5年前にキューバのハバナで起きた原因不明の脳損傷事例が、米外交官ら130人以上について欧州、アジアでも起こっていることが最近分かりました。
2018年に米国国務省は、広州の領事館で事例が報告された後に、在中国の全外交官に、「発生源を突き止められない異常な音や騒々しいノイズを伴う異常な急性聴覚または感覚現象」がなかったかの調査をしました。
このハバナ症候群とはどのような症状で、どんな原因で起こるのか?また対策としてどんなものが考えられるのか?
ハバナで録音した音源「ノイズ」もアップしました。
ハバナ症候群とは?わかりやすく解説
ハバナ症候群とは何かをわかりやすく解説してゆきます。
そもそもは、2017年8月に、キューバのアメリカとカナダの外交官が原因不明の頭痛、めまい、耳鳴りなどのさまざまな健康上の問題を抱えていることをアメリカ政府が報告書で明らかにしました。
そして、人が聞き取れない領域の音を発する高度な音響装置が外交官らの自宅の内外で使われた「音響攻撃」の結果ではないかと告発しましたが、証拠は示されていません。
米政府は事件に絡んで首都ワシントンにあるキューバ大使館の外交官2人を国外追放しました。
一方、キューバ政府は、外交通商部の声明で、あらゆる関与を否定し、完全協力を表明し、状況を「最重要に」扱っていると述べました。
2017年のtheguardianの記事を参照し、事件の詳細を見てゆきましょう。
事件の様相
いく人かの人は振動を感じ、音を聞いた。大きな音が鳴り、クリケットや蝉と似ていた。他の人は粉砕音を聞いた。いく人かの犠牲者は耳鳴り声で目を覚まし、目覚まし時計を手探りして、ベッドから離れると鳴り声は止まった。
その攻撃は夜にやってきて、いく人かの犠牲者は、数分の破裂音だったと報告した。
ほとんどの事件は外交官らの自宅の内外で起きているが、最近の1件はホテルの一室で起こりました。その詳細は次の通りです。
ハバナのホテルでけたたましくギーギー鳴る音が、ベッドのアメリカの外交官を揺すぶった。彼がわずか数フィート移動すると、全く聞こえなくなった。ベッドに戻ると、想像もできないほど、苦悶を与える音が彼を再び襲った。まるで彼の部屋をまっすぐに切り開いている目に見えない壁を通り抜けたかのようだった。
一部の被害者は、集中することや特定の言葉を思い出すのに、問題を抱えていると言われており、米国政府が最初に認めたより、より深刻な兆しの症状を示しています。
米国は、最初に症状が報告されてから9ヶ月後となる8月に初めてこの攻撃を認めました。
原因の究明
「どれも合理的な説明はない」米国の大使館を再開する前からハバナで働いていた元CIA関係者フルトン・アームストロングは語った。「ミステリーに次ぐミステリーだ」
最初は、音響武器とキューバ人を疑った。しかし、軽度の脳傷害との診断は、音響の結果ではなさそうだと考えられており、捜査に関与しているFBI、国務省、米国の諜報機関は混乱している。
トランプ政権は、依然として、攻撃を説明する犯人や装置を特定していないとしている。、
米国がキューバ政府に今年初めに訴えて、カナダがカナダ外交官の事件を知った後に、FBIとカナダ軍警察は、ハバナで調査を行った。FBIの捜査官は部屋で機器をくまなく探したが、何も見つけ出せなかった。
物理的な説明ができない
音響と健康の専門家も同じように困惑しています。ターゲットに対して絞りこまれた局在化した音のビームを出すことは可能ですが、音響の法則は、そのような装置はおそらく大きく、簡単には隠すことができないことを示唆しています。
専門家は、機器の影響が設計によって、あるいは他の何らかの技術的要因によって局在化させることが出来るかは不明だと述べている。
「脳の損傷と脳震盪を起こすことできません」と元MITの研究者で心理音響学の専門家は述べています。 「非常に強力な超音波変換器が並んでいるプールに頭を沈めなければならないでしょう」
攻撃は誰によるか想定できない
意図的な攻撃だとして、調査官は、キューバ政府、治安部隊の不正な勢力、ロシアのような第3国、またはその一部の組み合わせによって、いくつかの案を検討したが、うまく説明がつかなかった。
キューバ政府は、外交通商部の声明で、あらゆる関与を否定し、完全協力を表明し、状況を「最重要に」扱っていると述べた。折角昨年米国と国交回復を成し遂げたのに、キューバ政府に、このような攻撃をする意図があるとは思えない。
動機が不明
潜在的な動機さえも不明である。調査官は、カナダ人がなぜ傷ついたのかを説明することができなくなっている。キューバのカナダ外交家10人以下が被害にあったとカナダ人の関係者が語った。
米国とは異なり、カナダは何十年もの間、キューバとの温かいつながりを保ってきており、攻撃の意図が分からない。
以上のように謎が謎を呼んでいるが、事件はその後も、中国や欧州で発生し、130人以上が被害を受け、未だ原因不明のままである。
録音されたそのノイズ
ハバナで録音されたその「ノイズ」がAPにより公開されました(2017年10月)。
高ピッチのノイズは確かに不快で、APは「コオロギの集団の鳴き声」「黒板を引っ掻く音」という例えを出しています。
結局のところ、はっきりとした原因はなぞに包まれたままです。
謎の脳損傷の事例
2016年11月以来に起こったハバナ症候群の事例7項目をまとめました。
年月日 | 事例 |
---|---|
2016年11月 | キューバのハバナの米国大使館10人以上の米外交官と、その家族が難聴、吐き気、頭痛、平衡障害の症状をが訴え、軽度の脳損傷や中枢神経の損傷が見られた。 そのうち外交官2人は難聴など長期治療が必要な症状だった。 |
2017年6月 | キューバのカナダ外交官5人とその家族も同様の症状を訴えた。 |
2017年8月 | 被害発生合計21人がキューバでの被害にあった(2018年6月には、26人に)。 |
2018年4月 | 在中国アメリカ領事館職員が同様の問題を報告 |
2018年12月下旬 | カナダの外交官が14番目のハバナ症候群の症状を報告 |
2019年 | (米国)海外勤務中の軍人が車を交差点に停めた後、吐き気と頭痛に襲われた。 |
2020年12月 | 少なくとも3人のCIA職員が海外での出来事による深刻な健康被害を報告した。 |
ハバナ症候群の個人対策について考えてみた
原因がはっきりと特定されていませんので、対策も難しいところですが、検討してみましょう。
原因が、マイクロ波という説もありましたが、マイクロ波は電磁波の一種で、電子レンジにも使われている技術で、今回の攻撃を説明できません。
音響兵器とすると、ソマリア沖では豪華客船が海賊を撃退するのに、LRAD(ロングレンジ・アコースティック・デバイス)と呼ばれる音響兵器を用いていることが知られていますし、日本の関連では、調査捕鯨の船が、LRADを用いてシー・シェパードによる調査の妨害を未然に防いでいます。
音響兵器には、超音波、可聴周波数の音波、低周音波などあらゆる波長の音波(空気振動)が利用されています。
LRADは、大音量で2.1〜3.1キロヘルツという高い音を発生し、イラクに駐留する米軍が、反抗的な群衆を蹴散らすための新しい非殺傷兵器として配備したと言われています。長時間さらされた場合、永続的な聴力障害を引き起こす可能性があるとされています。
低周波音(100ヘルツ以下)による健康被害として「風車病」があります。音としては聞こえませんが、大きなエネルギーを発生させ、風力発電などで多数の風車が建設された地域で、発生しています。
対策は、マイクロ波のような電磁波ではありませんので、金属メッシュの入ったヘルメットをかぶるなどでは防ぐことが出来ず、防音、防振しかありません。
完全を期すためには、防振材を備えたシェルターを製作する必要があります。例えば、床など一部だけの防御ではほとんど効果はありません。
超音波を利用した攻撃への防御
防御素材:制振金属、天然ゴム、粘着性樹脂、吸音材、その他制振材
制振金属とは、振動を減衰する機能をもつ金属材料で、昔から鋳鉄が振動吸収能力が高いことから、工作機械ベットやテーブルに使われています。鋳鉄の中でも球状黒鉛鋳鉄より片状黒鉛鋳鉄が制振性に優れることが知られています。
制振材料でも、合金単体でなく鋼板に樹脂などをサンドウィッチした複合型があり、洗濯機などの外装に使われます。
超音波攻撃を受けているかどうかの確認に、液体中の強力な超音波によっても空洞現象が生じるキャピテーション現象を利用する方法があります。
水の入ったペットボトルに泡が発生している場合は、超音波を利用した攻撃を受けている可能性があります。
低周音波、超低周音波を利用した攻撃への防御
防御素材:カルムーンシート、発砲ポリウレタン、ゴムシート、低周音波用の防振材
カルムーンシート:樹脂層と金属層からなる制振シートです。低周波から高周波まで非常に高い振動吸収性を持ち、振動を吸収することで騒音、ノイズの発生を低減することができます。軽量な上、樹脂は接着性を持っているため、様々なものに貼り合わせることができます。
謎の脳損傷へのネットの反応まとめ
- ものすごく高い確率で陰謀説を否定できないですね。恐ろしい国があるもんだ・・・早急に原因究明してほしいです。そして全貌を明らかに!!
- 130人全員が脳損傷だとしたらそれは明らかにおかしい。超音波などの武器でも開発したか?でもそれなら世界一の情報機関(CIA)に何の情報も入っていないはずがないけど。
- すごいニュースだ。当然日本人もやられているだろうし、恐らくアメリカなど西側諸国も似たようなことはやっているだろう。
- 世の中 攻撃は原爆やミサイルだけではない。ウイルスもあり 食べ物でも出来る マイクロ波でも・・勿論 有毒ガスでも コンピューターウイルスでも・・目に見えない攻撃が流行りだしたら 世も末ですね
- 一時期に結構問題になったけど、結局は因果関係が掴めず、また外交問題に発展する恐れがある為、米国は調査を打ち切った。米国は中国に頼り切った財政だった為・・・。
出典:ヤフコメ
まとめ
- ハバナ症候群とは5年前にキューバの米国大使館の米外交官や家族が訴えた難聴などの症状と、軽度の脳損傷などが見られた症候群で、中国の米領事館などでも発生している
- 原因は特定されていないが、マイクロ波などの電磁波ではなく、音響兵器による攻撃の可能性が高いといわれており、防御には、防振材で覆うくらいしかない
- 陰謀説を否定できない、早急に原因究明してほしいとの声多数