※この記事は当時起きたことを思い出して書いている記事です。現在も同様の事が行われているかはわかりません。
不真面目な生徒たち
中学生の頃からおっさんと呼ばれる今に至るまで、僕は本当に勉強が嫌いだった。
授業中は先生の話なんて聞いておらず、自分の頭の中の空想の世界に生きており、頑張るのは体育の時間や図画工作の時間ばかり。ボーダーラインを超える最低限の点数を取り、なんとかやり過ごしていた学生の日々。
勉強が嫌いで授業がつまらなかったので、授業中に友達とおしゃべりをして遊びまくってしまい先生を度々怒らせていた。
もちろん、僕だけに限らずクラス全体が騒がしい授業もあった。騒がしい授業になってしまう先生は大体決まっていて生徒たちからとにかくナメられていた。その先生の授業では漫画を読んだり、正面の黒板から180°逆側を向いておしゃべりをしたりとやりたい放題。
真面目に授業を聞きたい生徒たちもいたはずなのに、今考えると本当に酷い授業態度だと思う。
怒りのティーチャー
そのように騒がしくしていると急に先生が机をドンと叩き、扉を勢いよく開けて無言で教室を出て職員室に帰ってしまうことがあった。先生が怒ってしまったのだ。
当然クラスは水を打ったように静まり、雰囲気は最悪になる。
「やべー先生を怒らせちゃったよ、誰が謝りに行く?」
という空気。
今までノリノリで話していたTVゲームの話題から、いきなり難易度マックスの人生というゲームの選択を迫られる事になる。僕は比較的うるさくしていた方の生徒だったので、先生が怒って職員室に帰ってしまった時は良く青ざめたものだ。さらに、
「ちょっと!男子がうるさくしてるからでしょ!」「いや、女子だって話してたジャン!」「でも男子の方が・・・」「女子だって・・・」「いやん」「あはん」
などという口喧嘩が始まってしまい、収拾がつかなくなるカオスな教室。責任の擦り付け合いを経て、とりあえず反省した僕らは学級委員的存在を職員室まで派遣したりする。
先生は授業中でガランとした職員室で背筋を伸ばして、ツンとした表情を浮かべて座っている。こちらの方を見向きもしない先生に「うるさくしてごめんなさい」と、とにかく平謝りを繰り返すことでようやく許してもらい、先生が帰ってきて授業が再開されるなんていう思い出を僕は何度か経験している。
本当に幼い生徒というものはどうしようもない。先生の立場を考えずにうるさくして100%生徒である僕らが悪い。今考えると怒らせた先生には本当に申し訳ないことをした。
と、そんな風に思って素直に育ってきたが、果たしてこの問題は生徒だけが反省する出来事なのだろうか?
義務教育における先生
大前提として授業中に騒いでいる生徒は悪い。そこは間違いない。特に義務教育という名前からもわかるように、生徒たちが学校で授業を受けるのは義務である。当然教育を受ける為には襟を正した授業態度が必要不可欠である。
しかし、教育というのは、人が人に何かを教えて育てる行為なので、『教わり手』だけでは成立しない。『教え手』とセットで初めて成り立つ言葉だ。
つまり、義務教育は『生徒が教育を受ける義務』であるのと同様に『先生が教育を行う義務』でもあるといえる。これは職業選択の自由がある日本において、教員という職業に就いた人間の宿命でもある。
先生を無償のボランティアで行っているのであれば、給与を貰っていないので生徒たちが謝っておしまいの話だ。いや、むしろ騒ぐ生徒には水平チョップくらいしても良いと思う。
けれど、職業として教員を選択していて給料を貰っているのに、自分の思い通りに授業が進まないからといって、職場を放棄して職員室に帰るという行為は仕事として正しい姿なのだろうか?
職員室に帰っちゃう教師
実は当時から、怒りに任せて無言で扉を開けて部屋から出て行く先生を見て「いや、アメリカ人女性じゃねんだからよ」と思っていた。
現在、仕事をしている僕の立場に置き換えて考えてみるが、自分の業務が上手くいかなかったからといって、怒って会社に帰ってくることはないと思う。一応、他の職業でも考えてみた。
【営業職だった場合】
取引先との打ち合わせで、先方に嫌味を言われて上手く契約に到らない空気感が漂ってきた場合、その相手を放ったまま、怒って会社に帰ってしまうなんていうことが許されるのだろうか?
ほとんどの営業職の方は、そこでもうひと踏ん張りして契約を取るために頑張るのではないかと思う。
【美容師だった場合】
カットした髪型が気に食わないとクレームをつけられた場合、セットの途中の変な髪形の客をテルテル坊主みたいな状態のまま放置して、休憩室に帰ってしまうのだろうか?
ほとんどの美容師の方は、今の髪型からでも対処できる手段を講じて客に納得してもらえる努力をするのではないかと思う。
【サッカー選手だった場合】
日本代表でゴールが決まらない状態が続き、フラストレーションが溜まったサポーターからブーイングが発生した場合、日本代表の選手たちは試合を途中で投げ出してロッカールームに帰ったりするだろうか?
選手たちは最後まで諦めずにゴールを狙い、走り続けるのではないかと思う。
【風俗嬢だった場合】
風俗嬢をしていて、そこの店は普通のヘルスなのに、すげー太った油ギッシュおじさんがエキセントリックなプレーを強要してきた場合、風俗嬢は部屋から出て助けを求めるだろうか?
・・・あ、いや、これはアリか。すいません。この例えはナシ。ボイコットOK!
と、まぁ、一部の例外を除くと、ほとんどの職業において仕事の逆境では、その逆境を乗り越える努力をするのが一般的ではないだろうか。先生が生徒に怒って仕事を投げ出して職員室に帰ってしまうなんということは、職務怠慢なのではないかと思うのだ。
要するに何が言いたいかというと
生徒たちが、受けた授業のすべてに対して騒いでいるのであれば、学校自体が『天使にラブソングを2』みたいな荒廃したスラム街的学校だと諦めるしかないのかもしれない。
しかし、他の授業ではおとなしくしている生徒たちが、ある特定の先生の授業だけ騒いでいるのであれば、その責任は生徒と先生に対してイーブンにかかってくるのではないかと思う。
話を聞いてくれないからと職員室に怒って帰り、生徒にだけ謝らせる行為は社会人として問題があるのではないだろうか。それでも当時の僕らは年齢も若く幼かった為、先生の言うことは絶対だった。今社会に出てから考えるとこんな理不尽なことはない。
怒って職員室に帰った先生がいたとして、その先生に生徒が、
「うるさくしてすいません」
と謝ったのであれば、先生も、
「こちらも仕事を途中で投げ出してすいません」
と謝るべきだと思う。
それでこそ筋が通った対応だし、その筋の通し方が時に本来の教育行為として生徒の心に成長を促す行為なのではないかと思う。もちろん、出来れば職場の放棄もするべきではない。
相手から嫌なことをされた時に職場を放棄して良いのは風俗嬢だけなのだから。