなく筒井康隆先生が書きそうな作品に感じた。ブラックばかりの短編集という縛りがあるので心の準備が出来ていたが、知らなければもっと心にダメージを負っていたであろうクソったれな傑作ばかりなのでぜひ読んでもらいたい。ちなみに漫画家の富樫さんが解説を書かれており、その内容も秀逸だ

おすすめ作

人間失格

・本当のおすすめは冨樫さんの解説だったりする。

ガール #奥田英朗

あらすじ

わたし、まだオッケーかな。ガールでいることを、そろそろやめたほうがいいのかな。滝川由紀子、32歳。仕事も順調、おしゃれも楽しい。でも、ふとした時に、ブルーになっちゃう(表題作)。ほか、働く女子の気持ちをありえないほど描き込み、話題騒然となった短編集。あなたと彼女のことが、よくわかります。

感想

奥田英朗さんが働く女性目線でまとめ上げた短編集。女性の将来に対する漠然とした不安や、女性であることで感じてしまう嫌なストレスが表現されていてうなだれてしまうが、読み進めていくとどの話も読後感が素晴らしくてなんとなく前向きになれる良作。どの話も結構良い男が出てきて女性たちと接しているが、流石にこんな男はいねぇだろって思う登場人物もいたりする。ちなみに表題作の『ガール』は読んでいてちょっと焦ってしまう自分がいたりした。

おすすめ作

ワーキング・マザー

・奥田さんの女性目線ってどこから生まれるのだろうか?

光媒の花 #道尾秀介

あらすじ

認知症の母と暮らす男の、遠い夏の秘密。幼い兄妹が、小さな手で犯した罪。心の奥に押し込めた、哀しみに満ちた風景を暖かな光が包み込んでいく。儚く美しい全6章の連作群像劇。第23回山本周五郎賞受賞作

感想

今まで読んでいた“読者を大いに手のひらで転がしてくれるミステリー”の道尾作品というよりも、やや純文学寄りに感じる連作短編集。歪んだ性描写の中に退廃的な美しさがあり、全編を通じて最後には小さくも希望の光が感じられる良作。どの作品も印象的で心に残るが、僕は特に『冬の蝶』と『春の蝶』が引き込まれた。登場人物たちは皆小さく救われているが、冬の蝶の主人公だけは何とも切なすぎる。とても上質な味わいの作品をなので是非読んでもらいたいオススメ作品。ただ、装丁が宗教本のように変に神々しい笑。

おすすめ作

春の蝶

・年に1冊はこういった美しく朽ちるような話が読みたい。

二人の彼 #群ようこ

あらすじ

ああ、どうしたらいいの…?喧嘩が絶えない両親、嫌われたくなくて目の前でトイレにすら行けない彼と、何でも打ち明けられるもう一人の彼。こっそり会社を辞めてしまった不甲斐ない夫に、ダイエットの成果に一喜一憂し家族を戸惑わせる自分。自分も含め、周りは困った人と悩ましい出来事ばかり。けれど、そんな人々の姿に思わずほろりとすることだってあるのだ。日々の暮しで生まれる喜びや悲しみ、怒りに楽しみ…。ささやかだけれど大切な、人々の“思い”をふんだんにつめこんだ、誰もがうなずく十の物語。

感想

群ようこさんの作品。女性が何となく引っかかってしまうあるある的日常を切り取った共感系文章。わりと昔の作品ではあるが、古く感じないということは女性の視点は昔からそんなに変わっていないという事か?性別の問題もあるので僕は完全に共感は出来ないが、要所要所で「わかるなぁ」と共感できる所があった。特に表題作の『二人の彼』は非常に共感出来る。ドキドキして緊張してしまう彼と、すべてオープンに出来る彼が登場する。「好き」と「安心」はバランスが難しいものだ。ちなみにダイエットの話も微笑ましいので面白い。

おすすめ作

二人の彼

・これは恋愛における永遠のテーマかもしれないですね。

初恋温泉 #吉田修一

あらすじ

初恋の女性と結婚した男。がむしゃらに働いて成功するが、夫婦で温泉に出かける前日、妻から離婚を切り出される。幸せにするために頑張ってきたのに、なぜ―表題作ほか、不倫を重ねる元同級生や、親に内緒で初めて外泊する高校生カップルなど、温泉を訪れる五組の男女の心情を細やかにすくいあげる。日常を離れた場所で気づく、本当の気持ち。切なく、あたたかく、ほろ苦い恋愛小説集。 

感想

吉田修一が贈る温泉を舞台にした恋愛小説短編集。温泉という身近な非日常だからこそ感じる特別な気持ちを小説にしている。表題作の『初恋温泉』は離婚するパートナーに対して気持ちが残っているだけに切ない気持ちになる。奥さんの言葉で「幸せだけをつないでも幸せとは限らない」は響いてしまった。他にも感情移入できない話や、想像もしてなかったから怖さを感じる話もあり、一つとして似た話がなく面白い。ちなみに最後の『純情温泉』はとてもピュアな作品。人の気持ちに永遠はなく、変化していくものだが、変わらないと信じる純情な気持ちを持って明日に向かう男はいずれいい男になれるはず。応援したくなる作品。

おすすめ作

純情温泉

・大人が読むと、頑張れ!その気持ち忘れんなよ!!と応援したくなりますよ。

新釈 走れメロス #森見登美彦

あらすじ

日本一愉快な青春小説/こんな友情もあったのか/あの「名作」が京都の街によみがえる!??あの名作が京都の街によみがえる!? 「真の友情」を示すため、古都を全力で逃走する21世紀の大学生(メロス)(「走れメロス」)。恋人の助言で書いた小説で一躍人気作家となった男の悲哀(「桜の森の満開の下」)。――馬鹿馬鹿しくも美しい、青春の求道者たちの行き着く末は? 誰もが一度は読んでいる名篇を、新世代を代表する大人気著者が、敬意を込めて全く新しく生まれかわらせた、日本一愉快な短編集。

感想

過去の歴史的文学の骨組みを残して森見登美彦風に再構築している良作。原作小説へのオマージュに敬意とバカらしさを捧げた楽しい作品たちで、上手く表現出来ないが、自分の読みたい文章を読んでいるというより、森見さんの描きたい文章を読んでみたら楽しかったという印象の短編集。表題作の『走れメロス』の二人の友情も笑えて素晴らしく、原作を読んでいることで楽しめる独特の喜びを感じられた。ちなみに後半の二作品は読んだ事がないので、これを機会に一度目を通したい。

おすすめ作

藪の中

・人生はいつだって藪の中のようなものです。

壁抜け男の謎 #有栖川有栖

あらすじ

富豪の屋敷から名画が盗まれた。しかし屋敷内に作られた迷路の中に絵を残し、犯人だけが消失した!?(「壁抜け男の謎」)小説家に監禁された評論家。かつては酷評していたが、最近は誉めていたのに。なぜこんなことを?(「屈辱のかたち」)犯人当て小説から、敬愛する作家へのオマージュ、近未来小説、官能的な物語まで。色彩感豊かな「16」の物語が貴方を待つ。有栖川有栖の魅力を満載した、傑作作品集。

感想

シリーズものが多い有栖川作品。長編とは違い、短編集ならではの文章構成もあると思うので長編有栖川とは違った色が出ている。表題作の『壁抜け男の謎』は正直な話そこまで面白い話とは思えなかった。最後の作品である『恋人』のインパクトが強すぎて他の作品の印象が吹き飛んでしまったというのもあるが、読む前に題名を「変人」と読み間違えていたら、実際は『恋人』というタイトルで、読み終わったらやっぱり「変人」で合ってたんじゃないかと思ってしまった笑。フェチズムの一つをクローズアップすると、どうしても「変人」になってしまうものだ。

おすすめ作

恋人

・一度読んでみてもらいたいという意味で。僕の癖とは無関係ですよ、いやホント。

賢者の贈り物 #石持浅海

あらすじ

女の子たちと家でパーティー。翌朝、僕のサンダルが消え、女性物の靴が一足。誰かが、酔っ払って間違えたようだ。でも誰も申し出てこない。なぜ?(『ガラスの靴』)。素性をなかなか明かしてくれない僕の彼女。なぜ?(『泡となって消える前に』)。フィルムカメラからデジタルカメラに替えた私。しかし妻からカメラのフイルムが贈られて…。なぜ?(『賢者の贈り物』)など。思考の迷路にいざなう10の物語。

感想

論理的な思考を追求した非常に石持浅海らしい連作短編集で、各話に必ず登場する磯風さん(表紙の女性がおそらく磯風さんだと思う)が何とも怪しげで強烈に魅力的なアクセントになっている。というよりも、むしろ磯風さんがいないと地味なロジカル推理短編集になってしまっていたかもしれない。それほど磯風さんが素敵。ビバ磯風さん。推理部分だけではなく、磯風さんに対して芯の強い優しい女性でいてほしいという願望が生まれる不思議な本だった。

おすすめ作

泡となって消える前に

・どの話の磯風さんも本当は素敵なんですけどね。

未来いそっぷ #星新一

あらすじ

『アリとキリギリス』『ウサギとカメ』など、誰でもごぞんじの寓話の世界。語りつがれてきた寓話も、星新一の手にかかると、ビックリ驚く大革命。時代が変れば話も変るとはいえ、古典的な物語をこんなふうに改作してしまっていいものかどうか、ちょっぴり気になりますが―。表題作など、愉しい笑いと痛烈な風刺で別世界へご案内するショート・ショート33編。

感想

ショートショートの王様、星新一作品。昭和40年代の作品なのに今読んでも違和感を覚えないのはただただ驚愕の一言。解説を読んでナルホドと思ったのだが、ショートショートは飾り付けなしの素材の面白さが無ければ成り立たない。たった2ページの話の中でもニヤリとしてしまう物語があったりして、星新一が生み出す素材を存分に味わう事が出来る作品集だ。『ある夜の物語』はにこやかになれる良作。『シンデレラ王妃の幸福な人生』は人間の本質的なものを感じる作品。この短編集は年齢を重ねることで楽しめる側面もあるので社会人にオススメしたい。あと何よりも1作品の短さが電車通勤に優しいのもオススメの理由だ。

おすすめ作

ある夜の物語

・ショートショートでにこやかになれるって結構すごいと思います。

ラブコメ今昔 #有川浩

あらすじ

突っ走り系広報自衛官の女子が鬼の上官に情報開示を迫るのは、「奥様のナレソメ」。双方一歩もひかない攻防戦の行方は?(『ラブコメ今昔』)。出張中新幹線の中で釣り上げた、超かわいい年下の彼は自衛官。遠距離も恋する二人にはトキメキの促進剤。けれど…(『軍事とオタクと彼』)。「広報官には女たらしが向いている」と言われつつも彼女のいない政屋一尉が、仕事先で出会ったいい感じの女子。だが現場はトラブル続きで…(『広報官、走る!』)。旦那がかっこいいのはいいことだ。旦那がモテるのもまあまあ赦せる。しかし今度ばかりは洒落にならない事態が(『青い衝撃』)。よりによって上官の愛娘と恋に落ちてしまった俺。彼女への思いは真剣なのに、最後の一歩が踏み出せない(『秘め事』)。「ラブコメ今昔」では攻めに回った元気自衛官、千尋ちゃんも自分の恋はいっこうにままならず…(『ダンディ・ライオン―またはラブコメ今昔イマドキ編』)。

感想

自衛隊が大好きな有川浩の恋愛自衛隊短編集だが、主題は恋愛以外にある。どちらかというと自衛隊の厳しさや、その家族の覚悟が書かれている短編が多かった印象を受ける。それでも表題作の『ラブコメ今昔』は奥様が可愛らしくて素敵だったり、『広報官、走る!』などは一番ラブコメ感が出ていたりと、ニヤニヤしてしまう話が満載で楽しく読める。唯一『青い衝撃』という作品に関しては、登場人物の奥さんに自己投影すると辛くなりすぎてしまうので注意が必要だ。そして一番オススメしたい作品は最後の『ダンディ・ライオン』だ。素敵な作品なんですよー。

おすすめ作

ダンディ・ライオン

・いくつになっても恋愛の素敵さはありますよね。

儚い羊たちの祝宴 #米澤穂信

あらすじ

夢想家のお嬢様たちが集う読書サークル「バベルの会」。夏合宿の二日前、会員の丹山吹子の屋敷で惨劇が起こる。翌年も翌々年も同日に吹子の近親者が殺害され、四年目にはさらに凄惨な事件が。優雅な「バベルの会」をめぐる邪悪な五つの事件。甘美なまでの語り口が、ともすれば暗い微笑を誘い、最後に明かされる残酷なまでの真実が、脳髄を冷たく痺れさせる。米澤流暗黒ミステリの真骨頂。

感想

米澤穂信のホラーテイストミステリーの連作短編集。ラスト一行の衝撃に拘ったという煽り文で売り出されていたが、ラスト一行をそこまで重視した作品には思えないので、出版社の煽りが作品の邪魔をしているパターン。ただ、単純に作品が面白いので、物語から漂ってくる暗く湿った雰囲気は読み手の心をくすぐってくれる。『山荘秘聞』『玉野五十鈴の誉れ』等はただ暗いだけの作品ではなく、作者の米澤穂信との駆け引きが楽しめる。しっかり読まないと、読み取り不足でどこにキーポイントがあるのかわからなくなってしまう作品もあるので集中して読みたい作品集だ。

おすすめ作

玉野五十鈴の誉れ

・ある種のリドルストーリー。誉れの意味とは何なのか?単純に捉えるか、それとも裏を読むべきか・・・ちなみにこの作品に関してはこんな考察もあります。未読の方はご注意を!

黒笑小説 #東野圭吾

あらすじ

作家の寒川は、文学賞の選考結果を編集者と待っていた。「賞をもらうために小説を書いているわけじゃない」と格好をつけながら、内心は賞が欲しくて欲しくてたまらない。一方、編集者は「受賞を信じている」と熱弁しながら、心の中で無理だなとつぶやく。そして遂に電話が鳴って―。文学賞をめぐる人間模様を皮肉たっぷりに描いた「もうひとつの助走」をはじめ、黒い笑いに満ちた傑作が満載の短編集。

感想

有名な東野圭吾作品を紹介するのは若干恥ずかしいのだが、この作品はまた違った東野圭吾が読めるのでおすすめ。黒笑という名に恥じないブラックユーモア満載の一冊。東野さんの他の作品では見られない皮肉と攻撃性は思わずニヤリと笑え、息抜きになる。個人的にはこのテイストの長編作品などを作ったら、新たな東野圭吾が見えるのではないかと思ったりしている。ちなみに、同じくショートショートのシリーズで『怪笑小説』『毒笑小説』『歪笑小説』という作品もあり面白い。僕は『黒笑小説』が好きだが、ただの好みの問題にすぎない。

おすすめ作

ストーカー入門

・立派なストーカーになれるのか?というか、別になりたくは・・・

あらすじ

「いらっしゃーい」。伊良部総合病院地下にある神経科を訪ねた患者たちは、甲高い声に迎えられる。色白で太ったその精神科医の名は伊良部一郎。そしてそこで待ち受ける前代未聞の体験。プール依存症、陰茎強直症、妄想癖…訪れる人々も変だが、治療する医者のほうがもっと変。こいつは利口か、馬鹿か?名医か、ヤブ医者か。

感想

シリーズものは除くルールで紹介していたが、この作品は例外的に紹介しないと勿体ないのでご紹介。精神科医の伊良部が患者と接していく連作短編集なのだが、、なんとも脱力してしまうのにワクワクして読み進めてしまう不思議な作品。この作品の魅力は、自分のペースで読んでいる文章なのに、そこに“間”の感覚を感じとれることだ。おそらく、作者である奥田英朗の意図どおりに笑わされているので、思わずクスリとしてしまう“”を的確に表現できる作者のセンスにはただただ脱帽だ。伊良部については、名医と迷医の判断が絶妙な曖昧さで、それが何よりも魅力的に感じる。

おすすめ作

いてもたっても

・気になっちゃうことってあるんだよなぁ・・・

空中ブランコ #奥田英朗

あらすじ

伊良部総合病院地下の神経科には、跳べなくなったサーカスの空中ブランコ乗り、尖端恐怖症のやくざなど、今日も悩める患者たちが訪れる。だが色白でデブの担当医・伊良部一郎には妙な性癖が…。この男、泣く子も黙るトンデモ精神科医か、はたまた病める者は癒やされる名医か!?直木賞受賞、絶好調の大人気シリーズ第2弾。

感想

『インザプール』の続編で伊良部シリーズ第二弾。こんなにニヤニヤして楽しく、幸せな気持ちになれる作品は希少で、前作に比べて読後感がさらに味わい深いものに変わった印象がある。伊良部がやっていることは天然の自己開示で、患者との距離が一瞬で消え去る様は本当に小気味よく、患者たちの悩みや回復に向かう透き通るような感情も良くわかるので、意外とテーマは深いのではないかと感じている。ちなみに短編集ではないが『町長選挙』という続編の長編も発売されている。

おすすめ作

義父のヅラ

・この作品、思い出しても面白い。今この瞬間も面白いんだよなぁ・・・

くたばれPTA #筒井康隆

あらすじ

マスコミ、主婦連から俗悪の烙印を押されたSFマンガ家の怒りが爆発する「くたばれPTA」。高度成長時代の会社員のモーレツぶりを描いた「猛烈社員無頼控」。処女が夜ごと10億の男たちと交わる「20000トンの精液」。一卵性双生児の弟が、自分の恋人を奪った兄に奇想天外な方法で復讐する「かゆみの限界」…風刺SFからホラーまで、黒い笑いが全開のショート・ショート24編。

感想

好きで何度も読み直している筒井康隆さんのショートショート。『かゆみの限界』『20000トンの精液』などの意表を突くアイデア。『歓待』や表題作の『くたばれPTA』などの、思わずニヤリとしてしまうセンスには時代を超えても変わらない魅力がある。ショートショートなので感情の揺れ幅は少なく、素材(アイデア・センス)の味が十二分に味わえる傑作短編集だ。ちなみに同氏の作品である『笑うな』も傑作のショートショートだと思う。

おすすめ作

20000トンの精液

・VR技術の成長が著しいので、この作品のような出来事もそろそろ起きるかもしれない。

満願 #米澤穂信

あらすじ

人を殺め、静かに刑期を終えた妻の本当の動機とは―。驚愕の結末で唸らせる表題作はじめ、交番勤務の警官や在外ビジネスマン、美しき中学生姉妹、フリーライターなどが遭遇する6つの奇妙な事件。入念に磨き上げられた流麗な文章と精緻なロジックで魅せる、ミステリ短篇集の新たな傑作誕生。

感想

ミステリー賞を総なめにした米澤穂信の読後感の悪い短編集。感覚的には「儚い羊たちの祝宴」にとても近く、小さなゾワゾワ感を味わえるが、この作品のほうが作品を彩る装飾品を排除している分、剥き出しに勝負している印象を受ける。全体的に落ち着いた話(夜警)だったり、一見すると爽やかな話(死人宿)に感じられるのに、最終的には米澤穂信らしい嫌な思いを感じさせてくれるあたりはファンにとってうれしい限り。表題作にあたる『満願』は、一番作品の空気が好みだったので、長編で読んでみたいと感じてしまう。どの作品のオチも秀逸なのも流石だ。

おすすめ作

「関守」

・作品の構成が世にも奇妙な物語のようでスリリングでした。

家族シアター #辻村深月

あらすじ

お父さんも、お母さんも、おじいちゃんも、おばあちゃんも、娘も、息子も、お姉ちゃんも、弟も、妹も、孫だって―。ぶつかり合うのは、近いから。ややこしくも愛おしい、すべての「わが家」の物語。

感想

家族をテーマにした辻村深月の短編集。大きな驚きがある作品ではないが、どの小編も輝いていて温かくクオリティが高い。家族という距離は友人のそれよりも近い。近いから傷つき、近いからまた支え合えるという関係性は、家族という特別だからこそ生まれるもので、その生まれた信頼関係は家族の絆をさらに強く結び付けていく。どの作品も読者をあたたかい気持ちにさせてくれる。というか後半ほとんど泣いた気がする、笑。本当に素敵な短編集なので、ぜひ学校の図書室に置いて欲しい一冊。

おすすめ作

「タイムカプセルの八年」

・僕は不器用な父親というものに感動を覚えるらしい

風に舞いあがるビニールシート #森絵都

あらすじ

才能豊かなパティシエの気まぐれに奔走させられたり、犬のボランティアのために水商売のバイトをしたり、難民を保護し支援する国連機関で夫婦の愛のあり方に苦しんだり…。自分だけの価値観を守り、お金よりも大切な何かのために懸命に生きる人々を描いた6編。あたたかくて力強い、第135回直木賞受賞作。

感想

直木賞を受賞した森絵都さんの短編集。感嘆のため息が出るような素晴らしい本。収録作品は驚いたり爽やかだったりと、すべての小編の読み口は違っているが、登場人物たちが「自分の大切なもの」の為に奮闘する姿が一貫して描かれている。表題作の力強い感動も、パティシエのゾクッとする驚きも芯の部分では人生の中での価値観の違いを見せつけられる内容なので、短編にもかかわらず緊張感を感じながら読めるのは凄い。思わず見てみぬふりが出来なくなるような大切な何かに出会うかもしれないと思うと、人生は僕が思うより唐突で刺激的かもしれない。

おすすめ作

「ジェネレーションX」

・独特のシュールな面白味から爽やかな感動に繋がる名作。舞台に向いてそう。

浮遊霊ブラジル #津村喜久子

あらすじ

初の海外旅行を前に死んでしまった私。幽霊となって念願の地を目指すが、なぜかブラジルに到着し……。川端賞受賞作「給水塔と亀」を含む、会心の短篇集!

感想

アイデアは当然として、鮮やかなオチこそが短編の魅力だと思っていたが、この作品はアイデア+視点と描き方で魅せる短編作品。短い文章の中に津村喜久子だから書ける独特のリズムの面白味が織り込まれているから、大きな事件が起きてなくてもずっと面白い。急に物語が終わったりするので読者を甘えさせない印象もあるが、全体的には脱力するような考えが淡々と真面目に書かれているのが面白いのだと思う。物語の見せ方も巧妙だしタイトルもセンスがあって格好いい。ずっと読んじゃう短編集。津村作品いいよなぁ…。

オススメ作

『アイトール・ベラスコの新しい妻』

・スクールカーストをこういった形で描く視点が素晴らしいと思う。

最後に

短編集が長編作品と一番違うところは、1つの物語に触れる時間が短いことだ。

短い時間の中で、喜んだり、悲しんだり、驚いたり出来る作品は、余計な装飾のない“素材の味”そのものが魅力的でなければならない。短編集とはプロの作家たちが提供する“素材の味”を立て続けに味わうことが出来る、豪華で幸福な存在なのではないだろうか。

この文章が、様々な短編集から長編作品とは違った魅力を感じ取ってもらうキッカケになれたなら嬉しく思う。

長くなってしまった。

最後まで読んでくれた方へ感謝を。

*1:引用Wiki:ポラリス (Polaris) は、こぐま座α星、こぐま座で最も明るい恒星で2等星。現在の北極星である。

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