幼児・児童・高齢者・障害者などに対し、その保護、世話、養育、介護などを怠り、放任する行為のことだね。
最近は子どもに対するネグレクトがよく話題になってるね
育児を放棄して遊びに出かける親などがTVで話題に上がる事が多くなっています。
その背景には、貧困、薬物やアルコールの乱用、精神障害、片親による育児などがあるようです。
今回は、子どもに対するネグレクトについて紹介します。
ネグレクトとは
一般的にネグレクトとは、「幼児・児童・高齢者・障害者などに対し、その保護、世話、養育、介護などを怠り、放任する行為」を指します。
最近では中でも特に、子どもに対して行われるネグレクト、すなわち「育児放棄」を意味して使用されることが多いです。
育児放棄による死亡例がTVなどで取り上げられているので、そのイメージが強いのだと思います。
小どもに対するネグレクトは、身体面、情緒面、医療面、教育面で必要不可欠なものを与えないことです。
ネグレクトは「身体的虐待・精神的虐待・心理的虐待とならぶ虐待の一つ」とされています。
ネグレクトの原因
ネグレクトは多くの場合、不十分な育児技能、ストレス対処技能の不足、支援が得られない家庭環境、ストレスの多い生活環境など、複数の要因が組み合わさって生じます。
ネグレクトは経済的ストレスと環境ストレスのある貧困家庭で発生することが多いです。
特に、親に精神障害(典型的にはうつ病、双極性障害、統合失調症)、薬物またはアルコールの乱用、または知的障害などがみられる場合に、その傾向が強まります。
片親家庭の小児では、収入が低く、利用可能な資産が少ないことにより、ネグレクトのリスクが生じます。
ネグレクトの種類
小どもに対するネグレクトには、いくつかの種類があります。
身体的ネグレクト
親や養育者が、小どもに十分な食事、衣類、居住環境、監督、潜在的危害からの保護を与えない状況を言います。
情緒的ネグレクト
親や養育者が、子どもに愛情やその他の情緒的な支援を与えない状況を言います。
子どもは無視されたり、拒絶されたり、他の子どもや大人との交流を妨げられたりします。
医療ネグレクト
親や養育者が、子どもにけがや(身体的または精神的な)病気がある時に必要な治療を受けさせない状況を言います。
子どもが病気になったときに医療機関の受診を遅らせ、より重い病気にかかるリスクを高め、死亡に至らしめることさえあります。
教育的ネグレクト
親や養育者が、子どもを学校に入学させなかったり、公立学校や私立学校などの通常の学校へきちんと出席させなかったり、在宅教育を受けさせなかったりする状況を言います。
ネグレクトの影響
虐待の一つであるネグレクトは、子どもにさまざまな悪影響を与える可能性があります。
身体的影響
ネグレクトが子どもに与える身体的影響としては、十分な食事が与えられず栄養障害になってしまったり、愛情不足により成長ホルモンが抑えられて成長不全を引き起こしたりという身体的発育への悪影響のほか、保護者の監督不十分により子どもが事故に巻き込まれたり、保護者の関心あるいは知識不足によって治療すべきケガ・病気が放置され悪化したりという直接的な悪影響が挙げられます。
知的発達面の影響
ネグレクトのなかには、子どもが学校に行けていないケースも存在します。
そのようなケースでは、子どもの言語発達に遅れが生じたり、学力が同年代の子どもと比べて低くなってしまったりする可能性が高いです。学年に応じた学力が身に付かないことで、その後の進学や就職において困難を抱えてしまうことが予想されます。
心理的影響
ネグレクトが原因で、親との間に適切な愛着関係が築けないと、愛着障害や感情のコントロールに関する障害を発症することが多く、そのために対人関係で困難を抱えるようになってしまうことがあります。
また、ネグレクトされた経験がトラウマとなり、長い間苦しむこともあります。
ネグレクトを回避するには
ネグレクトから子どもを救うためには、ネグレクトが行われている疑いがあることを関係機関に伝えられる必要があります。
ネグレクトを受けていると思われる子どもを見つけた場合、その内容を児童相談所に通告しましょう。
虐待の通告は「児童虐待対応において極めて重要」とされており、したがって、児童虐待防止法では、すべての国民に通告義務を課しています。
速やかな通告がされないと、行政機関も虐待の防止に向けた活動を行うことができず、虐待を受ける子どもの生命や心身に大きなダメージを与える危険性が高くなります。
ネグレクトの通告先は?
「189」に電話連絡します。
「189」は厚生労働省により設けられた全国の児童相談所の共通ダイヤルです。
相談は24時間365日いつでもすることができます。
相談者の氏名や相談内容に関する秘密に関しては口外されないよう定められているため、相談者にとって安心して相談しやすい環境が整えられています。児童相談所の担当者に対して氏名を明かしたくない場合は、匿名での相談もおこなうことができます。
虐待を見つけたら児童相談所に通報するの?児童相談所ってどんな所?
児童相談所っていう言葉は聞いたことがありますか?
近年は虐待される子どもが増え、虐待のニュースを聞くときに「児童相談所」という名前が聞かれることがあります。
名前の通り児童の相談をするところですが、実際に児童相談所はどのような業務を行い、どのような相談を受けている所なのでしょうか。
ここでは児童相談所に関する情報と、虐待などの通報を受けたらどのように対応をしてくれるのかということについて解説します。
児童相談所ってどんなところ?
児童相談所は、児童福祉法の第12条に基づいて、各都道府県に「中央児童相談所」または「子ども家庭相談センター」などといわれる中心的なところと、各地域に中小規模の相談所が設けられています。
47都道府県すべてにあるだけでなく、人口の多い都市部には市や区が管轄する相談所やセンターもあります。
もともとは第二次世界大戦後に、親を失ったたくさんの孤児や迷子たちを保護するために設けられた施設ですが、子どもに関わるあらゆる問題に対処するための機関として発展してきたのです。
対象となる児童というのは18歳未満の子どものことで、児童に関わる大人と子供本人からの相談も受け付けています。
児童相談所の主な業務は、専門知識と資格を持った職員が相談を受け、市町村や保育・教育施設などとも連携しながら調査をし、適切な助言や援助を行うことです。場合によっては児童相談所内にある一時保護所で子どもを生活させて様子を見て、保護者や教育機関、行政などと連携を取りながら今後の措置を決めていきます。一時保護には子どもの心身の状況を確認するためだけでなく、虐待などを受けている場合は身の安全を守るための意味もあります。
児童相談所ではどんな相談ができる?
児童相談所は子供に関わることならどんな相談にも応じています。子供本人や親だけでなく近隣の住民や親せきなどからの相談も受け付けています。
主な相談内容には「養護」の問題があります。近年は離婚する夫婦が多くひとり親家庭になるケースや、親が病気になるなどで子どもを育てることが困難になるケース、虐待やネグレストといわれる育児放棄などで親本人やこども、または近隣に人などからの相談が多いです。
また子どもに自閉症や知的障害があるために、どのように育てたらよいかわからないとかどの教育機関に行けばよいかなど、「障害」に関する相談もあります。
「犯罪」や家出、不純異性交遊など「非行」などの問題行動がある場合の相談や、子どもの性格やしつけに関する悩み、身体の成長に関する悩みなど相談内容は様々です。
児童相談所ではどんな業務がある?
児童相談所には相談・指導部門と判定・指導部門、措置部門と一時保護の部門があり、主に相談・指導部門で相談に対応するのは児童福祉士や児童心理士です。スーパーバイザーといわれる教育・訓練・指導担当の児童福祉士の意見を聞きながら、相談業務一般を請け負います。
判定・指導部門というのは相談内容に応じて家庭環境や親、子どもについての社会的・心理的・行動的状況を判定する部門です。
措置部門というのは、相談を受けて判定された家庭の親や子供が今後どのように暮らしていくのかを決める部門です。そのまま在宅で暮らすこともあれば、施設への入所や里親委託になることもあります。在宅措置になった場合は児童福祉士やそのほかの関連職員が定期的に自宅に訪れてサポートをすることになります。
そして一時保護部門というのは、保護者の同意を得たうえで一定期間家庭と離れて、指導員や保育士などの職員と他の子どもたちと寝食を共にするところです。子どもの安全のため、緊急の場合は保護者の同意を得ずに保護をすることも可能です。
判定業務と措置が決まるまでの間一時保護所で生活をするのですが、その間は学校にも行きません。その代わり学習時間を決めて保育士や指導員と一緒に学習をします。
一時保護所内では子どもたちが退屈しないよう、季節ごとの行事をしたり外に散歩に行ったりしながら、ほかの子どもたちと共に規則正しい生活をします。
そのようにして一時保護所で生活している間に生活指導やカウンセリングを受けたり、医師に身体の状況を診てもらったりして判定され、措置が決められるのです。
虐待やネグレストの通知を受けたら、児童相談所はどのように対応する?
児童相談所に相談するケースの中で、親の離婚や病気などで養護ができないとか子供の生涯に関わる相談や非行問題などは直接保護者にあたる人が相談をすることが多いですが、ネグレストや虐待に関しては、親自身が気づいていないことも多く、どちらかといえば近隣の人や保育園や幼稚園・学校の先生、警察や医師などによって通報されるケースが多いです。
保護者自ら、「自分は虐待をしているのではないか」という相談なら、児童相談所の相談員も何らかの支援をすることができますが、当人以外の所から相談がある場合、児童相談所はどのような手順で対応していくのでしょうか。
児童相談所は、通報を受けたらまず受理会議を開いたうえで、安全確認のための初期調査をします。安全確認をするためには家庭訪問をして、虐待の恐れがある場合は警察の援助を受けながら立ち入り調査を実施します。
保護者が立ち入り調査を拒否すれば、児童相談所は出願要求ができます
立ち入り調査でさらに虐待の可能性があると思われた場合や、保護者がさらに立ち入り調査を拒否・妨害した場合は再度出願請求を出して、裁判所で裁判官への許可状の請求を行い、警察の援助を得て実力行使で捜索をするというのが初期の安全確認です。
安全確認の結果で子どもの援助の必要性があれば一時保護したり、心理判定や社会調査を行います。それからその後の援助方法を決定し、措置をするという流れになります。
これらの流れは厚生労働省が出す「児童相談所の運営指針」に基づいた流れですが、実際には虐待に関する通報や相談が多く、しかも目に見えにくいネグレクトのような虐待については知識と経験が豊富な相談員でないと対応が難しいため、人員確保が十分できていない現状があり、それが現在と今後の課題となっています。
子どもの命に係わる問題のため、国として早急な施策を必要とする重要な課題なのです。
まとめ
保護者の愛情や関心が子どもに向かないことで生じるネグレクトは、子どもの精神的・身体的な発達に大きなダメージを与えます。
しかしネグレクトを受けている子どもは、日常的に虐待を受けていながら、それを虐待と感じていないこともあります。また、幼児などの小さい子どもは自分でSOSを出すことができません。
子どもを救うためには、周りの人が気づき、早急に支援の手を差し伸べることが極めて重要です。もし疑いのある子どもを見つけたら、勇気をもって行動するようにしましょう。