ある会社員の女性が、飼っている2匹のカワウソを棒のようなものでたたき、逃げ回っているカワウソの様子が映し出された動画がインスタグラムで投稿され、それが発覚して「動物愛護法違反の疑い」で、9月29日書類送検されたというニュースがありました。
女性は「噛みつかれるのが嫌で、しつけのため」と答えているのですが、しつけのためでも棒でたたくのは良くないですね。虐待とも言えるのではないでしょうか。
そこで、コツメカワウソの生態や、飼うとしたらどのようにしつけや世話をすればよいのか調べてみます。
コツメカワウソ虐待ニュースの詳細
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コツメカワウソを扱う「コツメイト池袋」という都内の店に、匿名でUSBが届いたことから事件が発覚しました。
USBには、女性がペットのコツメカワウソを棒のようなものでたたいている姿がありました。2匹のカワウソたちは逃げ回っています。
その女性は東京渋谷区の自宅で2匹のコツメカワウソを飼い、インスタグラムにカワウソの写真や動画を投稿していて、フォロワー数は22万人にも上っていました。
その動画の中で、投稿者の女性がコツメカワウソを棒のようなものでたたいている映像が映るUSBが「コツメイト池袋」に送られたということです。
その映像を見た「コツメイト池袋」の店長が「これはひどい」ということで警視庁に相談し、捜査が進められていたという経緯です。
捜査の中で女性は「餌をあげる時にかみつく習性があり、かまれるのが嫌だった。しつけのためだった」と、虐待を否認しているとのことです。
コツメカワウソの生態
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カワウソは、ネコ目イタチ科カワウソ亜科に属し、南極やオーストラリア・ニュージーランド以外の世界中に生息し、ラッコを含み13種類います。コツメカワウソもその一種です。
河川や湖・沼・海辺など水のあるところに生息する肉食動物です。しかしコツメカワウソは、どちらかと言えば陸での生活を好み、深い水の所よりも浅いところを好みます。
コツメカワウソはカワウソの中では一番小型で、東南アジアや中国に多くいますが、絶滅の恐れがあるともいわれています。
体長は40~60cm、体重は3~6㎏ほどです。
野生のコツメカワウソは10頭前後の家族が群れになって暮らしていて、夫婦仲がとても良く、出産頭数は1回につき、1~6匹くらいです。
みんなで丸まっている様子も見ることができます。
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指先に小さな爪があるので、「コツメカワウソ」と言われます。
手には一部水かきが付いていますが、他のカワウソほど完全なものではないので、穴を掘ったりうまく泳ぐという能力は、あまり高くはありません。
しかし、細い体で水の中を素早く泳ぎまわって、エサを上手に捕まえて食べます。
野生のコツメカワウソのエサは、川魚や貝、カニなど皮などに生息する生き物です。(魚類・甲殻類・小動物・貝類・昆虫類など)
コツメカワウソは手先が器用なことが特徴です。餌を捕まえるときは、口でとらえるのではなく、手を使います。手で押さえつけて捕まえてから口に運ぶのです。
また、仰向きに寝て胸の上で、貝殻や石を使ってジャグリングのようなことをすることもできます。
コツメカワウソにとって、手はとても重要なのです。
赤ちゃんを抱えているような姿も見られます。
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鳴き声はなんと12種類以上もあるそうです。「ウィーウィー」「にゃーにゃ―」「ピーピー」「ぎゃーぎゃー」などで、仲間とコミュニケーションをとるときに使い分けているようです。
コツメカワウソの寿命は、10年から15年と言われています。ただそれは水族館などで飼育をされた場合で、野生の場合はそこまで長くは生きられません。
野生のコツメカワウソの天敵はワニや蛇、ジャガーなどで、野生だと天敵に食べられてしまうこともよくあります。
コツメカワウソは噛みつく?噛んだら痛い?
コツメカワウソは、貝類やザリガニ、カニなどの甲殻類を食べるので、とても頑丈な歯を持ち、固いものもかみ砕くことができます。
歯は剃刀のようで、しかも強く噛む習性があります。もし人が噛まれたら大けがをする可能性もあるのです。
小さい時の「あまがみ」というのはありますが、成長してからもびっくりしたり、カワウソにとって嫌なことがあるときには、慣れた人に対しても突然噛むことがあるそうです。
神戸市にある「アトア」という水族館に、「お浜」という名前のコツメカワウソがいます。お浜はよくものを噛んで壊したり、飼育員の長靴に噛み跡を残したりしていて、水族館では「破壊神」と言われています。
寝床にしている麻袋も噛まれてボロボロになったため、2歳の誕生日(2022年9月28日)に、耐久性の高い消防ホースを再利用したハンモックが送られたというニュースもありました。
https://www.asahi.com/articles/photo/AS20220929003124.html
コツメカワウソはペットとして飼う時の飼い方と注意点
コツメカワウソはとても可愛いですね。
丸い顔に愛くるしい目、くるくるした動きや小さい手で物をつかんで食べる様子など、見ていて飽きません。
水族館でもとても人気者です。
あんな可愛い動物が毎日家にいたらどんなにいいでしょう、という思いから実際に飼っている方もおられます。
しかし実際には、ペットとして飼うには結構大変なようです。
鳴き声は大きいし、水を浴びることが必須ですが部屋中走り回るので部屋がびしょびしょになったり、エサ代もかかり、病気になっても診てもらえる獣医さんが少ないなど、大変なハードルがある中で、一番困るのは「噛むこと」のようです。
小さいけれど凶暴なコツメカワウソちゃん、飼う時は相当の覚悟が要るようです。
コツメカワウソの飼い方
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もしコツメカワウソを本気で飼いたくなった場合、準備しておくことは以下の通りです。
- コツメカワウソについて勉強しておく(生態や飼い方、かかりやすい病気、獣医さんの確保など)
- コツメカワウソを迎える環境づくりをする
- 適切な餌を用意する
- トイレのしつけ
- 噛みクセのしつけ
ではひとつずつ解説します。
①コツメカワウソについて勉強しておく
まずは「勉強しておく」ということですが、コツメカワウソをペットにしている人はまだ少なく情報もあまりありません。
どんな環境でどのように育てたらいいのか、どのように接すればよいのか、どんな病気になりやすいか、しつけの方法や注意点なども飼う前にきちんと頭に入れておくことが大切です。
犬や猫と違い、病気になっても診てくれる獣医さんが近くにいるかどうかも事前に確認しておかないと、病気になってから探していたら間に合わなかったり、とても遠くまで行かなければいけなくなったりします。
②コツメカワウソを迎える環境づくりをする
次に環境づくりですが、まず必要なのは「ゲージ」です。
室内で放し飼いにすると、何でもかじったり噛んだりするので、電気のコードをかじって感電したり何かを誤飲をする可能性が出てきます。危険な目に遭わないためにも飼い主が留守の時等にはゲージに入ってもらえれば安心です。
ゲージの大きさは、カワウソが余裕を持って動き回れる犬用のゲージが良いです。ただカワウソは立つこともあるので、高さも必要です。
ゲージの下には布や牧草などの巣材を敷いておきます。
ゲージの中に、安心して眠るための「巣箱」もあればよいでしょう。それも犬や猫のハウスを代用します。
コツメカワウソは犬や猫と同じようにトイレを覚えます。そのため「トイレ」を用意しておきましょう。犬や猫用のトイレトレイにペットシーツを敷き、ゲージを部屋の隅に置くようにします。
カワウソにとって水浴びは不可欠です。健康な皮膚を維持するためにもストレス解消のためにも大切です。
そのため「水浴び場」が必要になります。
川の中を悠々と泳ぐカワウソなので、水浴び容器は大きい方が良いのですが、大きな水浴び場が確保できない時はできるだけ深く水を入れてあげるようにします。ちなみに水温は30度から36度に調節します。
③適切な餌を用意する
カワウソの主食は魚や貝類、カニやエビ、昆虫など水辺にいる生物です。基本的にカワウソは「肉食」とも「雑食」ともいえる動物です。
動物性たんぱく質を豊富に配合したフェレット用のフードやキャット用のフードでも代用できます。フェレットを飼っている人が増えたので、フェレット用なら入手しやすいです。
もっと手に入りやすいキャットフードでも良いのですが、その場合は尿路感染予防効果のあるフードがおすすめです。(カワウソは尿路感染症になりやすいからです)
④トイレのしつけ
さて、しつけの仕方に入ります。
コツメカワウソはトイレが覚えられます。
しかし家に迎えたばかりの時は緊張しているので、落ち着いたころに始めるようにします。
まずはカワウソが床などでした排せつ物をペットシーツで拭き取ります。そのペットシーツをトイレに決めたい場所に丸めておくか、拭いた排せつ物を新しいシーツにつけておきます。
トイレ以外の場所で排泄をするようなそぶりを見せるときは、トイレに連れて行くかトイレをカワウソの方に移動させ、トイレで排泄をすることを覚えさせます。
これは犬のトイレトレーニングと同じ方法です。
一度では無理ですが、何回も行うことで覚えていきます。
⑤噛みクセのしつけ
「噛むから」と言って棒のようなものでコツメカワウソを叩いたことが明るみに出て、女性が書類送検されましたが、コツメカワウソは「噛む」動物なので、少しでも噛むのを減らすために、初めにしっかりとしつけておく必要があります。
遊んでいるときに噛まれたら、スッとその場を離れ、噛んだら寂しい思いをすることを学習させましょう。
噛んだ状態から離す方法もあります。
飼い主が厚手の手袋をつけた状態で遊んでいて、かまれたらその状態のままカワウソの顔にぐっと手を近寄せます。カワウソは歯に圧力がかかると口を開けるので、口を離します。
やってはいけないことは、噛まれた時に大きな音を立てたり恐怖を感じさせるようなことです。その後ますます噛まれるようになるので、決して怖がらせるようなことはしないようにしましょう。
ただ噛むことについては、コツメカワウソの特徴でもあるので、実際に飼っている人のブログで、「何をしてみても噛み癖は治らない」という情報も見かけました。
まとめ
コツメカワウソは可愛いので飼いたいと思う人は多いでしょう。
しかし「噛む」という行為はコツメカワウソの習性でもあるので、飼う時にはそのことを覚悟しておく必要があります。
覚悟していても実際に噛まれてけがばかりしていると辛いと思いますが、書類送検された女性のように棒のようなもので叩くのはしつけでもなんでもなく、ただカワウソに恐怖を与えているに過ぎません。
カワウソにも個性があるので、より凶暴な子もいれば比較的おとなしい子もいるでしょう。
もし飼うことがあるなら、噛むことを少しでも減らすために、その子の特性を良く見極めて飼い主か試行錯誤をする努力をしながら、コツメカワウソちゃんと信頼関係を築いていきたいと思います。