【日本の昔話】一寸法師

一寸法師

昔、昔あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。

とても仲のいい夫婦でしたが、二人には子どもがいませんでした。

「神様、どうか私たちに子供を授けてください。どんな子どもでも私たちは大事に育てますから。」

子供のない二人は毎日子供が授かるよう神様にお祈りしていました。

ある日、願いが叶って二人は赤ん坊を授かりました。

しかし、驚いたことに、赤ん坊は背の高さが一寸にも満たない小さな小さな男の子でした。

「おぉ、なんて可愛らしい赤子じゃ。神様ありがとうございます。」

二人は赤ん坊に一寸法師と名付け、宝物のように大事に大事に育てました。

一寸法師はたくましい頭のいい子供に育ちました。

しかし、身体は大きくならず、村の子どもたちと一緒に遊ぶこともできませんでした。

「こんなにご飯を食べているのに、なんで大きくならないんじゃろうなぁ」
「元気に育ってくれてるから、いいじゃありませんか」

おじいさんとおばあさんは、一寸法師が大きくならないのを不思議に思いましたが、
それよりも、元気に育ってくれているのを嬉しく思いました。

ある日、一寸法師は二人にこう言いました。

「お父さん、お母さん、お願いがあります。

「どうしたんじゃ?」

「私を都に行かしてください。都に行って立派な武士になりたいのです。」

「都はとても遠いんじゃよ。お前の小さな身体ではどれほぼ大変な道のりになるか・・・」

「大丈夫です!川をくだっていけば都につくと聞きました。私に針と藁とおわんと箸を下さい。」

「そんなものを持って一体どうする気じゃ?」

「針は剣、藁はさや、おわんは船、箸はかいです。」

「うーん、わかった。都に行って立派になって帰ってきなさい」

二人は一寸法師が都へ行くことを許しました。

「気を付けていってくるんじゃぞ」
「はい!」

さっそく一寸法師は都へと向かいます。
おじいさんとおばあさんは、一寸法師が入ったおわんを川に流しました。

それから、一寸法師は毎日毎日川をくだっていきました。

途中で魚に襲われましたが、箸をつかって魚を追い払いました。
波に揺られ、雨にうたれ、風に吹かれ、やっとのことで都に着きました。

「うわ~都はすごい人だな~村とは全然違うや」

一寸法師はたくさんの人の間をすり抜けて、大通りを歩いていきました。

町を歩いていくと大きな立派な屋敷が見え、一寸法師はそこで働くことを思いつきました。

「門を開けてください。お願いがあります。」

主人は門をあけてあたりを見回しましたが誰もいません。

「ん?声がした気がしたが妙だな。誰も見えんぞ。」

「ここです!あなたの足元にいます。」

主人は下駄のそばに一寸法師を見つけ、

「私は一寸法師と申します。身体は小さいですが人一倍働きますのでここで働かせてください!」

「なんと一寸法師とな?珍しい。お前はなかなか活発で頭が良さそうだ。ここで働くといい。」

一寸法師は、一生懸命働き、剣術も学びました。

屋敷には美しい娘がおり、一寸法師はその娘から読み書きを教わりました。
一寸法師は頭が良くてすぐ理解してしまいました。

何年かの月日がたったある日、娘は一寸法師を連れてお宮参りに出かけました。

帰り道、空が暗くなり嫌な雰囲気がたちこめてきました。

娘がふと見上げると、お寺の上に2匹の鬼が金棒を振り回していました。

「ガハハハハ!」

鬼は、娘と一寸法師の間に立ちはだかりました。

「わしらはその美しい娘をもらいにきたのだ。さぁこっちへこい」

なんと、鬼は娘をさらいに来ていたのです。

「悪い鬼め。お嬢さんにちょっとでも手を出せばただではおかないぞ。」

一寸法師は娘を守ろうとしました。

「ん?なんだ?この豆粒みたいなやつは。お前に何ができるんだ?」

そう言うと鬼は一寸法師をひょいと持ち上げ飲み込んでしまいました。

「ガハハハ、あんな小さい身体でわしらを倒せるつもりだったのか?ガハハハ」

「ガハハハハハ・・・・ん?」

「いたた、いたたたた...!!」

鬼は急にお腹を押さえて痛がっています。

飲み込まれた一寸法師が鬼のお腹の中を針の剣で刺していたのです。

「いたた。やめてくれ~。」

とうとう鬼は一寸法師を吐き出してしまいました。

鬼から出れた一寸法師は、もう一匹の鬼にも針の剣で攻撃しました。

「ひゃ~!助けてくれ~!」

「もう、お嬢さんに手出ししないと誓うか?」

「もう、しません。しませんから~!」

そういうと鬼は山の方へ一目散に逃げて行きました。

「助けてくれてありがとう。あなたは小さいけど、とても勇敢で強いのね。」

「なんのこれしき。あれ、鬼が何か落としていきました。これは何でしょう。」

「これはうちでの小槌という宝物です。あれを振るとどんな願い事でもかなうと言われています。一寸法師、あなたの願いはなんですか?」

「願いがかなうのならば、私は大きくなりたいです。」

「一寸法師よ、大きくなあれ」

娘がうちでの小槌をふると、一寸法師はぐんぐん大きくなりあっと言う間に立派な大人になりました。

一寸法師は娘さんと結婚し、みんながうらやむ立派な武士になりました。

~おしまい~

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