今年に入って、中国を発端に世界に瞬く間に広がり、人の命を脅かし続けている新型コロナウイルス感染。一部の国ではピークを過ぎたとの見方もありますが、日本をはじめまだまだ多くの国で終息は見えず、苦しむ人は後を絶ちません。
長いトンネルからはいつ出られるのか。ネットや有識者の間では「ウィズコロナ」という生き方が提唱され始めています。その意味や「アフターコロナ」との違いなどを考えてみました。
ウィズコロナとは意味は?
コロナ禍が世界で蔓延して3か月ほど。このわずかな期間にも世界の在り方、風景、人々の考え方やライフスタイルはもの凄く変化しました。多くの人は一層の感染拡大を防ぎ、また病気の流行を終わらせようと、外出や仕事、人との接触をやめるなど必死の取り組みを続けています。
しかしコロナ蔓延はそう簡単に終わらないのではないか。今そうした考え方や見解が有識者からも出始めています。例えば「iPS細胞」の研究でノーベル医学生理学賞を受賞した山中伸弥京大教授は「自分は感染症の専門家ではないが、最新研究論文などを読み解き、一般の方に正しい情報を分かりやすく発信することはできる」と、コロナについて積極的に情報開示。
そして山中教授は当初から「コロナとの戦いは短距離走ではない。何年か続く長いマラソンだと考え、ペースを考えて息長く走り続けないといけない」と強調しています。
感染症専門家も、SARSなど致死率が高かったこれまでの新型ウイルスと異なり、新型コロナは知らないうちに感染し、無症状のまま多くのウイルスを排出して周辺に静かに感染を広げる特徴や、一方で一部の感染患者には重い症状を引き起こし死亡させるケースも少なくないなど、「非常にしたたかでしぶとい」ウイルスだと分析しています。
即ち「コロナ禍をできるだけ早く終わらせる、撲滅する」のは医学上難しく、有識者の中には、コロナに対抗しながらもしばらくは共に走り続けるという「ウィズコロナ(with coronavirus)」というマインドに切り替えるべきだ、という声が上がっています。
メディアアーティストで研究者でもある落合陽一氏もブログなどで「アフターコロナというよりは、あと数年ウィズコロナで生きていくための世界観に移行し始めた」と指摘。ビジネスアナリストや格闘技イベンターなどからも「いずれ元の世界に戻るなんて甘い!」との意識変革を求める見方が出ています。
コロナウイルスを倒すというより、〝隣にいる〟のは仕方ないとして、せめて感染を防ぐ努力を続けていく。まさに「共に生きる」という意味の生き方が「ウィズコロナ」だといえます。ではこれまで時折話題になってきた「アフターコロナ」との違いは何なのでしょうか。
【ウィズコロナ】過渡期の日常を切り取る.デジタルとアナログの融合でない分断.日々変わっていく風景を眺めながらhttps://t.co/qDgo35bFke
— 落合陽一 Yoichi OCHIAI (@ochyai) April 27, 2020
アフターコロナとの違い
コロナとの共生とまでは言わないものの、感染を防ぐ暮らしを息長く続けるという意味の「ウィズコロナ」。「アフターコロナ」との違いはまさに「短距離走」と「マラソン」に比喩できそうです。
100m走は五輪であればわずか10秒ほど、中高生の大会でも20秒もしないうちによほどのことがない限り終わります。しかしマラソンは五輪級の選手でも2時間以上、まして市民ランナーではゴールまで何時間かかるか分からないほどです。
「アフターコロナ」論はいわば「コロナ禍はいつ終わるか。そして終わったらどうやって元の世界に早く戻そうか」といった、あくまで「しばらく我慢すれば苦しさも終わる」「元の暮らしが楽しみだ」といった楽観的な発想だといえます。
しかし「ウィズコロナ」は「外出せず、人と触れあわず、消毒を心がける感染防止の生活が〝普通〟だと思って今後も過ごしていく」というものです。「苦しい、つらい」ではなく「これが当たり前」だと認識を切り替え、この環境下でも成功したり喜びを見いだせる工夫をしていくべきだという考え方です。
落合氏は「1年前の自分にタイムマシンで『オリンピック中止になるよ!』と伝えても『なんで!?』となっただろうね。すごい変化だ」とも語っていますが、まさに考えてみれば、つい3か月前の日常はほとんど今では跡形もありません。そして今年のお正月にこの状況を想像した人もほぼいなかったでしょう。
「いずれ元に戻ったら…」「コロナがなくなったら、また…」ではなく、発想をまったく転換し「コロナがある今」を新時代と捉え、したたかに生き抜くスタイルが「ウィズコロナ」だともいえそうです。
🎥ビデオ🎥
「人は移動しないけど、モノは移動してて、デジタルはもっと高速に移動してる。その3段階の状態がウィズコロナでしばらく続く」【落合陽一】地方のポテンシャルをWithコロナの視点で考える
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— NewsPicks [ニューズピックス] (@NewsPicks) April 20, 2020
ウィズコロナに関するネットの反応
- 「監視を強めること」から「成果に重視すること」にマネジメントスタイルを転換しなければ、「ウィズコロナの長距離走」は「完走」できないよ
- もとの暮らしが戻るわけじゃない! はやく自立して! それでも駄目なら模索して!
- ウィズコロナ時代のコミュニケーションは、報連相から”雑相”。 相は相談、雑は雑談。とにかくストレスフリーに何でも話し合える空気を醸成すべし
- 「3密」のないマカロンの自販機って発想。確かに自動販売機はウィズコロナ時代に向いているのかも
- やはりここらでウィズコロナ教を立ち上げて教祖におさまるか…
出典:Twitter
まとめ
今回の記事をまとめると以下の通りです。
- 先が見えないコロナ禍の中「ウィズコロナ」という考え方の提唱広がる
- 経過が似るスペイン風邪は終息まで3年。コロナ禍も「長いマラソン走」
- リアルと触れあわないネットライフを「標準」に。その中で生き抜く知恵を
ある記事に、感染症の某専門家が「100年前と何も変わってない。我々の進歩って何だったのか」とコロナ禍の現状に悔しさをこぼすコメントが載っていました。
100年前といえば世界でスペイン風邪がパンデミックを起こしたとき。第一次世界大戦の最終年から足掛け三年、三度のピークを経てようやく終息し、少なくとも4000万人、世界の100人に2人を死に追いやったといわれ、人類を恐怖に陥れた疫病でした。
新型コロナもこれと経過は似ていて、くだんの専門家は「100年たっていまだに対策が『人から離れろ』とは…」と医学の無力さを訴えているわけです。しかし医療従事者の技術・努力やワクチン、治療薬開発など環境は100年前とは全く変わり、そのお陰でここまでの被害に抑えられていると考えるべきでしょう。
「ウィズコロナ」は、コロナに限らず、繰り返す災害・災禍に対峙せざるを得ない21世紀の現代人には必須の意識なのではないでしょうか。
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