100mのフライングルール最新を分かりやすく解説

陸上の東京五輪テスト大会「READY STEADY TOKYO−陸上競技」がこのほど国立競技場で行われ、男子「陸上の花形」100m決勝ジャスティン・ガトリン選手(米国)が10秒24で優勝しました。

注目の日本の〝エース格〟桐生祥秀選手は予選でまさかのフライングを犯し失格に「桐生ほどの一流選手でもあるのか…」と驚きが走った100m走のフライングルールや過去の事例などをまとめてみました。(出典:Wikipedia、スポーツメディアなど)

五輪本番と同じ会場でガトリン選手ら海外トップと走れる貴重な機会がふいに。桐生選手自身「気持ちが乗りすぎて。叫びたいくらい悔しい」とかなりショックみたいだったけど

100mのフライングルール最新

夏季五輪や世界陸上で一番人気があり、世界中の注目を集める競技の筆頭といってもよい陸上短距離男子100m。7月の東京五輪の同じ会場・国立競技場で行われたテスト大会では、世界歴代5位(9.74)の記録保持者ガトリン選手が貫禄で制しました。

史上初のメダルを目指す日本勢では、多田修平選手が10.26で2位、小池祐貴選手が10.28で3位に入りましたが、期待された桐生祥秀選手は予選で敗退しました。

たった10秒、一瞬で終わる100m。「人類最速は誰か?」って、何か理屈抜きにすごく原点に帰れる感じが逆に感動を呼ぶのかもなぁ
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一発失格はいつから?

その理由はフライング。レースでスタート直後、不正スタートを告げるピストルが鳴り、予感があったのか桐生選手は思わず両膝に手をつきました。

現在の陸上ルールではフライングは一回やると即失格です。この「一発失格」に至るまで、100mのフライングルールは変遷を重ねてきました。

ちなみに「フライング(flying)」というのは和製英語で、英語では「breakaway,false start」が一般的。「flying start」とも言うんだって。正式には「不正スタート」ね

過去には1選手1回までフライングが認められていましたが、2003年に「同じ組で1回フライングして、次にまた行った選手は、フライングをしていない選手含め全員失格」とルールが厳格化。さらに2010年からは1回目で一発失格とさらに厳しくなりました。

その理由について、陸上男子の〝レジェンド〟為末大さんは「フライングが多くなりすぎた」と指摘。1人1回認められていた頃は“保険”があるため、好タイムを狙う選手が駆け引きでわざとフライング。大きな大会では決勝で4、5回続くこともよくあり、その結果中継などテレビの放映時間内に収まらなくなるなどの弊害があったといいます。

フライングの反応速度基準0.1秒の理由

五輪など大きな大会の陸上スタートは、現在は非常に科学的なセンサー測定になっています。スタート地点で選手たちが足を乗せるスターティングブロックには「フライング判定装置」を装備。これはスターターのピストルとケーブルで接続され同期しています。

この装置で、ピストル音が鳴ってから選手が反応するまでのリアクションタイムを1000分の1秒単位で計測します。現在の世界陸連ルールでは、0.1秒未満で「足を動かす」「手を離す」などの行為をした選手はフライングとなります。

これは「人間が音を聞いてから反応するまで最短0.1秒はかかる」という医学的な根拠に基づいた規定だそうで、つまりそれより早く動いた場合は「ピストル音を聞いたのではないヤマ勘」と判断されるわけです。

ただスポーツ医学では「人間の反応速度は0.1秒未満もあり得る」との説もあり、今後また変更される可能性もあるけどね。100mってホント「究極の能力との戦い」だよなぁ

今回のテスト大会予選で、桐生祥秀選手は「0秒068」で動いてしまい失格に。ちなみに世界的トップ選手の間では、0秒140の反応なら合格点、0秒120前後なら「抜群のスタート」。逆に0秒160以上になると「出遅れ」と言われる、「0.01秒単位」の人間離れした争いが繰り広げられているそうです。

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主な100mのフライング事例3選

では過去の印象的な100mフライング事例にはどんなものがあったのかご紹介しましょう。

■2021年・桐生祥秀

再びこの東京五輪テスト大会ですが、10年のルール厳格化以降、世界的トップランナーがフライングを犯すのは非常に珍しく、桐生選手自身衝撃を受けた様子でした。

桐生さんいわく、前戦から疲れが抜けスタート練習でも「顔を上げたら60mくらい進んでいた」と好調だっただけに「タイムを狙いにいきすぎた」そうね

■2017年・桐生祥秀

実は桐生選手は今回が初めてのフライングではなく、過去にも一度「一発失格」を経験しています。17年のダイヤモンドリーグ上海大会で、ヤング選手(米国)がフライングして仕切り直しとなり、2度目のスタートで0.084秒」と規定からわずか0.016秒早く動き、失格になりました。

■2011年・ウサイン・ボルト

前人未到、いまだ破られない9秒58の「人類史上最速の男」ボルト氏も、実はやっちゃってます(笑)。世陸の韓国・大邱大会決勝で、連覇を狙ったもののまさかのフライング失格。天を仰ぐ姿が世界中に中継されたのは、陸上史に残るシーンでもあります。

うへー、こんなん人の目じゃ分からんレベル。ってか「On your marks(位置について)」→「Set(用意)」→「バン!」の間合いも結構関係しそうだが、その辺は決まりあるのかな?

男子100m日本記録歴代5傑

五輪本番では絶対避けて欲しい、厳しいルールの100mフライング。ではあらためて最新の男子100m日本記録5傑をチェックしておきましょう(記録は秒)。

■1位 サニブラウン・ハキーム … 9.97(19年6月) 

■2位 桐生祥秀 … 9.98(17年9月)

■2位 小池祐貴 … 9.98(19年7月)

■4位 伊東浩司 … 10.00(98年12月)

■4位 山縣亮太 … 10.00(17年9月と18年8月の2度)

まとめ

今回の記事をまとめると以下の通りです。

  • 東京五輪テスト大会の男子100mで、エース格桐生祥秀がフライング
  • ピストル音から0.1秒未満で反応し一発失格に。実は17年から2度目
  • かつては駆け引きで何度もOK。TV中継時間に入らず10年から厳格化

驚異的な世界記録保持者のボルト氏。ただ彼は、勝負所ではピストルが「このくらいで鳴るだろう」と感覚でスタートを切るタイプとされ、ルール厳格化前も何度かフライングを犯していました。

かつてベン・ジョンソン氏ら世界のトップには同じような「感覚派」が多く、レース序盤で優位に立つ展開を作り独走するパターン。一発失格ルールは「これら感覚派にとっては不利」とされ、実際「1回失敗したら終わり」という緊張感も重荷になったようです。

ボルト氏の場合、レースの度に世界記録更新を求められる過度なプレッシャーも加わり、その一瞬、さすがの〝超人〟も「生身の人間」に戻ってしまったのかもしれません。

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