金融所得課税とは?見直しいつから?世界ではどうなのか

総裁選で、「1億の壁」は成長の果実の分配や国民の一体感を取り戻すという点から「考え直す、見つめ直す必要があるのではないか」と話していた岸田首相が、就任後、金融所得課税の見直しを検討するとの意向を示しました。

金融所得課税とは?見直しいつから?世界ではどうなってるの?

現在の金融所得課税の問題点と、見直すなら、いつから?世界と比較して日本はどうなのかをはっきりさせてゆきます。

そのせいか株は連続して下がってきたわね!

金融所得課税とは?いつから見直し?

金融所得課税とはどのような仕組みで、どこに問題があるのか?見直すとすればいつからか?を見てゆきます。

金融所得課税の見直し
株式の売却益や配当などの金融所得にかかる課税の強化により、税収を増やし、中間層や低所得者に配分しようというものです。

「1億の壁」とは?
課税所得が5000万円を超える富裕層には、累進課税で、40%超える所得税がかかっている(個人住民税も含めると55%)ものと、サラリーマンは思い込んでいますが、それは、給与所得者の場合で、実際は5000万~1億円の課税所得者(4万6千人)の税率は27.9%で、1億円以上の2万人の富裕層への税率は、23.20%と逆に下がっています(国税庁の「申告所得税標本調査」 令和元年度分)。

申告所得階級区分平均所得
金 額
平均課税所得
金 額
平均税額所得税の
負担割合
人数(万人)
500万~1000万691万509万57万8.3%110
1000万~2000万1392万1182万224万16.1%53
2000万~5000万2927万2685万704万24.0%25
5000万~1億6728万2億8573万6734万23.2%2
1億以上2億8983万2億8573万6734万23.2%2

この原因は、株式譲渡益や配当金など金融所得への課税は一律で20%(所得税15%、住民税5%)で、富裕層ほど所得に占める金融所得の割合が相対的に高いためと見られています。

与党でも2019年度の税制改正大綱で「税負担の公平性を確保」と明記し、将来の税率の引き上げに含みを残していたものの、2018年秋の税調では、投資控えによる株価への悪影響を懸念した自民党税調の甘利明会長が早々と見送った経緯があります。

ただ、昨今の益々の株高などで、コロナ禍で打撃を受けた多数の国民との格差がますます大きくなって国民の不満は溜まっています。

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金融所得課税見直しの概要

一律案
現在の一律20%の税率を例えば、25%に引き上げる。

累進制案
高所得者の負担が重くなるよう累進的に課税する案。

メリット

一律案
25%とした場合、、数千億円の税収増が見込めます。

累進制案
1億円超の課税所得の納税者は約2万人にとどまるため、影響を受ける人が限定される。5000万円以上でも7万人。

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デメリット

一律案
上場株式を保有する個人投資家は1407万人おり、中間層も相当数含まれるため、負担増となります。
少額投資非課税制度(NISA)などの利用で、富裕層よりは影響は少ないかもしれない。
岸田政権の中間層への分配を増やす方向に逆行する。

累進制案
金融所得の多い富裕層に絞ることができるが、増える税収分が小さくなります。
50万円以上の金融所得の税率を30%に引き上げた場合、税収増約3000億円程度との試算がありますが、一律案に比べると税収増は少ない。
欧米に比べると、富裕層が少なく、税収増が限られるためです。

いずれにせよ見直し案を導入した際には、市場に大きなインパクトを与え、株の下落が見込まれます。
株式などへの投資意欲を低下させることになります。
2010年末の上場株式の売却益などの税率を10%から20%への引き上げを決めたときは、当初1カ月間で、日経平均株価が1万6000円台から一時的に1万4000円を割るまで下落したことがあるのです。

政府がこれまで掲げてきた「貯蓄から投資」政策に水を差すことになります。
日本では、相変わらず欧米に比べると、家計が保有する金融資産のうち株式などは少ない状況は続いています。

いつからありそう?

今年末の2022年度税制改正で議論を始めるとの報道もありますので、ここで決まれば、2022年から適用ということもあり得ます。

2010年末上場株式の売却益などの税率を10%から20%への引き上げ決定、2011年1月適用、
2020年11月に2021年度の金融所得課税見直しを見送りを決定などの記録がありますので、今年末に2022年度税制改正で議論を始めれば、2022年から適用ということも十分考えられます。

これまで、与党内でも2019年以降この問題に取りくんできていますので、方針さえ決めれば、速やかに実行に移される可能性が高いと思われます。

早速実行力を試されるね

金融所得課税の世界の事情は?

<アメリカ>
株式譲渡課税:国税の税率は3段階で445万円以下は0%、445万超4,910万円は20%、4,910万円超は20%が国税で、地方税は州によって異なります。
配当課税: 株式譲渡課税と同じ。
<イギリス>
株式譲渡課税:土地の譲渡益と合わせて171万円までが非課税で、504万円以下が10%、504万円超は20%の2段階です。
配当課税:29万円が控除され超えた部分について3段階の税率。504万円以下7.5%、504万円超2,190万円以下32.5%、2,190万円超38.1%となっています。
<ドイツ>
株式譲渡課税:10万円まで非課税でそれを超えると26.375%。
配当課税:株式譲渡課税と同じ。
<フランス>
株式譲渡課税:分離課税だけでなく総合課税を選択できるのが特徴で、分離課税30%、総合課税は17.2~62.2%。
配当課税:株式譲渡課税と同じ。

ドイツ、フランスが日本より高く、イギリスや場合によりアメリカは日本より低くなっています。
日本が低すぎるとは必ずしも言えないようです(以上財務省のウェブサイト参照)。

アメリカの富裕層は数と言い、資産額といい日本の比ではないからね

金融所得課税へのSNSの反応

  • 金融資産課税→金持ちへの増税→投資されなくなる インボイス制度→個人事業主やフリーランス売上1000万円以下へ増税 →仕事停止・廃業 増税のために自民党そのものがやろうとしてるから。 投資も新規事業も潰すので、そりゃ日本経済止まる。
  • 岸田総裁になってから日経平均が続落 金融資産課税を口にした影響もあると思うが、「変われない日本」の姿が見え隠れし、それに対する嫌悪感という側面が大きいように思う 世論調査で岸田内閣の支持率がイマイチ高くないのも、同じ理由だと思う
  • 海外投資家はそう思うでしょうね。貯蓄から投資へと煽っておいて金融資産課税とは。キャピタルゲイン課税は我慢できても、配当課税は断じて許せない。
  • 金融資産課税で株が下がって、GPIFの運用益が減って、年金が減るって流れかね?
  • インフレ率2%も達成せずに、金融資産課税は酷すぎる。NISAやiDeCoをさらに優遇して国民のタンス預金を国内企業へ投資させ株価を上げてからやってくれ。

出典:ヤフコメ

海外勢が引き上げたら、株など上がりようがない

まとめ

  • 株式の譲渡や配当にかかる現在20%の金融所得課税が見直され、早ければ2022年から実施される可能性もある
  • 日本は欧米と比べて、金融所得課税が格段に高すぎるとは言えない
  • 金融資産課税見直し発言などで、岸田新内閣発足以降、株が下がるばかり、日本経済は大丈夫かとの声多数
どの国も中間層を厚くするのに苦しんでいるのよ
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