インドネシア高速鉄道の直近情報とこれまで「手痛いしっぺ返しを受けたばかりなのに」「お人好しすぎる」

インドネシア高速鉄道2020年8月時点の直近情報とこれまでの経緯をまとめました。

工事中の事故、災害など多発していますが、中国国内では高速鉄道建設がどのように報道されているか?についても見てゆきます。

また、新型コロナウイルスの感染症対策および医療体制支援を名目とした無償資金や円借款を日本が最近決定したことについてのネットの反応もまとめました。

5年前の恨みは簡単には消えないわね

インドネシア高速鉄道の直近情報

インドネシア高速鉄道の2020年8月時点の直近情報について見てゆきます。

6月にインドネシアが、中国主体のジャカルタ=バンドン高速鉄道建設のコンソーシアムにジャカルタ=スラバヤの高速化計画を進める日本を追加することを検討していると報じられました。

・中国主体のコンソーシアムによる高速鉄道計画:ジャカルタからバンドン
・日本の在来線の高速化計画:ジャカルタから東ジャワ州の州都スラバヤまでの鉄道高速化計画(2019年9月合意、事業化に向けた調査を2020年末までに)

理由は、高速鉄道建設工事の大幅な遅れと当初予算が大幅に膨れていることとしています。

鉄道2路線の国家戦略プロジェクトを一本化して、日本の力を借りて、建設を促進したいということですが、簡単ではありません。

線路の幅が高速鉄道の広軌と在来線の狭軌で異なる。
日本の在来線の高速化計画のルートを変更する必要がある。
中国と日本では、建設されたトンネル、橋などの安全基準などが異なる。

日本は、2015年、中国との受注競争で契約直前で、日本が苦杯をなめた思いがあり、インドネシアへの強い不信感があります。

この状況では、在来線の高速化計画もどうなるか分かりません。

これまでの経緯を振り返っておきましょう。

年月進捗状況進捗率
2015年9月インドネシア政府は日中が競合していたジャカルタ-バンドン高速鉄道計画を撤回し、入札を白紙とした。
2015年9月インドネシア政府は政府の財政支出や債務保証を必要としない中国案の採用を発表した(2015年着工、2019年開業予定)。
2016年1月ジョコ大統領出席のもと、起工式がバンドンで行われた。
2016年2月欧米各紙が、中国側の審査書類未提出や、新たな資金提供条件の追加により、「中国の55億ドルの高速鉄道計画が停滞」と着工に至っていないことが報道される。
2016年8月必要な建設許可証をインドネシア政府が発行した。
2016年11月必要な土地の82%が取得されたが、100%土地が取得されていないため、中国の銀行の資金調達ができず、延期された。
2017年3月ジャカルタ郊外のハイルム・ペルダナクスマ空軍基地周辺の解放ができず、土地、財政、安全上の問題により、プロジェクトが停止した。
2017年4月中国インドネシア高速鉄道共同事業体 と7企業からなる高速鉄道建築請負共同事業体間で47億USドルのエンジニアリング、調達、建設(EPC)契約された。
2017年10月インドネシアの商業相が、「問題はすでに解決されていると私は信じている」とし、「建設は来年初めに始まる」と同プロジェクトに沿った土地の取得が終わりに近づいていることを示唆した。
2018年3月国土庁と農村計画局の政府機関がこのプロジェクトのために1,800以上の土地の取得が必要であったため、プロジェクトの土地利用許可が遅れていたと表明する。
2018年7月ジャカルタ側始発駅周辺の空軍用地が高速鉄道会社側に引き渡され、工事を本格化させる準備が整ったと報道される(事業担当のインドネシア国営企業社長は2021年に完成予定)。
2019年3月ワリニトンネル掘削開始される。13%
2019年5月ワリニトンネル完成する。土地取得はほぼ100%に達する。17.50%
2019年10月建材集積地となる用地確保や送電線を再配置する必要のため、2021年下半期(7~12月)にずれ込む見通しと報道される。38.20%
2020年2月中旬コロナ禍により、2週間の建設停止となる。44%
2020年5月中旬コロナ対策を取り工事再開、開業予定が2021年から1年程度遅れる見通し。48.30%
2020年6月「高速鉄道を(バンドンを経由して)スラバヤまで延伸し、日本に協力を要請」とのジョコ大統領の意向が伝えられる(完成2022年9月)。

高速鉄道が計画された経路は、密集した郊外、山間部、生産性の高い農業地域、重要な集水地域を通っているため、この工事により、関連する様々な事故、災害が報道されています。

2019年10月
インドネシアの西ジャワ州チマヒ市で、高速鉄道の工事現場に敷設されていた国営石油プルタミナガスパイプラインへの損傷により、燃料パイプから軽油がもれて、出火し、4時間後に鎮火したものの、少なくとも外国人の工事作業員1人が死亡した。

2020年2月下旬
洪水がジャカルタとチカンペク市の間の主要な有料道路を塞いだ
ジャカルタと東部の工業地域を結ぶチカンペック高速道路の19キロメートル地点と24キロメートル地点で洪水が、発生したが、原因は、高速鉄道等の建設工事によって排水路面がふさがれた結果であった。
当局は3月2日にプロジェクトの一時的な停止を命じました。
道端に投棄された土の山が排水路を埋め、洪水を引き起こしたためで、粗悪な管理慣行がセキュリティ、健康と安全、または環境に十分な注意を払っていなかったことが原因とした。

このように、高速鉄道関連工事による洪水、土砂崩れ、建物のひび割れなどの災難に見舞われ、管理の悪さと環境影響評価が不十分な点によって生じていると現地では憂慮されています。。

西ジャワ州は、鉄道が水の供給に影響を与え、地滑りを増加させ、周辺の景観に環境的なストレスを与えるという懸念を強調しています。

何があろうときっと中国はあきらめないぞ
スポンサーリンク

中国国内での報道

インドネシア高速鉄道工事の進捗状況についての報道が主です。

2019年5月 最初のワリニトンネルが貫通した記事を載せ、工事が順調に進捗していることを宣伝しています。13カ所のトンネルが建設される予定。

2020年8月(新浪看点)
2つの連続ビーム(梁)の完成
DK29(全長が211.6メートル)とDK15の2つの連続ビーム(梁)を完成させた。中国電力建設グループの水力発電局が2018年10月25日から1年10ヶ月を要して建設し、コロナ禍のなか、流行の影響を克服した。

全長142.3kmのインドネシア高速鉄道は、正線の80%以上が橋として設計され、そのほとんどが標準的なプレハブボックスビーム接続を使用しています。

建設が順調に進捗しており、現地での技術移転など大きな寄与をしていることを強調しています。(新華網)
http://www.xinhuanet.com/english/2020-08/15/139293342_15975335898051n.jpg

これだけ見ると頑張っていると思うわね

インドネシアに対するネットの反応

日本政府はインドネシア政府の要請を受ける形で、新型コロナウイルスの感染症対策および医療体制支援を名目に、20億円の無償資金協力と円借款を決定した記事に対するネットの反応を見てみましょう。

  • 中国と日本を天秤にかけながら、上手くいかないと、日本に泣きつく。上手く転がされてるだけやないかい。
  • インドネシアに関しては、日本が見捨てていいぐらい不義理をされてると思いますが。コロナウイルスは日本人が持ち込んだと、大統領自ら発言し、それが原因で日本人差別が多く見られたらしい、インドネシアという国に対して、どうしてまた援助をするのか。非常に疑問だ。
  • お人好しすぎる!なんで毎回毎回どこかの国の尻拭いを日本がやる!出来なかった国にお金請求してもいいぐらい!途上国を支援するなとは言わないが、その支援される側に裏切られても、まだ金出すって。。。
  • インドネシアにしたって、日本は手痛いしっぺ返しを受けたばかりなのに、またお金を使う。日本は一度”外交”について考える必要がある。まっ、バブル時代から金をばら撒いてりゃ、慣れちまうわな
  • 日本はインドネシアに支援をすべきでない。高速鉄道の中国への発注経緯、過剰なODA要求など、小狡く信用できない国家である。支援をしても心からの感謝すらないだろう。

出典:ヤフコメ

もううんざりというのが本音のようね
スポンサーリンク

まとめ

  • 中国が受注したインドネシア高速鉄道は、度重なる計画見直しで、現時点で、3年近く予定が遅れており、災害、事故、環境問題など多くの課題を抱えている
  • 中国メディアは、トンネル、連続ビームなど、完成するたびに工事が順調で、現地に大きな寄与をしていると宣伝している
  • 5年前のインドネシア政府の裏切りへの不信感が強く残っていて、どのような形であっても、援助するなどもっての外との意見が強い

5年前の、苦い経験依頼、日本では、中国によるインドネシア高速鉄道建設がうまく行くはずはないと、冷たく見てきましたが、2019年開業はおろか、現在に至っても進捗率50%程度となっています。

ここに至って、インドネシアは、日本を引き込んで工事を進捗させようとの都合の良いことをほのめかしていますが、中国メディアもこれには警戒を露わにしています。

ここまでの、遅れや事故、災害については、中国インドネシア高速鉄道共同事業体として建設を行っているわけですので、土地の収用が遅々として進まなかったなどインドネシア側の責任も多いにあるはずです。

東南アジア初の高速鉄道事業ですので、習近平主席の威信がかかっています。
難航しようと、金と時間がどれだけかかろうと、中国は完成させざるをえません。

日本は、中国の高速鉄道には一切手を出さず、場合によっては、在来線の高速化計画からも撤退するくらいの覚悟をもって筋を通してほしいと思うところです。

日本もコロナで大概お金がないんだから

スポンサーリンク