コロナ禍が世界で「ピークアウト」し始めたとの判断からか、中断していたスポーツ各界で試合再開の動きが出始めました。日米などで人気競技のNPBとMLBも6月以降のリーグ再開を模索しているとされます。
そんな中、野球の世界一決定戦・WBCは延期の方向となったと報じられました。海外メディアによれば「2021年予定の次回WBCは2年延期へ」。延期は仕方ないとしてもなぜ2年なのか?その理由やWBC延期の海外の反応も探りました。
WBC2021が2年延期の理由
WBCとは「ワールド・ベースボール・クラシック」の略。他競技のように「世界選手権」「ワールドカップ」がない野球でも国別世界一を決めて、世界の野球普及につなげようとMLBが中心となって06年に第一回が始まりました。
基本的には4年に1度開かれ、第1、2回大会は日本が世界一を連覇。第3回から予選が導入され、17年の前回第4回大会では予選も含めて28の国・地域が出場。次回の第5回大会は2021年3月9~23日の日程で日本、台湾、米国で行われる予定で、本大会出場チームも20と過去最多に拡大される見込みでした。
ところがこのほど、海外主要メディアが相次いで「2021年WBCは23年へ2年延期される方向となった」と報道。その理由や海外の反応を探ってみました。
コロナ禍で〝既定路線〟
そもそもコロナ禍で次々と世界のスポーツが中止になる中、来年のWBCも延期されることは「既定路線」とも考えられました。まずもって今年3月12~25日に米国で行われる予定だった予選大会が延期に。予選が行われない限り本大会はできません。
さらにMLB開幕も延期となり、主催者自体「WBCどころではない」状況に。東京五輪が来年夏に延期されたこともあり、〝世界一決定大会〟を一年に2度も行うのは選手の負担面や日程的にも現実的ではない、という声がファンの間ではもっぱらでした。
なぜ2年?理由はMLBの「特殊事情」
普通に考えれば「では予選を2021年に、本戦は22年に1年ずつ延期しよう」となりそうなものですが、WBCはどうして23年へ2年間の延期となるのでしょうか。
MLBアナリストの記事によると、これはWBCの実質主催者が「MLB機構とMLB選手会」ゆえの特殊事情なのだそうです。MLBの運営はMLBと選手会の間で定める統一労働規約(Collective Bargaining Agreement)に従っています。同規約には最低年俸や契約金など労使関連のルールだけでなく、国外試合の開催場所や時期なども詳細に規定されています。
数年に一度の更改で現在の規約は21年末までで失効するため、現規約で定める国際試合は「いったん中止」という扱いになり、改めて次期労働規約で定め直す手続きが必要になります。このため現状では「21年予選、22年本戦」の日程は決められず、事実上最短で「2年延期」となるわけです。
延期で日本にはメリットも
今年行うはずだった母国の東京五輪は1年延期。肝心のNPBペナントレースも延期。さらに期待していた来年のWBCも延期。日本のファンや出場を目指していた選手たちはさぞ落胆しているだろうと思いきや、メディアには「延期はメリット」という声もあります。
そもそも21年は国際大会が過密で、3月にWBC、7月に五輪、11月にアジア選手権ととてもタイトなスケジュール。これにレギュラーシーズンを重ねると調整が大変な上、出場する選手たちの負担も極めて大きくなり、ケガなどのリスクが増えます。
延期することで現在リハビリ中のベテラン選手や佐々木朗希投手ら有望新人の出場可能性も広がり、また状況次第で大谷、トラウト選手らメジャーのトップ選手参戦の道が開けることも期待されます。
Team USA takes home the World Baseball Classic trophy for the first time.
What was your favorite moment of the 2017 WBC? pic.twitter.com/S1uHyJmZwh
— WBC Baseball (@WBCBaseball) March 23, 2020
この状況ではしょうがないですね。
3年後の大会で、#佐々木朗希 投手や #奥川 投手が主戦投手として活躍していることを願いましょう!(5/13付・スポニチより)
◾️第5回WBCに23年に延期 侍JAPAN東京五輪”金”へ全力集中詳しくは本日の紙面をご覧下さい。#スポニチ#野球#WBC#侍JAPAN#稲葉監督 pic.twitter.com/YeyLBqEPdM
— 竹内良佑 スポーツニッポン新聞社 Takeuchi Ryosuke SPORTS NIPPON (@take625suke) May 13, 2020
WBC2021延期に海外の反応は?
1年ではなく2年延期の方向となった理由は、コロナ禍とともに主催者MLB側の事情も大きな理由だと分かったWBC。世界一奪還を目指す日本やアジア、中米の国々の海外の反応では、理解しつつも落胆する声が多いようですが、当のアメリカ国内MLBファンのコメントは結構辛辣です。
- くそっ!プエルトリコがまた準優勝する場面を楽しみにしてたのに…
- いいことじゃないか!選手がケガする危険があるようなトーナメントは好きじゃない
- 全く問題ない。それよりMLBをしっかり開幕させてフルシーズンやることだ
- WBCなんて永遠になくしたっていいのに
- 100%同意!プレイする選手たちを尊敬し感謝はするけどね…
- とはいえ(米国初優勝の)2017年はかなり楽しんじゃったけど
出典:https://metsmerizedonline.com/2020/05/espn-wbc-will-not-be-played-in-2021
まとめ
今回の記事をまとめると以下の通りです。
- 21年開催予定だった第5回WBCがコロナ禍のため2年延期し23年実施へ
- 今年3月の予選ができず延期は既定路線。MLB・NPBも今季問題で手一杯
- 当初の21年予定はWBC・五輪ダブル開催など過密。選手たちには有利か
世界に新しいスポーツを広げるには、その国の人々に「面白い!」と思わせることが一番。「国別代表戦を行って世界一を決める」方法はシンプルに関心を高められる手段です。
世界的に競技地域が偏る野球にとっても、WBCや五輪は普及の良い機会になり得ますが、大きな問題は「本当に実力世界一なのか?」の疑問が拭えない点。プロ選手とチームの兼ね合いで、どの国も毎回「メジャーリーガーは欠場」「シーズンと重なるので主力は出ない」といった代表編成の苦労話ばかり。
代表戦に熱心な国の一つといわれる日本でさえ事情は同じです。W杯を頂点とするサッカーのように各国プロ球界挙げて協力しWBCや五輪を盛り上げない限り、米ファンのような冷めた反応は今後も続くかもしれません。