日米の2021プロ野球・レギュラーシーズンがまもなく幕を閉じます。ポストシーズンの行方とともに、ファンの関心は個人タイトルに移っていきます。
今回は、数ある野球の個人成績指標のうち、最近「守備力」を表す数値として注目の「UZR」をクローズアップ。UZRとはどういう意味で計算方法は?守備といえば真っ先に名手が思い出される「セカンド」の日米UZRランキングも調べてみました。(出典:Wikipedia、Fangraphsなどスタッツサイト)
UZRとは計算方法は?
統計のスポーツ、野球。幾多の細かい成績数値で選手は評価されますが、これまでの一般的な指標では、投・打に比べて守備に関しては明確な評価基準が少ないといわれてきました。
そこで米国で数学的方法を用いて開発された新しい野球指標「セイバーメトリクス」の一つとして、2001年に「UZR」という守備評価の方法が考案されました。
ではその計算方法や、「守備職人」の代表的なポジション、セカンドの2021年UZRランキングなどを順次見ていきましょう。
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UZRとは
UZRとは英語の「Ultimate Zone Rating」の略語です。数十年前から定着している「守備率」は、その選手が1試合平均いくつのアウトに関与したかを示しますが、これは投手の三振数が多かったり守備機会が少ないと小さくなる欠点がありました。
そこで打球の処理難易度や失策数、併殺能力、肩の影響などを総合的に加味し「同じ守備位置の平均的な選手と比べて、守備でどれだけの失点を防いだか」を表す新数値が開発されました。これがUZRです。
計算方法
UZRの計算には膨大な過去の選手全体の守備データが必要なため、ここでは考え方の概略のみお示しします。
【UZRの導き方】
・まずグラウンドを多数の「ゾーン」に区分し、各ゾーンについて発生した打球の種類(バント・ゴロ・ライナー・フライ)やその速度を記録。そして各ゾーンに来た特定の種類の打球について、リーグ全体でどれだけのアウトが記録されたかを算出。このデータを基に個別の野手のプレーに補正を加えながら「何点失点を防いだか」を計算する。
【UZRの事例】
・例えばある中堅手がライナーを捕球しアウトにした。この球は過去の統計から平均で中堅手が15%、左翼手が10%アウトにしていた。
・つまりこの中堅手はこのプレー成功で、本来「アウト確率25%」の球を100%に高めたことになる。その差分「0.75」点を防いだとみなす。これに様々な補正を加える。
【UZRの見方】
・同じ守備位置同士の相対評価であり、別々のポジション同士を比較することはできない。
・UZRは+10以上だと「非常に優秀、極めてうまい」、+5~+10で「優秀、上手い」、-5~+5で「平均的」、-10~-5で「悪い、下手」、-10以下だと「非常に悪い、極めて下手」と評価される。
UZR2021年のセカンドランキング
守備の難しさ、見た目の「派手さ」といえば、何といっても内野手、とりわけセカンドの華麗なプレーが目立ちます。そこで今回は2021年のセカンドのUZRランキングを日米それぞれで調べてみました。
■MLBのセカンドUZRランキング(2021年10月3日時点、Fangraphs)
1位 ヘルナンデス(ホワイトソックス) 5.3
2位 メリフィールド(ロイヤルズ) 5.3
3位 セミエン(ブルージェイズ) 4.9
4位 ウォン(ブルワーズ) 4.1
5位 アルビーズ(ブレーブス) 1.5
■NPBのセカンドUZRランキング(2021年6月時点、DELTA)
1位 阿部寿樹(中日) 8.4
2位 吉川尚樹(巨人) 4.0
3位 菊池涼介(広島) 4.0
4位 山田哲人(ヤクルト) 2.3
UZR以外の気になる指標
ということで、2021年セカンドUZRランキングや計算方法などをご紹介してきました。セイバーメトリクスの指標は他にも極めてたくさんありますが、特に注目度の高い、ファンには気になる他の指標を以下に二つリンクしておきます。
■WAR
ある選手がどれだけチームの勝ち数を増やしたかの「総合貢献度」。MLBではMVPの基準ともいわれ、2021年は大谷翔平選手が全30球団トップを維持中です。
■OPS
長打率と出塁率を単純に足し上げた分かりやすい「強打者の証明」。MLBでは大谷選手は現時点でMLB全体5位につけています。
まとめ
今回の記事をまとめると以下の通りです。
- 条件があまりに千差万別で評価しづらい守備。そこで近年米でUZRを考案
- 様々な条件・状況を細かく加味した総合評価指標。「守備で何点防いだか」
- 2021セカンドランキングのMLB1位はヘルナンデス、NPBは中日・阿部寿樹