8月11日に、レストランでの食べ残しが「ショッキングで痛ましい」と習近平国家主席が憤慨し、恥ずべき食べ残しをなくす重要指示を再度出したと伝えられました。
宴席などでは食べ残しをするという中国の伝統のマナーを習近平が阻止せざるをえない5つの理由を見ていきましょう。
7年前の光盤運動(お皿を空にする運動)はどうして始まったのでしょう。
中国の食べ残し伝統マナーとは?
昔、日本では、お米はお百姓さんが苦労して作ったのだから、お茶碗のご飯粒は1粒も残してはいけないのがマナーでした。
ところが、中国は逆で、宴会や招待された場合には食べ物を残すのがマナーとされてきました。
中国には、もともと割り勘という習慣がなく、会食時には、誰か一人がホストとなって飲食代を支払います。次の機会にはお返しに、今度は客がホストとなって奢るということが当たり前となっていました。
このときに、テーブル上の皿がすべて空になっていると、ホストに対して「物足りなかった」「もてなしの量が少なかった」と言っていることになり、ホストの面子を潰してしまいます。
逆に、会食で客が食べ物を残せば、「もうこれ以上食べきれない」「こんなに多くの料理でもてなしてくれた」という意味となり、ホストは食べ残しを見て、「皆が満足してくれたんだ」と感じることができるという訳です。
このようにして、昔からの食べ残しの伝統的な文化習慣で、料理を残して捨てることに抵抗がなく、経済の発展とともに、ますますその傾向が増加してゆきました。
光盤運動とは?
以前から行われていたが、効果が十分でなかったという光盤運動とはどんなものでしょうか?
中国語では、光盤はそのままでは、光ディスクを意味しますが、運動がつくと、光が「空にする」という意味となり、盤の「皿」と合わせて、「お皿を空にする」運動となります。
2013年に民間から始まった運動です。
1月に、ある新聞社社長が、きれいに食べ終えたお皿を写真に撮って、微博(中国版ツィッター)で公開し、「吃光盤里的東西」(皿の上のものを全部食べよう)と呼びかけたのです。
すると、これに賛同する網友(ネットユーザー)が、次々と食べ終えた空の皿の写真のアップを投稿し始め「食べ残し反対」と唱えるひとがどんどん増えてゆきました。
そして、ついに新華社、人民日報など中国共産党系のメディアも巻き込む運動となりました。
そして、1月末、人民日報は、今後大々的に国レベルで「節約に励み、浪費を慎もうキャンペーン」を展開していくことを発表しました。
ここで、「浪費が恥ずべき思想であることを広めていかなければならない」という当時の習近平総書記の言葉を掲載し、この「光盤行動」はさらに本格化しました。
「光盤運動」はこの年の流行語トップ10にも選ばれました。
この時点で、年間に2億人分の食糧が廃棄物として処分されているという事でした。
現在は、中国都市部の外食産業だけで1年に出る残飯は1700万~1800万トンと推定され、3000万~5000万人分の1年間の食料に相当するといいいます。
さらに、最近ではネット上で、人気の動画共有アプリを使って、過剰な量の食事を暴食する動画を投稿するのが流行しています。
2013年の指示も、習近平の威光を持ってしても根付かなかったどころか、ますますひどくなったということになります。
今回の運動では、
地域のケータリング業界では、「N-1方針」(団体客に人数分より1品少なく注文するよう求める)たり、レストランに対し、一人客に少なめか、半分の量を提供するよう提案していると言います。
光盤運動を再度展開するのはなぜ?
食料事情がかなり悪化するという危機感があるようです。
・2013年以降の光盤運動が、経済発展や、海外観光の増加によりほとんど効果を上げていないどころか食料の廃棄量がますます増加している。
・食料の安全保障に関する危機意識を常に、維持する必要があり、さらに、今年は新型コロナウイルスのパンデミックによる影響で、さらなる警鐘が鳴らされている。
・大規模な洪水被害によって、長江のデルタ地帯にある広大な農地が壊滅したことで、中国の農産物の半分近くが生産されるこの地帯での収穫が失われ、食品価格が高騰している。
・米中対立の激化で、米国からの食料輸入が滞る恐れがある。
・移動時に農作物をすべて食い尽くすというアフリカからのサバクトビバッタの大襲来が迫っている。
しかし、食べ残しは、昔から続く、文化的習慣であるため、再度指示したことによって、これが変わるか疑問です。
日本やタイでも中国人観光客による食べ残しやマナーの悪さが問題になったことがあります。
2018年06月に、大阪の焼き肉をチェーン店で食事をした中国人観光客2人が追い出された騒動が起こりました。
女性二人は肉をたくさん注文したが、多くを残してしまい、肉の上に使用済みのお皿を載せたりして、テーブルはかなりの惨状だったそうです。
中国での食べ残し否定へのネットの反応
- それだけでは無いのだろう。長江流域の大規模水害、下流域には広大な農村地帯が広がってる。今年の収穫量に付いて悲観的な想定が出て来た事は容易に想像が出来る。
- 中国って、食べ切れないくらい頼んで、残すのがいい、みたいな文化じゃなかったかな?日本は逆でお米一粒残さないようにって文化だけど、文化を変えるって大変だと思うわ。相当な矯正というか、罰則でも与えないと無理だと思う。
- 中国はそもそも食料を大量に輸入しているが、アメリカからも小麦や肉を買っている。米中貿易摩擦で関税を上げたりのポーズをしているが、本当は食料の高騰が一番怖い。
- 親族が結婚した中国人男性は、残すのは悪い事と叩き込まれた日本人に対して、中国人は残す程に料理を頼まないと罪悪感を感じるみたいです。これは根強い文化なので変えていくのは努力と時間がかかると思います。
- 北海道旅行で宿泊した大型ホテルで、唖然とし、大変嫌な思いをしたことがあります。(バイキング形式で)たくさん来ていた中国人グループのテーブルには、どこも食べ残しが山のようにあり、まだ食事中の我々を含めた他のお客さんのそばで、ホテル従業員がそれを無言で台車に載せた大きなバケツにどんどん捨てていました…
出典:ヤフコメ
まとめ
- 中国で食べ残し伝統マナーを否定せざるを得ないのは、コロナ禍、洪水、米中対立、バッタの襲来など食糧事情を悪化させる理由が5つある
- 光盤(お皿を空にする)運動は、スタートして7年にもなるが、効果が出ているどころか、ますます残飯は増えている
- 当時からすると海外への観光客も増えて、顰蹙を買う場面もあるが、伝統文化を変えるのは大変との声が多数
日本でも、最近は、大食いや早食いをイベントやTV番組にして競争させ煽りもてはやすような流行があります。
中国ばかりを笑っていられません。コロナに地震、異常気象、洪水、台風と、日本でもいつ食料危機がやってきてもおかしくありません。
先進国で、食料自給率最低の日本こそ今真剣に考える問題かもしれません。