欠陥エアバッグ問題で経営破綻したタカタのシートベルト部門を引き継いだJSSJ(ジョイソン・セイフティ・システムズ・ジャパン)の彦根市の工場で製造したシートベルトの一部で、法令で定める強度に達していないのに、満たしていたかのように改ざんして出荷していたことが発覚しました。
強度が法令違反にあたる製品が国内だけで900万本、搭載した自動車のリコールが200万台にのぼる見通しとなっています。
自分の車は大丈夫なのか?
JSSJのシートベルトを使用している車種についてできるかぎりの情報を集めてみました。
JSSJのシートベルト使用の車種を調べてみた
JSSJのシートベルト使用の車種を調べてみました。
JSSJは国内シートベルト市場でのシェアが首位で、約4割だとしています。
国内の大半の自動車メーカーと取引があり、主な取引先として、いすゞ自動車、スズキ、SUBARU、ダイハツ工業、トヨタ自動車、日産自動車、日野自動車、本田技研工業、マツダ、 三菱自動車工業が挙がっています。
さらに、その後、製造直後に測ったシートベルトの強度データと、自動車メーカーに報告しているデータの照合や、関係者への聞き取りなどの結果、現在保管されている約20年分のデータの初期段階から数字を書き換えていた形跡を確認したということです。
問題のシートベルトが搭載された具体的な車種名は、以下の手順で明らかにされます。
JSSJ⇒各自動車メーカーへの問題の製造ロットの連絡⇒各自動車メーカーでの調査⇒国土交通省へのリコール届け出⇒国土交通省の車種発表
例えば、タカタ製エアバッグのリコール届出(国産車:届出番号順)に関する国土交通省のHPには以下の記載があります。
タカタ製のエアバッグに関するリコール届出の一覧は下記の通りです。リンク先に詳細な内容が記載されています。対象となる車両を使用されているユーザーの皆様は、早急に自動車ディーラー等で修理等の処置を受けていただきますようお願いいたします。
国2565 ニッサン (※車検で通さない措置の対象)
車種名 ○○、○○、○○、○○
国2567 ホンダ (※車検で通さない措置の対象)
車種名 ○○、○○、○○、○○
国2568 トヨタ (※車検で通さない措置の対象)
車種名 ○○、○○、○○、○○
・・・・・・
従って、現時点では調査中で、どのメーカーのどの車種とはっきり特定はできません。
今の情報で推測できるとすれば、以下となります。
トヨタは、「9月上旬にJSSから不適切事案があるとの連絡を受けた。車両への影響を早急に確認するとともに必要な対応を講じていく」と語り、日産自動車やホンダも対応車種などの調査を始めたとのことですので、少なくとも3社の車種に搭載されている可能性があります。
また、日本のシートベルトメーカーとしては、JSSJ以外では、東海理化電機製作所、芦森工業が挙げられ、国内市場のシェアは、JSSJ 36%、東海理化電機製作所30%、芦森工業21%それにオートリブ(本社スウェーデン)13%となっています(2018年8月の調査結果)。
東海理化電機製作所はトヨタ系で、シートベルトを中心とした安全部品も得意としており、ダイハツにも納入しています。
芦森工業も、1962年にシートベルトの製造を開始した伝統あるメーカーです。
オートリブはシートベルト世界市場で市場シェア40%の断トツのリーディングカンパニーです。
従って、JSSJ以外のメーカーのシートベルトを搭載した車種であればひとまず安心できます。
シートベルト自体には、一目でわかるメーカー名は表示されてはいないようで、筆者の車についても番号のみが表示されていました。
JSSJのHPにシートベルトの画像がありました。
これと同じものであれば、JSSJ製シートベルト搭載車ということにはなります。
タカタを繰り返す?JSSJデータ改ざんなら影響は?
まず、タカタの欠陥エアバッグ事件を振り返ってみましょう。
2008年頃から、エアバッグのインフレーター(膨張ガスを発生させる重要部品)関連の不具合が相次いで判明し、米国とマレーシアでは異常破裂したインフレーターの金属片により死亡事故も起きた。
2014年11月時点で対象車の累計は1,700万台に達した。
2015年11月 アメリカ合衆国運輸省の国家道路交通安全局が、タカタのエアバッグの欠陥を企業の不祥事と位置づけ、同社が適切なリコールや情報開示を実施せずにアメリカ国内で被害を拡大した、として最大2億ドル(約240億円)の民事制裁金を科すと発表した。
2017年6月26日 世界で約1億個のリコールに発展した主力商品のエアバッグの欠陥リコールで最終的な負債が1兆円を超える見通しとなり、経営破綻した。
最初の死傷事故から対策までの対応のあまりの遅さが問題となりました。
そして、最終的には、タカタ製エアバッグを搭載したホンダなど自動車各社が費用の肩代わりを強いられました。
経営破綻したタカタは、エアバッグ以外の、問題がないとされたシートベルト製造を、中国の寧波均勝電子の100%子会社である米国のキー・セイフティー・システムズに譲渡した。
2018年4月 キー・セイフティー・システムズがタカタの事業買収を完了してジョイソン・セイフティ・システムズに改称した。
改ざんが20年前から行われていたとするなら、問題がない部門と言われていたシートベルト製造も、問題を抱えたまま譲渡したということになり、譲渡後もそれが公にならず、今になって露見したというのは、社の体質そのものが原因と言われかねません。
今春の内部通報で発覚したのが、9月になって公になるという対応の遅さをみても、経営陣が変わっても、エアバッグ事件のころと、何も変わっていないのではと批判されても致し方ありません。
さらに、世界でのシェアの3割とのことですので、死亡事故などとの関連が出て来れば、アメリカでの訴訟に発展する可能性もあり、最悪前回と同じ事態にもなりかねません。
法令違反のシートベルトを装備した自動車のリコールも200万台に及ぶ可能性があるとのことから影響の規模を考えてみます。
令和2年4月末現在の日本国内の自動車保有台数は81,907,367台で、このうち4輪は 47,142,723台となっています。
問題の車が200万台とすれば、4.2%がリコール対象に該当することになります。
タカタの欠陥エアバッグでのリコールでは、2017年6月までの届け出で、原因が特定されたリコールが 254万台、予防的リコールが1628万台でしたので、エアバッグ事件に匹敵する規模となる可能性があります。
さらに、その後チャイルドシートのベルトでも強度データを改ざんしていたことが分かり、検査不正が見つかったベルトはJSSJ製品のほか、他社ブランドで生産する商品にも使われていたということで、法令違反の対象となるチャイルドシートは数万個に及ぶとみられるということです。
次いで、懸念されるのは、世界でのシートベルトのシャアが、3割にも達するという点です。
もし、死亡事故などに関連していることが明らかとなり、欠陥エアバッグと同様に、米国などで、訴訟が提起され、アメリカ合衆国運輸省の国家道路交通安全局が動くことになると対応次第で、エアバッグの欠陥リコールと同じ結末になりかねません。
JSSJシートベルトに関するネットの反応
- もう日本人の大半はモラルなんかないのかもしれない。怒られるのが嫌という風潮が僕のいる。製造業界でも普通にまかり通っているのが現状だと思う
- 資源の無い日本が、世界と戦うにはモノづくりで勝つしか無いと昔の人が頑張って、日本製品を最高品質にまで押し上げたのに、落ちるのは簡単にですね。
- メーカーは無責任にコストダウンを迫り続け、下請け産業を圧迫してきた結果だ。所詮シートベルトなど何処の会社から調達したって同じだからねって感じだったのだろう。
- 問題はこの会社がタカタから事業を引き継いでからやらかしたことなのか。タカタ時代から常態化していたのかだと思う。それによっては自動車メーカーのリコール台数が桁違いに変わってくる。どっちにしてもシートベルトはエアバッグ以上に重要な安全装置だから影響はエアバッグの比じゃないだろう
- なんだかんだ言っても、一番上がすげ変わった程度では中の社員の体質までは変わらないという事でしょうね。隠ぺい体質に慣れきってしまった社員が楽したくてまたやったという事なのか。未だに上からの締めあげがきつかったのか。同じ事は繰り返されると思います。
出典:ヤフコメ
まとめ
- JSSJのシートベルト使用の車種は、現時点では特定できないが、トヨタ、ニッサン、ホンダなどの車種が含まれる可能性が高く、全国の4輪車の4.2%がリコール対象車となることもありうる
- タカタのエアバッグ欠陥リコール事件に匹敵する規模となる可能性があり、最悪、米国などでの訴訟に発展し、企業の存亡を揺るがしかねない
- タカタから受け継いだ社内体質が問題なのは確かだが、日本のモノづくりそのものの変質や、コストダウンを押し付けるメーカーと下請け産業の関係に根本的な問題があるとのコメントも多い
200万台がリコールの可能性といわれると、自分が運転している車のシートベルトは大丈夫なのかと不安に駆られます。
後部座席でも装着が義務化され、違反していると罰金を取られるのに、肝心の安全装置の性能が信用できないとすれば、何を信じて安全運転をすれば良いのか?
少なくとも、JSSJをはじめ、メーカーが調査を迅速に行い、関連車種の発表や必要なリコールの通知を速やかにしてもらいたいところです。
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