6月下旬の長江流域での「史上最大規模の洪水」に続き、7月に入って、長江2020年第2号洪水が襲ってきた三峡ダムで、7/19に水位が過去最高値を超えました。ダム決壊が心配されます。
三峡ダムの水位の現在を知る方法を調べました。さらにこの水位の安全上での意味や貯水量について、当局の説明と、中国ネットの反応を見ていきます。
三峡ダムの水位の現在値を知るにはこのリンク
三峡ダムの水位の現在値を知るには以下のリンクに飛べば、簡単に知ることができます。
長江水文網
http://www.cjh.com.cn/swyb_sssq.html
三峡水庫の行を見てください。
例えば、次のように報告時間とともに、水位がメートルで下から3行目に表示されています。
三峡水库 21日 13时00分 163.64(中国時間)
なお、日本と中国との時差は、1時間で、日本の方が、1時間進んでいます。
同時に入出流量(m3/s)も分かるようになっています。
これから、水位を下げるために、放出流量を上げているなどの情報も得ることができます。
三峡ダムの限界水位は?
三峡貯水池の洪水制御限界は145メートルであり、洪水シーズン中に、洪水制御操作を行っていない場合の基本水位とされています。
三峡ダムの高さは185メートルで、三峡貯水池の最大通常貯水レベルは175メートルとありますので、限界水位は175メートルということになります。
では、これまでの水位の変化を見てみましょう。
7/15 から 7/20までの水位変化を示します。
洪水制御限界の145メートルを10メートル超えた155.77mから、限界水位175メートルにあと10メートルと迫る164.32メートルまで、5日間で達したことが分かります。
2020/7/19 17:00から2020/7/21 13:00までの変化を細かく見ていくと以下になります。
7/19 6時には 163.22メートルと、建設以来の最高水位163.11メートルを超え、その後164.58メートルの最高レベルに達しました。
限界水位175メートルに、あと10.42メートルということになります。
ここから放流を強化したようで、水位は下がり始め、21日 9時現在で、163.84メートルとなっています。
中国の公式メディアは、長江2020年第2号洪水は「スムーズに三峡ダムを通過した」と掲げた記事を報道しています。
ただ、中国の民衆も心配しており、中国メディア央広網は、三峡ダムプロジェクトセンター副所長の鮑正風へのインタビュー記事を載せています。
「三峡貯水池にはまだどれだけの水を貯めることができますか?約160メートルの水位とは何を意味しますか?三峡ダム関連部門が民衆の懸念に回答しました」と題しています。
民衆は、三峡貯水池の水位は約160メートルに達しており、これから洪水制御の重要な時期(7月下旬から8月上旬)に降水量が集中する。揚子江の上流での、何回かの大量の降雨が今後予想されるが、三峡の容量はそれに耐えることができるかという懸念です。
これに対し、
三峡貯水池の洪水制御限界は145メートルで、これは洪水制御操作を行っていない場合の基本水位で、あって通常これ以下の水位に保つ。
一方、最大通常貯水レベルは175メートルで、約160メートルというのは、両者の中間に位置し、何も心配する水位ではない。
また、現在の三峡貯水池の貯水容量は約90億であるのに対し、洪水調節貯水容量は221.5億です。つまり、約130億の洪水制御容量が残っています。つまり、洪水制御容量の約60%が残っているので、心配ないと説明しています。
最高水位と洪水制御容量の関係がいまひとつ理解できませんが、中国の関係部門の公式発表ではこのように報道されています。
三峡ダム最新中国の反応
- 千年に一度の洪水に耐えられるといわれていたのに、記事はでたらめだ。長江下流域の庶民人々は悲惨です。
- この記事はとても興味深い。おそらく、三峡ダムを洪水と戦わせるではなく、ダムを生き残らせたいとの思いが強いのです。 。 。
- (洪水が)三峡ダムをスムーズに通過したということなので、下流はこれから災いが降りかかる準備をしています
- 三峡でピークをカットしなければ、下流はさらに悲惨なことになっています。それとも、三峡の洪水は下流には流れないとでも思っているのですか?
- 三峡ダムがうまく行っているので、ある種の人々は不満を感じ始めています。台湾や香港の毒(反中派)と何が違うのか? !
出典:微博(中国版ツイター)
まとめ
- 三峡ダムの水位の現在値を知るための長江水文網のリンクを載せた
- 中国メディアは、洪水がスムーズに三峡ダムを通過し、ダムの水位は下がり始めている、貯水余力はまだ60%もあり、なんら心配ないと報じている
- 中国ネットでは、ダムを守る方が大事なのだろうなど、珍しく批判的なコメントが出ているが、擁護するコメントも少なくない
三峡ダムには、2009年の建設当時から、140万人を超える住民の強制移住、史跡、景勝地の水没、土砂堆積など数々の問題が指摘されてきました。
また、ダム関連の利権が優先され完成を急いだため、設計上も施工上も問題があるのではと言われてきました。
2018年には、内外の専門家が、三峡ダムは大きく変形して、非常に危険な状態にあると、ダム決壊の危険性を訴えることもありました。
それだけに、6月に続き、7月に入って、長江2020年第2号洪水が襲ってきた今、果たしてダムは耐えられるのか、下流のことを考えずにダムを決壊させないために大量放流しているのではとの疑念が生じています。
もし決壊すると、下流の中国の主要都市、武漢、南京、上海などが大きな被害を受けることになります。
そんなことになれば、現地日本企業やさらには日本経済への大打撃となる可能性があります。
果たして、当局の言い分をそのまま信じて良いのでしょうか?今後も上流での大量の降雨が予想されますので、少なくとも、三峡ダムの水位の変化には十分注意してゆく必要があるようです。