昨年のコロナ禍による異例の中止を経て、今年2年ぶりに開催されている第103回全国高校野球選手権大会(夏の甲子園)。ところが「コロナ」「豪雨」というダブルパンチにより、これまた出場辞退校や順延続きという〝史上初の惨事〟に見舞われています。
コロナは仕方ないとはいえ、雨は「ドーム球場でやればいい!」との声も。近年の猛暑もあり「甲子園ドーム化」説が一気に再燃、「やれる」「いやできない」の議論が白熱しています。「高校野球とドーム」をあらためて考えてみました。(出典:Wikipedia、スポーツメディアなど)
甲子園ドーム化論再熱
高校球児たちにとって待ちに待った夏の甲子園。しかし自然は残酷です。9日に始まった大会は、コロナ陽性選手発生による出場辞退続出、深刻な猛暑かと思えば豪雨続きで史上初の7日間順延…。球児や関係者は翻弄されるばかりです。
猛暑や豪雨はもはやここ数年日本列島で災害を招く「定番現象」になっており、対症療法は限界なのが実態。解決法として、メディアやファンの間では「高校野球はドームで」「甲子園ドーム化」などの議論が一気に再燃しています。
賛否真っ二つ!
この「高校野球甲子園大会をドームで」論。昔から浮上しては消えるテーマですが、「できる・できない」の意見は今も真っ二つです。おおまかに賛否をまとめると以下の通りとなります。
■ドーム賛成派
・猛暑や豪雨は災害、命の危険がある状態。高校生のためにも安全なドームで開催すべき。
・高校野球100年の歴史上、甲子園球場以外で実施した時期もある。
・サッカーのようにベスト8までは各地のドーム球場で行い、準決勝以降は甲子園という方法も。
■ドーム反対派
・甲子園以外では意味がない。甲子園は野球少年達憧れ・夢の地。そこに立つことに全霊を懸けている。まずは“聖地”で安全に行う対策を徹底すべき。
・早朝やナイターを活用すれば甲子園でも猛暑や雨を回避できる。
・大会会期を1か月以上にし、各校は平日は地元にいて週末だけ甲子園で試合する方法も。
開閉式なら…?
ドーム反対派は「聖地甲子園でないとダメ」が意見の核のようです。ならば「甲子園自体をドーム化」すれば一挙解決しそうですが、それにも「青空の日差しの下でやってこそ高校野球」という〝原理主義的〟声が…。
ではこの案ではどうでしょう。甲子園球場を開閉式ドームにして、晴天時は屋根を空け、雨天や超高温の時間帯だけ閉める。そうすればすべての問題は解消し、一件落着っ!!……と思いきや、事はそう簡単ではなさそうです。
甲子園ドーム化はできないの?
報道によると、甲子園ドーム化は実際に90年代はじめに運営会社などで計画されたそうです。しかし結局は沙汰止みになり、10年ほど前の大規模改修を経て現在に至っています。なぜドーム化できないのかは、以下のような理由が挙げられています。
【ネック1】多額の費用・建設期間
甲子園球場は国内最大のサイズで、これをドーム化する工事は耐震化も含めかなり大規模。一説には簡易的な工事だったメットライフドームの数倍の数百億円以上かかるとされます。
また工事も野球シーズンを考えるとオフにしか行えず、数年以上の相当長期間を要するとみられ、コスト面でハードルが高いとされます。
【ネック2】住宅密集地・歴史的建造物
甲子園球場周辺は住宅やビルが密集、阪神高速も隣接しており、上記のような長期間の大規模工事は困難なのが実態。また日本最古の公式球場で世界的に見ても歴史的価値が高く、景観上などからも大規模に手を加えることは問題が多いとされます。
【ネック3】アマチュアリズム(=お金0)
最大の問題は高校野球というアマチュアリズム。ドーム化工事は上記のように多額の費用がかかり、経営元としては使用料値上げなどで回収する必要がありますが、実は高校野球大会は「無料提供」だというのです。
中島隆信・慶大教授によると、春夏の甲子園大会は徹底した非商業主義。入場料は球場整備費などに見合う程度の低額。運営側の高野連理事は無給、スタッフや審判はほぼボランティアで、高野連は球場使用料も一切払っていません。
高校野球中継はかなりの高視聴率ですが、何と全試合生放送するNHKや朝日放送の放映権料もゼロ!つまりビジネス的要素はほとんどないそうです。
甲子園を京セラドーム開催はできない?
では近隣の球場、つまり大阪の京セラドームで代替開催はできないのでしょうか。せめて雨天や猛暑の日くらいは…とも思いますが、それも簡単ではないようです。
例えば京セラドームの今年の高校野球期間中の予定を見ると、アーティストコンサートやプロ野球開催などでほぼ連日埋まっています。空き日もコンサートの準備などがあり、プロ野球も練習などのため結局半日は必要。「プロと高校のダブルヘッダー」にするにも、事前にかなり調整が必要なようです。
1年の夏から攻撃の核を担う高校通算35本塁打の前川率いる智弁学園と
劇的なサヨナラ勝ちで勢いに乗る横浜とのマッチアップ!#バーチャル高校野球 で
🔴ライブ中継中❗️📲💻PC・スマホで視聴する▼https://t.co/u1aE723ryI#高校野球 #甲子園 pic.twitter.com/8ySAJzQ9os
— バーチャル高校野球 (@asahi_koshien) August 21, 2021
甲子園ドーム化に関するSNSの反応
- ビートたけしがドーム化マジ提案「有志募れば寄付金相当あるんじゃないの」
- でもそうなったら、もうどこでも良いんちゃうと思ってしまいマス
- 反対意見多数は認めるが、個人的には今年の惨状が甲子園ドーム化の契機になればと思う
- するしないの前に出来んやろ。阪神園芸という素晴らしい方々を大量リストラすることにもなるし
- ドーム反対は「真っ黒に日焼けした高校球児が夏の強い陽射しの元汗だくでプレイする」というファンタジーへのファンのエゴなんじゃないかと疑っている
出典:twitter
まとめ
今回の記事をまとめると以下の通りです。
- コロナ・猛暑・豪雨のパンチで大波乱の103回夏の高校野球甲子園大会
- そこで「ドームで」論が激しく再燃。京セラや甲子園ドーム化も議論に
- 賛否激論の上高額費用や高野連方針でドーム化困難。球児も「今のままで」
マツコデラックスさんも某番組で「もう京セラドームの名前を甲子園に変えたらいいじゃない」「夜中とかにやればいいのよ。予選なんか誰も見てないんだから。ゲームだけすればいいんだからさ」と直言していましたが、テレビ局調べによれば、当の高校球児や学校関係者はほぼ100%「今のままがいい」という意見だそうです。
青春をかけて必死に目指し、つらさ・暑さに耐えて頂点を競う“甲子園”というブランドこそが彼らの「命」ということでしょうか。波乱の103回大会もあとわずか。今は大過なく決勝戦が終わることを祈るばかりです。
天候不順で高校野球の日程が心配された第103回夏の甲子園ですが、厳しい日程ながら選手たちは夢の甲子園で毎日全力で優勝を目指し頑張っています。ですがまだ全国制覇を成し遂げていない県がいくつかあります。ここでは甲子園で優勝してい[…]
変化していく高校野球。100回を超える歴史ある大会ですが、時代の流れや環境の変化によって高校野球のルールの見直しなどが行われています。あまり高校野球を見ない人でも、最近「延長に次ぐ延長戦の結果○○高校が勝ち進むことが出来ました」的なニュ[…]