上橋菜穂子(うえはし・なほこ)さんの精霊の守り人がNHKにてドラマされている。正直楽しみで楽しみでしかたない。
ドラマ化にあたり、是非ともこの作品の書評を書きたいのだが、作品が好きすぎると逆に書評を書く手が止まりうまく言葉が出てこない。中学生が好きな人の前で緊張してうまく話せないのと一緒だ。
「カワイイ娘と飲むよりも、自分らしくいられる娘と飲んだ方が楽しいんだぞぉ」
と言いながら接客してきた暴力的なまでに太った池袋のキャバ嬢のユキさんの意見もあながち間違っていないのかもしれない。
そこで今回は書評というよりもドラマ化に向け、まだ精霊の守り人を読んでない人が知っておくべき基本事項と、本当に簡単なあらすじを伝えられたらいいなと思う 。本当に素晴らしい作品なので不安だが少しでも、皆さんの道しるべになれれば嬉しく思う。
精霊の守り人
守り人シリーズってどんな物語?
上橋菜穂子さんが描き出す、長編のファンタジー小説。
作者である上橋菜穂子さんは、『鹿の王』で2014年に児童文学のノーベル賞と称される国際アンデルセン賞の作家賞を受賞し話題になった。日本人児童文学作家の第一人者と言っていいのではないだろうか。
その上橋菜穂子さんが描くこの物語には二人の主人公がいる。
一人は女用心棒のバルサ。腕の立つ用心棒。ファンタジー小説では珍しく30代の女性で、ドラマでは綾瀬はるかさんが演じる。アニメ化されていて、その時はこんなイメージ。
もう一人はチャグム。新ヨゴ王国第二皇子でお腹に精霊の卵を宿している。まだ子供で物事の判断の基準があいまいな年齢。小林颯くんと板垣瑞生くんが演じます。こちらもアニメ化されていて、こんな感じのBOY。
親子ほど年の離れた二人の出会いから物語は始まっていくのだが、ある経緯からこのチャグム皇太子の事をバルサが守ることとなる。チャグムはバルサに守られているうちに自らの視野が広がっていき、またバルサもチャグムに対して幼き日の自分を重ね合わせていく。そして物語は一つの国にとどまらず大河のうねりを見せ始める…。
と、そんな感じの物語なのだが、この「精霊の守り人」という一冊ではこの物語の良さは伝わらない作品だと思っている。当然この作品単体でも素晴らしい作品であることは疑いようがないのだが、あくまでも”守り人シリーズ”として物語を捉えてほしいのだ。順番に読んでいけばシリーズ終盤の感動で手が震え、気が付くと強く手を握りしめ、心の底から活力がわいてくる素晴らしい作品になる事を保証する。
どんな順番で読めばいいの?
外伝的短編を除くと守り人シリーズは10冊でひとつの物語になっている。作品によってはそれ単体で読んでも理解できるものもあるが、やはり発売順に読むことを強く勧めたい。順番でいうと、
<精霊の守り人>
↓
<闇の守り人>
↓
<夢の守り人>
↓
<虚空の旅人>
↓
<神の守り人(上・下)>
↓
<蒼路の旅人>
↓
<天と地の守り人(1部・2部・3部)>
ちなみに、作品名の語尾が『~守り人』となっているのはバルサが主人公の物語で、『~旅人』となっているのはチャグムが主人公になっている。
圧倒的なリアリティーで作りこまれた世界
守り人シリーズの特徴として挙げられる項目の一つとして世界観の話が出てくる。
読みはじめてすぐに驚くのは、骨格として存在する独特の世界観がブレることなくどっしりと構えているので物語に入り込みやすいということ。
この物語が始まる新ヨゴ国は日本や中国のようなアジア圏の空気を醸し出す神秘的な国なのだが、文化人類学者である上橋菜穂子さんだからこそ描けるディティールの細かい世界観の描写が素晴らしく、物語の中に現実に本当に存在する文化があるように思える。
登場する食事も細部まで表現されていて素晴らしいので、その食事だけを抽出したバルサの食卓という本まで存在するのだ。
このように登場する文化や生活のどれもが輝いており、ファンタジーの世界に現実のリアリティーが強く反映されることで、よりファンタジー色が強くなるという不思議で素敵な現象が起きている。
また、主人公のバルサは槍術の使い手で並みの相手ならば軽く圧倒できる腕前。もちろん物語のなかでもある程度、無双状態が続く。しかし、手練3~4人に囲まれたら即座に逃げることを選択したり、戦いながらも深傷を負ったりする。そのバランスにリアリティーがあり、爽快さのある物語に常に一定の緊張感が保たれるところにもこの作品の魅力がある。
ドラマ化に当たって
一作目に当たる精霊の守り人の映像化の話は以前からあったようだが、作者の上橋菜穂子さんは単体作品としての精霊の守り人の映像化は断っていたそうだ。今回はNHKの協力のもと数年に渡って全作品を映像化することで、上橋先生が了承したとのこと。すべてを読み終わった今なら僕もその理由が良くわかる。
何故なら、守り人シリーズは全巻揃ってひとつの物語なのだ。
自分の作品を評価されることは嬉しいはずだが、あくまでも物語として一番面白い形で見てもらいたいという上橋菜穂子さんの作品への愛情を感じるエピソードだ。
これから長いスパンでそんな壮大な物語を楽しんでいけると思うと本当に幸せな気分に包まれる。
それにしても、実写化のドラマのキャストは全体的にイメージに近い人が演じてくれているのでうれしいです。皆さんの予想と比べてもそんなに遜色ないんじゃないですかね?
動画で見るとイメージや躍動感が違って面白そう。こうしてみると色々な媒体で見たくなるので漫画も読んでみようかな。
最後に
本とドラマの時系列は少し変わっているらしい。これからそれぞれの作品の書評を書くにあたって、
ドラマと本の両方を総合的に捉えてネタバレ感想を書いていければと思っている。
これから長いスパンでの書評?となるが、是非お付き合いいただきたい。
・・・今回、ほとんど下ネタ言わなかったなぁ。
やっぱり好きな人の前では緊張して下ネタも言えないらしいです笑。
【ドラマ感想はコチラ↓】
■ドラマ『精霊の守り人』第1回:女用心棒バルサ【原作比較とネタバレ感想】
■ドラマ『精霊の守り人』第2回:王子に宿りしもの【原作比較とネタバレ感想】