「なぜモテないかというと、それは、あなたがキモチワルいからでしょう。」
そんな辛辣な一文から始まる自己啓発本・・・とりうよりモテ啓発本がこの本、二村ヒトシ『すべてはモテるためである』である。
モテない男からすると、
「自分が持てないのは自分が悪いわけじゃないんだ!!」
と思いながら絶望という崖から落ちないように踏ん張っていたのに、
「キモチワルい」
という言葉によって、背中を押すどころか崖ごと爆破するような抹殺の仕方をしてくる本に見えるかもしれない。
しかし、そんな辛辣な意見を伝えることも含めてすべてはモテるためということなのだろう。
読んで見ると意外と愛に溢れている部分もあるので、今回はこの本のザックリとしたネタバレ感想を書いていきたいと思う。
果たして、この本を読むことで本当にモテるようになるのだろうか。
すべてはモテるためである
あなたはなぜモテないのか。それは、あなたがキモチワルいからです―。
数ある「モテ本」のなかで異彩を放ち、各方面で話題を呼んだ名著(1998年刊)が大幅加筆修正のうえ再登場!
「なぜモテたいのか」「どんなふうにモテたいのか」モテを極めるには、こうした問いからスタートし、自分を知ることである。テクニックを超えた「モテ」の本質に迫る!巻末に気鋭の哲学者・國分功一郎氏との対談を収録。 (引用|amazon)
作者について
まずは作者である二村ヒトシ氏について。
引用|http://wol.nikkeibp.co.jp/article/column/20141212/196803/
元々はAV男優を経てAV監督になった人物で、近年では執筆活動も活発に行っている。
多くの女性と関わっている人物なので、対女性に対する扱い方・接し方については説得力のあるバックボーンの持ち主といえる。
この作者の文章で上手い!と感じるのは、一般的な男性の隠れたコンプレックスを巧みに刺激しているところだ。
というのも、普通の男性はAV男優やAV監督になろうとはしないが、潜在的に憧れや経験人数等の劣等感を抱いている部分がある。必ずある。
作者はそのことを理解した上でこの文章を書いているので、かなり強気で刺激的な文章が書けるということだ。
モテない読者にしてもAVに携わっていた人間のいうことなのだから、女性関係に関してはその通りなのだろうと、納得せざるを得ないのだ。
ただし、Wikipediaで撮影した作品のタイトルを見る限り、AV監督としての才能は疑問が残る。
僕が監督になった方がいい作品を撮れる。間違いない。
内容のまとめ
とりあえず目次はこんな感じ。
第1章 どんなふうにモテたいのか?どんなふうにモテないのか?
第2章 恋愛をする前になんとかしておいたほうがよいこと。
第3章 どこで出会うのか。誰と出会うのか。
第4章 どうやって「恋愛」するのか。
第5章 モテてみた後で考えたこと。
凄くシンプルでスッキリとした内容。
これらの章は要約するとこの本は以下のような内容でまとめられている。
第1章
第1章ではまず目標を定めて、自分自身の状態を把握させることが中心。
例えば、ゲームの説明書を読んでいるようなもので、魔王を倒すことがゲームの目的であることや、主人公(つまり自分)が、どういうレベルで、どういう特徴のキャラクターなのかを自分自身で客観的に把握することの重要性が説かれている。
あなたにとってモテるって何なの?と問いかけられる章なので、自分にとってモテることとは、
彼女を作りたいことなのか。
女の子と笑顔で飲みまくれることなのか。
もしくはただただ3Pを、何でもいいからとにかく3Pをしたくてしたくて堪らないからモテたいのか。
そういった目標に合わせて行動が変わってくるということが書かれている。
あと、何故今自分がモテないのかも書かれていて、それらがしっかりと分類されて紹介されているのは、読み手としては読みやすくて面白い。
第2章
第2章では最低限必要な自分の能力を磨くコツが書かれている。
同じくゲームで例えるならば初期ステータスの振り分けをしたり、冒険に出れるだけの最低限の装備を整える行為について書かれている。
要は裸でモンスターにやられてしまわないようにする注意書きのようなものだ。
現実問題として容姿をどの程度改善するか。
また内面のバカや臆病についても最低限治さなければならない部分を包み隠さず指摘している。
その中でも、
<第2章の4【オタク】は治さなくていい、が>
の部分は一読の価値があると感じた。たぶん結構いいことが書いてある。
第3章
第3章では実践的な行動が生々しく書かれている。
女性に対するレベル上げの方法やら、どんな場所でどんな風にレベルを上げればいいのかという、ある意味ではモテない男性が一番聞きたいであろう内容が綴られる。
ゲームで言ったらレベル上げなり実際にストーリーを進めているようなところか。
てか、とりあえず風俗行っとけ見たいなことが書かれている、笑。
第4章
第4章ではさらに踏み込んだ実践的な行動や考え方が書かれている。
ワンランク上の恋愛を学び、モテる男として大海原に漕ぎ出していくような内容になっている。
上級職に転職してボス倒そうぜ的な感じかね。強引だけど。
ちなみに第5章はあとがきのような感覚なのでエンドロールって感じ。
体質改善させる本
全体的にかなりキツめな表現で書かれているが、言っていることは本当に的を射ている印象なので、傷ついてもいいから最終的にモテたいと思っている悩める男性は手に取ってみてもいいかもしれない。
また、普通の恋愛ハウツー本のように、
- ○○すれば貴方もモテる!
とか、
- ○○女はこう口説け!
みたいなクソくだらない本も悪くないのだが、そういった一時的、かつ表面上の対処療法のような恋愛アドバイスが書いてある啓発本ではない。
どちらかというと、そういう表面的なことは置いておいて、自分自身に目を向けさせることで、自分を客観的に理解させることで自信をつけさせる本。
言い方を変えると、
「恋愛に対する”自己肯定力”を付けさせる本」
というのが読んだ僕の印象だ。体質改善させるための本といっていいかもしれない。
読んだ人間全員がモテるわけではないと思うが、数人に一人は劇的に変わる可能性を秘めていると思うので、一度チャレンジしてこの本を手に取るのもアリかなと感じた。
早漏について
本文の中にこんな一文がある。
たぶん早漏って、早漏が問題というより「早漏で悩んでいること」が問題なんです。
言葉が言葉なだけで力強く言うのもためらわれるが、これはかなりの名言だと思う。
というのもこの言葉は早漏に限ったことではなく、人生のすべてのコンプレックスに当てはまる真理のようなものだからだ。
童貞にしてもそう。
「童貞で悩んでいること」が問題なだけ。
それを自分が気にしているだけ。
不細工もそう。
「不細工で悩んでいること」が問題なだけ。
笑顔で楽しく生きていられるなら、そんなのどうだっていいことなんだよね。
ついつい忘れちゃうけど。
最後に
モテない男をしっかりと分類していてその精神状態まで把握しているのは素晴らしいと思う。
その分類された精神状態ごとに対処法があるので何かにすがりたい非モテ男は是非参考にしてもらいたい一冊だ。
ただ内容はいいが、文章の表現を読んでいてちょっと疲れてしまうこともあるかもしれない。
親しげな距離感と語り口調に、何故か反発したくなってくるというか、なんというか。
もしかしたら、あふれ出る性体験への自信が文章から感じられて、同性として煩わしく感じるからなのかもしれない。
もしそうならば、それは単なるジェラシーということになる。
できれば、このモヤモヤも出来れば分類してほしいものだ。