緊急事態宣言下、国民の慣れと疲れで、人流抑制が十分でないとされながら、これまでの4波より高かったピークの感染者数が急激に減少しています。
ワクチン接種が進んだ効果や、40代50代などの自宅療養中の死亡などのアナウンス効果でより感染防止に気を付けるようになったのではとの説がありますが、感染力の強いデルタ株が流行の中心であり、全国民の大多数のワクチン接種が終わっていない状況での減少に、専門家も首をかしげています。
急激に感染者数が減少した理由の1つとして、最近唱えられてきたエラーカタストロフとは?の意味についてわかりやすく解説していきましょう。
今後、我々はどうすれば良いのでしょうか?
エラーカタストロフとは意味は?
エラーカタストロフとは意味をわかりやすく解説してみましょう。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を引き起こす新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)は、どのような性質をもち、感染に寄与するかをまず押さえておきましょう。
新型コロナウィルスは、約100 nmの球形をしており、球体の内部に、約30 kb(3万塩基)からなるRNAゲノム(遺伝子)を持っている一本鎖プラス鎖RNAウイルスです。
新型コロナウィルスのRNAゲノムはインフルエンザやHIVウイルスより3倍の大きさです。
ウイルスそのものは、生物とも無生物とも言えず、その状態では生きているといえず、増殖・分裂もしません。ただ、唯一持っているのは、宿主(感染先のことを言います、新型コロナウイルスではヒトの)細胞に感染する能力をもっているということです。
宿主細胞に侵入して、細胞内で細胞の機能を利用してウイルス量を数百倍にも増幅させてから細胞外へ放出した後、また周辺の未感染の細胞に吸着して感染を繰り返してゆくのです。
これが、ウイルスが感染を拡大させるメカニズムです。
エラーカタストロフ(の限界)とは
ウイルスは人の体内で増殖する際に、RNAの複製を作りますが、複製のエラーが一定程度生じます。
これにより、デルタ変異株のように、より感染性の高いものも生まれますが、エラーが積み重なると増殖が困難になり最終的には自壊し、自然に感染が収束します。
これが、Eigenが1971年に提唱したエラーカタストロフの限界として知られています。
遺伝子の突然変異率と淘汰の関係を与えるもので、遺伝的完全性が維持されなくなる限界のエラー率であるエラーの閾値を超えると、適性型に匹敵する量の突然変異体の種類が非常に多くなり、その集団はエラーカタストロフィーに陥り、絶滅してしまいます
(「エラーカタストロフの限界」を超えるコロナウィルス変異への対応 児玉龍彦名誉教授参照)。
(Wikipedia 参照)。
これが、現在のデルタ株の急激な感染収束の主要な要因となっているのではないかということです。
感染力の高いデルタ株により、最悪の事態に陥ったインドで、十分なワクチン接種や社会的な隔離対策がなかったにも関わらず、急激に感染が減った事例が挙げられます。
今年4~5月に新型コロナウイルスの感染爆発が起こったインドはいま、感染者数が大幅に減り、通常の生活を取り戻しつつある。病床がなく、酸素を求めて人々がさまよった事態は収まった。
新規感染者はピークの約13分の1 日常戻るインド、なお警戒感も:朝日新聞デジタル https://t.co/FsgXTyhDlE
— 朝日新聞 国際報道部 (@asahi_kokusai) September 19, 2021
いまここで何をすべきか
では、エラーカタストロフィーの限界により、感染者数が大幅に減ったあとに何をすれば良いのでしょう?
次の変異型の流行をただ待つわけにも行きません。
ワクチン接種率が5割を超えて、一時は、感染者や死亡者が急に減少したイギリスやアメリカなどで、デルタ株が広がると感染者が急増し、重症者、死亡者も再び増加しているところを見るとワクチンだけに頼るのは解決策にならないことが分かります。
接種で先行したイスラエルでも、ワクチン接種から半年経つと、急速に防御できなくなり、ブレークスルー感染が増えています。
一時的に感染者数が増えても、検疫の強化や、対策の強化で抑え込んでいるのが、台湾、ニュージーランド、中国などです。
感染者が減ったこれからの時期に、今までなにが足らず感染拡大を繰り返しているのかを十分検証して、抜本的な対策を立てる必要があります。
検査、医療、保健所の体制や、検疫体制など科学的なアプローチに基づくこれまでにない施策が必要に思えます。
昨年も冬に感染が拡大するので、備える必要があると叫ばれていましたが、結果を伴いませんでした。
エラーカタストロフへのみんなの反応
- いま減っているのはコロナが自然に減ってるのであり、コロナ対策の結果ではありません。増える前の段階で自然に増えないようするのがコロナ対策です。増えたらその段階で負けです。また冬に増えます。
- エラーカタストロフ…ウイルス自滅…コピーミス…ものすごく興味深いし面白いなあ。仮想環境。パソコンみたいだな。この世はリアルガチで仮想現実なのでは無いかと思うことすらあるわ。
- エラーカタストロフの限界で説明出来るじやん。進化変容がよく起こって流行る株も出来るがコピーされ続けるうちに変化して元の株の特性がなくなり自然淘汰する。つまりコピーの劣化。コピー回数と経過時間の問題よ
- ウィルスのエラー・カタストロフ仮説って、政治家が食いつきそうな気がする。「ウィルスはもう勝手に減っていきますねん。緊急事態宣言解除しても大丈夫でっせ」みたいな。
- 海外からザル防疫でどんどん多種多様な変異株が入ってくるので、SARS-CoV-2の遺伝子多様性は担保され続ける。 台湾やニュージーランド、中国のような成功国では遺伝子多様性がなくなるのでエラー・カタストロフ論で終息が説明できる。
出典:ヤフコメ
まとめ
- エラーカタストロフとは、ウイルスが増殖する際に、生ずる複製のエラーが個体を維持できなくなる限界値を超え、自壊に陥ること
- 現在のデルタ株での感染の急激な減少を説明する一つの大きな要因として挙げられる
- 次の変異株による第6波を起こさないために、これまでの対策を自省し、感染者数が減少した今抜本的な対策を打たねばならない
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