「市川海老蔵にしか創りだせないだろう!」とまで語る今回の『新・源氏物語』
どうやら今までにない “一線を画した” 歌舞伎になったようです。
2014年4月に京都・南座で上演された源氏物語は、「歌舞伎」・「オペラ」・「能」を融合させ、全く新しい舞台の出来となり、大好評を得て終演となりました。
ん、オペラとの融合(?)
「能」は歌舞伎と同じ日本の伝統芸能だが、オペラとの融合とは何なんでしょうか(?)
歌舞伎とは無縁な感じがしますが…
以前に片岡愛之助さんが演じた『GOEMON』もフラメンコとの融合が斬新でしたが、今回の歌舞伎とオペラとの融合も斬新ですね。
どのような内容だったのか気になりますねぇ?
今回は京都で公演された源氏物語の内容と、来年の「源氏物語18都市公演」の場所や期間なども合わせて調べてみました。
源氏物語
聞いたことはあるのだが、そもそも源氏物語って何(?)
『源氏物語』とは平安時代に作者・紫式部により書かれた、100万文字、22万文節にも及ぶ日本の長編物語、小説です。
100万文字がどのくらいの長編かと言うと、これは400字詰めの原稿用紙がおよそ2400枚にも及ぶ という “超” 長編とも言える作品である。
そのため三部構成にわかれており、「世界最古の長編小説」とも言われている。
また男女の恋愛や肉体関係などが頻繁に出てくる内容なので「日本最古のポルノ小説」とも呼ばれている。
ストーリー
注)あまりにも長すぎて、1ページだけでは説明できないので1000分の1くらいに訳した内容です。
【前編 ?禁断の愛?】
天皇の子供として生まれた主人公・光源氏は類い稀な美貌の持ち主でかなりのイケメンであった。
源氏が3歳の時、大好きだった母親・桐壺更衣(きりつぼのこうい)が他界してしまう。
いわゆるマザコンだった源氏はそんな亡き母の面影を追いながら大人になり、やがて年上の人妻や幼女、宮中の中の女という女と母を照らし合わせながら関係を持つようになる。
イケメン、セレブときたら周りの女性は放っては置かなかったのだろう。
そんな源氏だが、父・桐壺帝(きりつぼてい)の新しい妻・藤壺中宮(ふじつぼのちゅうぐう)があまりにも実の母親に似ており、源氏にとって義母にあたるのだが、やがて母親としてじゃなく女として好きになってしまう。
そして肉体関係まで持ってしまった。
禁断の愛はずるずると続き、やがて子供までできてしまうが二人の関係が認められる事はなくそれ以降は会うことさえ許されなくなってしまった。
そのやり場のない思いから源氏は少しでも「藤壺中宮に似てる女を」と、探しながら様々な人と付き合い始めるようになるのだが・・・
【後編 ?因果応報?】
身分的には順調に栄華を極めて行くが、恋愛面では上手くは行かなかった。
源氏には紫の上(むらさきのうえ)という最愛の妻がいたのだが、浮気心で新たに別妻・女三宮(おんなさんのみや)を迎えたのだ。
それがショックで、正妻の紫の上は病死してしまう。
しかも別妻で迎えた女三宮は源氏が期待したほどの女ではなく、やがて不仲になってしまう。
そんな時だった。
源氏が自分の子供のように可愛がってた柏木(かしわぎ)と妻の女三宮が密通していたのだ。
しかもまさかの子供までできてしまう始末。
自分が若い頃に犯した行為を、老いた自分が同じことをされるとはおもいもしなかっただろう。
まさに因果応報である。
そんな源氏は世の無常を悟り、出家する事になる。
やがて主人公の光源氏が死ぬ事により本編は終わります。
(*源氏物語早わかり相関図)
と、『源氏物語』とは恋愛、嫉妬、裏切りなどをテーマに取り入れた男女のドロドロを題材にしたラブストーリーなのです。
代々受け継がれてきた『源氏物語』 と、新たな『源氏物語』
歌舞伎の演目にもなってる今回の『源氏物語』は、海老蔵さんの父・十二代目市川團十郎や祖父の十一代目市川團十郎も勤めた大役です。
「思い入れがないと言えば嘘になります」
と、語る海老蔵さんは代々受け継がれてきた源氏物語を
「しかし、日本人が表現する限界を突き破ることで、この公演が現代の方に観ていただく一つの新しい光になればいいと思っています 」
と、少し意味深なことを京都南座上演の前に言ってました。
これこそ海老蔵さんが挑戦した新・源氏物語だったのです。
歌舞伎の演目には変わりはないのですが、今回の源氏物語は「能」と「オペラ」を融合させる事により全く新しい源氏物語となったのです。
「異なる表現のなかで面白いことができるのではないか。ゆくゆくは海外で公演できて、歌舞伎とお能を英語で表現できたら、世界に理解していただける架け橋になるのでは」
と、この三者が一体になって舞台を創り上げて行く事により将来的には世界へ広げていきたいとの思いがあったようです。
「能」とは?
日本の伝統芸能の一つで、猿楽・田楽を元に室町時代に成立した舞台芸術。
音楽、劇、舞い、詩などから構成されている。
「オペラ」とは?
演劇と音楽から成り立っている、こちらも舞台芸術です。
時代はルネサンス後期の16世紀末、場所はイタリア・フィレンツェが発祥とされている。
オペラとはイタリア語で「仕事」「作品」とも言う
日本語的には「歌劇」とも言われてますね。
能は歌舞伎と同じ日本の伝統芸能だが、オペラは東洋発祥の歌舞伎とはジャンルが違う舞台芸術なのだが海老蔵さんはどのように融合させたのでしょうか?
「能」との融合
実は以前に海老蔵さんの自主公演「古典への誘い」で能とは一度共演しておりましたが、今回の融合は
「六条御息所を歌舞伎で表現すると説明的になってしまうので、幽玄という共通点でお能の方に演じていただきたい」
と新しい表現方法で演じる事となりました。
また源氏物語の作者でもある紫式部も登場させ
「具体的に表現するのが難しい心情を語っていただく」
と斬新な構想まで考えたのです。
演じるのは若女形としてめざましい活躍を見せる新世代の一人、歌舞伎役者・片岡孝太郎。
幽玄とは?
簡単に言うと “美的理念”
本来なら中国思想の分野で使われていた言葉だったが平安時代から鎌倉時代にかけて当初は “和歌” を批判する言葉として使われていた。
しかし中世・近世以来には今回の能や “禅” や “茶道” などの日本芸術文化に影響を与えるほどの言葉として用いられてる。
また、江戸時代の俳諧や茶道では美的理念の “さび” につながっていく。
能との融合はわかりましたが、では「オペラ」とはどのように融合させたのでしょうか?
?「オペラ」との融合
今回の舞台のテーマソングは「アンソニー・ロス・コスタンツォ」が奏でます。
この方は、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場などで活躍するオペラ歌手でカウンター・テナー(女声の高音域を歌う男声歌手)を担当。
海老蔵さんは
「義太夫のような立場でテーマソングを歌っていただきたい。心底にあるものを、場面に応じて同じ歌を歌い分けていただく」
とオペラとの融合を説明。
こうして出来上がったのが今回海老蔵さんが挑んだ、一線を画した『新・源氏物語』です。
『源氏物語』 全国公演!
2014年桜咲く季節の4月に京都・南座での上演された源氏物語は、海老蔵さんが取り組んだ「能」「オペラ」の融合により新たな源氏物語となり大好評で終演することができました。
「歌舞伎と言うよりアートな感じがして斬新でよかった」
「ナレーションは通常三味線だが今回はオペラだったのが新しくて良かった」
「桐壺帝を能の方が勤めた演出が非常にいい」
と、源氏物語をご覧になった方々は新しい試みを絶賛する。
そんな源氏物語を見逃した方、遠方につき見に行けなかった方に朗報です。
今回、全国18都市で公演する事になりました!
是非、この機会にどうぞ。
【市川海老蔵特別公演 源氏物語 2015】 公演情報!
2/28(土) 愛知県芸術劇場
3/1(日) 愛知県芸術劇場
3/3(火) 岡山市民会館
3/4(水) 上野学園ホール(広島県)
3/6(金) iichikoグランシアタ(大分県)
38(日) 長崎ブリックホール
3/11(水) 沖縄・コンベションセンター棟
3/14(土) 神奈川芸術劇場
3/15(日) 神奈川芸術劇場
3/16(月) 神奈川芸術劇場
3/18(水) サンミューゼ(長野県・上田市)
3/20(金) 福井市文化会館
3/21(土) NHK大阪ホール
3/22(日) NHK大阪ホール
3/25(水) ニトリ文化ホール(北海道・札幌市)
3/27(金) 岩手県民会館
3/28(土) 東京エレクトロホール宮城
3/29(日) 宇都宮市文化会館
3/31(火) ひめぎんホール(愛媛県)
4/1(水) 高知県立県民文化ホール
4/3(金) 博多座
4/4(土) 博多座
4/5(日) 博多座
4/8(水) オーチャドホール(東京)
4/9(木) オーチャドホール(東京)
『源氏物語』ミドコロ
私が感じたミドコロは三つ
一つ目は、作者・紫式部のストーリーテラーを演じる片岡孝太郎さん。
女形として最近目覚ましい活躍を見せる孝太郎さん演じる紫式部とは?
二つ目は、やはり主人公演じる海老蔵さんの演技力ですね。
大好きな母を亡くした時の表情や、父の新妻・藤壺中宮役の市川ぼたんさんとの兄妹共演、その藤壺中宮と禁断の関係になってしまった時の演技など… 新・光源氏をどう表現するのか?
三つ目は何と言っても「能」「オペラ」との融合でしょう。
今回の源氏物語の最大のミドコロではないでしょうか?
桐壺帝を勤める「能」
ところどころに入ってくる「オペラ」アンソニー・ロス・コスタンツォの歌声。
今回のコンセプトでもある融合がどのように調和されたのか(?)
ミドコロ満載の源氏物語です。
全国初公演は2015年の2/28(土) 愛知県芸術劇場からのスタートになります。
本番での緊張感、舞台を生で見る臨場感、近郊の方または当日愛知県まで行ける方は是非見に行く事をオススメします!
『一線を画した市川海老蔵にしか創り出せない『新・源氏物語』とは?』・まとめ
歌舞伎に新時代を創り続ける海老蔵さんが、今回も全く新しい源氏物語を創ってしまいました。
変化のスピードが目まぐるしい世の中で “歌舞伎” というものが取り残されないためにも今回の試みは大成功だと私はおもいました。
伝統的な基本は残しつつも、新しい風を吹き込み現代風 … ?いや、近未来風にしていく事によって歌舞伎が引き継がれて行く。
また今回のような世界的な舞台芸術のオペラを入れる事によって日本のみならず海外にも広まって行く。
今後の海老蔵さんの舞台は要注目ですよ。
お見逃しなく!!
今回も最後までご覧いただき有難うございます。
関連ページ
『源氏物語』に関して詳しくは公式サイトでも御覧になれます。