日米の野球シーズンも最終盤。ところで野球は「統計」「確率」のスポーツだといわれます。チームや選手の成績を示す大変多種多様な数字があるのが特徴ともいえますが、さらに近年は「セイバーメトリクス」という、数学を駆使した最先端のデータが次々登場。
その中でも「野球選手の価値を表す究極の数値」ともいわれるのがWARです。このWARとは?その計算方法や利点、問題点、そして最新ランキングなどを分かりやすくまとめました。(出典:Wikipedia、日米のスタッツサイトなど)
野球のWARとは?分かりやすく言うと..
野球といえば昔からゲーム差、打率、本塁打数、投手の勝ち星など馴染みある数値がメディアに溢れ、ファンは毎日それをチェックして一喜一憂するのが常。
ただ近年は米国で開発・進化したセイバーメトリクスの新しい指標が続々登場し、野球中継などでもよく使われるようになりました。
中でも最近注目されているのがWARです。WARとは何なのか分かりやすく説明しましょう。
1,「その選手が何勝増やしたか」が分かる
WARとは英語の「Wins Above Replacement」の略語です。訳すと「勝利数代替水準対比」となって余計何のことやら分かりませんが、これは「ある選手Aと、交代要員の控え選手(能力は平均レベル)とを比較して、Aが試合に出たことでどれだけチームの勝利数を増やしたか」を示します。
WARは打撃・走塁・守備・投球などその選手のあらゆるプレーを総合評価しており、「代打だが本塁打をよく打つ選手」と「成績は平凡だが全試合スタメンの選手」など、条件がかなり違うプレーヤー同士の貢献度を比較することもできます。
2,投手・野手全員を同じ土俵で比べられる
WARは「平均的な力の交代要員と比較する」という共通の基準があることから、野手にも投手にも等しく適用できます。
従来の成績数値では「○勝○敗、○セーブの投手」と「打率○割、○本塁打の野手」のどっちがチームに貢献大なのか、直接比較するのは難しいですが、WARはこの数字だけで比べられるわけです。
ちなみにMLBでの数値の目安はWAR6~8でMVP級、4~5でオールスター級、1~2以上でスタメン級とされます。
WARの計算方法
分かりやすく言えばWARとは「全野球選手の総合ランキング」とでも表現できるわけですが、ではその計算方法はどうやるのでしょうか。
WARは細かい算出方法が定義されておらず、打撃、守備などの各指標に何を用いるかは算出会社によって異なるそうです。そのため発表会社によって値もやや違います。
具体的事例:大谷翔平
詳細な計算法は非常に複雑ですので、例えばFanGraphsの野手の算出法を概略だけお伝えします。
①wRAA(その選手が、平均的打者よりどれだけチームの得点を増やしたか)を算出
②UZR(その選手が、平均的野手に比べ失点をどれだけ減らしたか)を算出
③UBR(盗塁を除く走塁で得点をどれだけ増やしたか)、wSB(盗塁で得点をどれだけ増やしたか)、wGDP(併殺阻止で得点をどれだけ増やしたか)をそれぞれ算出し、合計したBsR(走塁の総合指標)を出す
④上記それぞれに補正を加える
⑤①~④を足してRAR(得点の総合指標)を算出する
⑥10RAR=1WARとしてWARに換算する
■大谷翔平の場合
これを今季大谷選手に当てはめると(9月16日現在、FanGraphsより)、
wRAA 37.5 + UBR 1.2 + wSB 0.4 + wGDP 1.0 = 40
さらにUZRを足し補正を施すと、大谷選手の野手WARは「4.7」となっています。
大谷くんがファイターズと契約したぐらいのやり取り。
お互い約束を果たせました😄 pic.twitter.com/Hbmy6NZmPU— ダルビッシュ有(Yu Darvish) (@faridyu) September 9, 2021
気になる選手のWARの数字事例
ちなみにFanGraphsによると、大谷翔平選手は投手のWARもかなりありますので、野手と投手分を足し上げた「Total WAR」は7.6となっています。
気になる最新ランキングですが、同サイトによると以下のようになっています。
1位 大谷 7.6
2位 バーンズ(ブリュワーズ投手) 6.7
3位 ゲレーロJr(ブルージェイズ野手) 6.3
4位 ウィーラー(フィリーズ投手) 6.2
5位 セミエン(ブルージェイズ野手)6.2
.@Burnes16 is NASTY. 🥴🤢🤮 pic.twitter.com/7NjfQ0CO0m
— MLB (@MLB) August 12, 2021
WARの問題点は?
野球の「WARとは」を分かりやすくご説明してきましたが、〝究極の評価指標〟とはいえ問題点もあります。「まだまだ研究途上のデータ」という面も正直否めないようです。
すべての数値が良くないと良い数字にならない
WARの問題点の一つは、野手の場合「打撃、守備、走塁」の全てがハイレベルでないとWAR全体は高くならない点です。また守備の指標も、信頼度にいまだ議論があるといわれます。
投手の評価が低くなる
またWARは「勝利への貢献度は野手:投手=6:4」といった考え方から、投手より野手の方が高くなりやすい傾向があるとされます。
補正数値
野球は同じプレーでも状況、場面、天気、球場など条件がさまざまに異なるため、投走攻守の各数値には補正が必要ですが、「どの程度増減させれば正しいのか」も議論があるようです。
WARの最新ランキング
最後に、WARの日米最新ランキングをチェックできるリンクをご紹介しておきましょう。
MLBのWARがあるリンク
プロ野球のWARがあるリンク
【1軍】全体WAR上位 9.1時点
山本(B)6.0
森(L)5.5
柳田(H)4.9
村上(S)4.7
近本(T)4.4
鈴木(C)4.3
源田(L)4.2
山田(S)4.2
オースティン(DB)4.2
浅村(E)4.0
柳(D)4.0https://t.co/N6ArtJ4UbK
(Class10以上で閲覧可)— DELTAGRAPHS (@Deltagraphs) September 1, 2021
まとめ
今回の記事をまとめると以下の通りです。
- セイバーメトリクスで「選手評価の究極指標」といわれるWARに今注目
- 投・走・攻・守全てのチームへの貢献度を算出。「何勝分に寄与したか」
- 投打の全選手を同じ土俵で比較できるが、野手優位・数値偏りなど問題も
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