したきりすずめ
むかし、むかし、ある所に
心のやさしいおじいさんと
意地悪なおばあさんが住んでいました。
「おじいさん、早く仕事に行ってきなさい」
「はいはい、行ってくるよ」
おじいさんは、山へたきぎをとりにいきました。
「よいしょ、よいしょ」
おじいさんは一生懸命働いたのでお腹がすいてきました。
「よし、そろそろお昼ご飯にしよう」
おじいさんがおむすびを食べていると、一匹のすずめがやってきました。
「チュンチュン」
「おや、どうしたんだい?ご飯が食べたいのかい?ほれどうぞ。」
「チュンチュン」
おじいさんがあげたおむすびを、すずめは喜んで食べました。
「おまえさん、ひとりぼっちなのかい?家で飼ってあげてもいいんだが・・・」
おじいさんはすずめが大好きですが、、おばあさんはすずめは大嫌いでした。
おじいさんは、おばあさんの事がきになりましたが、ひとりぼっちのすずめを放っておけず
家に連れて帰ることにしました。
「もう、おじいさんったらすずめなんて連れて帰ってきて!私がすずめ嫌いなのしってるでしょう!まったく!」
案の定、おばあさんは怒ってしまいました。
そして、翌日。
「おばあさんや、わしは仕事にいってくるから、すずめにエサをあげておいてくれよ」
そう言うと、おじいさんは仕事にでかけていきました。
「ふん!だれがエサなんかやるものか!わたしは洗濯のりを作るので忙しいんだよ!」
おばあさんがエサをくれないので、すずめはだんだんとお腹がすいてきました。
すずめは、おばあさんが庭で洗濯をしているすきに、洗濯のりを食べてしまいました。
「あー!大事な洗濯のりを食べちまったか!?なんてすずめだ!」
おばあさんはたいそう怒ってすずめを捕まえると、舌をちょん切ってしまいました。
舌をきられたすずめは山の方に飛んで帰りました。
夕方になって、おじいさんが帰ってきました。
「ただいまー!あれ、すずめはどこにいったんだい?ばあさんや。」
「あのすずめなら、山の方へ飛んで行っちまったよ。」
おじいさんは、おばあさんがすずめの舌をちょん切った話を聞いてびっくりしました。
おじさんはお詫びを言うためにいそいですずめを探しにいきました。
おじいさんは、山の中を、
「すずめや~どこだ~!舌きりすずめはどこだー!」
と言いながら歩いて行きました。
おじいさんは、山中で出会ったたくさんの人に舌切りすずめの居場所を聞きまわりました、
そしてやっとのことで、竹やぶの中にすずめのお宿を見つけました。
「おーい、すずめやー!どこにいるんじゃー!」
おじいさんの呼びかけに答えて舌きりすずめがやってきました。
「おぉ、すずめや。申し訳ないことをしてしもうた。大丈夫か。許しておくれ。」
「おじいさん、心配しないでください。舌の傷はすっかり治りました。さぁこちらへどうぞ。」
すずめは、すずめのお宿におじいさんを招き入れました、
おじいさんは、その晩はすずめたちにご馳走になったり、すずめたちの踊りを見たりしてたのしく過ごしました。
次の朝、おじいさんが家に帰るとき、すずめがこう言いました。
「これは私たちのお土産です。大きいつづらと小さいつづらがありますが、どちらがいいですか。」
「どちらでも結構じゃが、小さいほうが軽くてよさそうじゃ」
おじいさんはすずめたちに見送られ、小さなつづらを背負って家に帰りました。
家に帰ってさっそくつづらを開けて見ると、大判、小判、着物、色々なたからものが入っていました。
それを見たおばあさんが言いました。
「おじいさん、どうして大きい方を持ってこなかったんじゃ!私が行って持ってくる。」
おばあさんは、おじさんが止めるのを聞かずに家を飛び出していきました。
「舌きりすずめのお宿はどこだー!」
と言いながら竹林の中に入って行きました。
おばあさんはすずめのお宿にたどりつき、舌切りすずめに会う事ができました。
「どうしてここに来たのですか。」
「お前さんに会いたくなったのさ。可愛がってやったからね。」
「そうですか、それではお入り下さい。」
「いやいや、かまわんよ。ここには大きなつづらがあるんだろう。それを持ってきな、持ってこないとまた舌を切ってやるよ!」
おばあさんは、すずめを脅して、大きなつづらを手に入れました。
しかし大きなつづらは重たくて背負うのもやっとです。
おばあさんはなんとか背中に大きなつづらを背負うとすずめのお宿を去りました。
おばあさんは帰り道、つづらの中身を見たくて見たくて仕方ありませんでした。
道でつづらを下ろすと、ふたを開けて中を見ました。
何とつづらの中からは、蛇や、お化けや、ムカデや、恐ろしいものが次から次へと出てきました。
「よくばりばあさんはお前かー!」
「ひえー!助けておくれー!」
お化けがおばあさんを追いかけまわします。
「いじわるばあさんはお前かー!!」
「ごめんなさいー!もうしませんからー!」
おばあさんは家に逃げ帰りました。
それから、おばあさんは心を入れ替えて、やさしいおばあさんになったそうです。
~おしまい~