おっさんだけど1か月以上もパンクした自転車に乗り続けてみた

壊れた自転車

僕の自転車は僕を愛している

『僕は自転車を』ではなく『自転車は僕を』だ。

僕は毎朝、自転車に乗って駅まで行きます。朝のさわやかな風を感じながら柔らかく降り注ぐ朝日を浴びるその時間は、僕にとって「今日も一日頑張るぞ」と気合をいれる時間でもあります。

ところが、最近の僕は1ヶ月以上も前からパンクした自転車に乗りつづけているんですよね。パンクぐらいすぐに直せばいいと思うかもしれない。僕だってパンクを直すぐらいのお金はあります。

それでも直さないのには訳があり、それこそが僕のこの反骨精神をビンビンに刺激しているのですが、以前パンクの修理を出した時に3回連続で、その日のうちにパンクさせられた事があったんです。3回も!連続で!誰かのいたずらで自転車がパンクさせられていたのですよ。絶対に同一犯!!当然僕は荒ぶる神々のようにいきり立った。コノウラミハラサデオクベキカ状態

何とかしてこの現状を打破すべく、マンションの掲示板に勝手に注意書きのチラシを貼ったり、駐輪場に止めてある他の自転車よりもちょっとだけ奥に置いたりと、地味で他力本願この上ない対策をしたものの、結局4度目のパンク。

なすすべもなく翻弄されて、僕は怒りに震えていた訳です。犯人に会いたくて震えて眠れない日々を過ごしていたのです。

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精神的アドバンテージ

そして、僕は自転車のパンクを直すことを諦めたんです。悔しいがこれはイタチゴッコだ。何度直したところで奴はやってくるのだ。僕の負けだ・・・。

と、一時は気持ちが折れていたものの、このまま歩いて会社に行くのはあまりに悔しかったんですね。だから。せめて精神的なアドバンテージを持とうと、試しにパンクした状態で自転車に乗って過ごすことにした訳ですよ。

そうすれば、犯人がしめしめと自転車をパンクさせにきたときに「オウ、シット!もうパンクしてやがるぜ!ジーザスクライシス!」と悔しがる姿が目に浮かびます。その姿を想像することで僕は犯人に対して精神的に優位に立つことに成功した。ざまあみろ犯人。バーカバーカ

ガタンガタン

こうして僕はハリボテの平穏を手に入れたのですが、パンクした自転車に乗っていると車輪が一回転するたびに「ガタン」て、結構大きい音がするじゃないですか。連続で漕げばそれが「ガタンガタン」と鳴り、音も連続していくんです。

でね、毎朝通勤しているって事は、ある程度混雑している駅前の人ごみの中を「ガタンガタン」って音をたてて連日通っているということで、冷静に周りから見たら120%のヤバイ奴なんですよね。

初日はまだいいんですよね。社会人の大人が「あぁたまたま自転車がパンクしてるんだな」で済むと思うんです。でもそれが一週間続くと同じ時間帯に出勤する社会人の大人達から、オツムがパンクしてる野郎だと思われるハズです。たまに町で見かける近づいちゃいけないヤバイ奴。まさか自分がその立場になるとは。

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立ちこぎすると

この前なんて、朝起きたらすでにいつもの電車の発車時間だったから、ラピュタに出てたドーラに「40秒で支度しなっ!」と怒鳴られた時のパズーのように猛烈に準備して自転車に飛び乗ったはいいものの、バリバリにパンクしてるから、

ガダガダガダガダガダガダガダ!!!

って大音量で立ちこぎして、駅前の立派な社会人たちが驚愕の表情で振り返る中を、顔を伏せつつ半泣きで出勤するハメになる訳なんですよ。おっさんがワンランク上の羞恥プレイをぶちかましている状態。運が良くても職務質問は避けられない事態です。

けどね。人間の順応性ってのは凄いもんで、1ヶ月もするとそんな境遇にも慣れてむしろ誇らしくなってくるんですよね。いや、本当に。

見て!私をもっと見て!!私の恥かしい所を見てぇぇ!ぶひひひひぃぃぃぃ!

と、言わんばかりに最近なんて、別に急いでないのに立ちこぎしちゃうもんね。

人間て本当にスゴイ。人間は人間が考えるよりも強い

音の変化

ただ、今日言いたいのは僕の内に秘めた変態性の話ではない。実は数日前の帰り道、いつものように大音量で「ガタガタ」音を出しながら、余裕で口笛の一つも吹きながら帰っていたのだが、なんだかいつもと違う音に聞こえる。どういう事かと言うと、

いつもの、

「ガッタン ガッタン」

って音が、

「ウェイクアップ!ウェイクアップ」

って言葉に聞こえてきたんですよね。耳を疑いましたが確かに聞こえる。

日本語に訳せば、パンクした自転車に、

「起きろ!おい、起きろよ!いい加減目を覚ますんだ、相棒!」

って連発で言われるわけだ。かなり盛ってるが。

僕がおかしくなったのかと思ったが、冷静に現状を整理してみるとパンクした自転車に乗ってエレクトしてる相棒(僕)に「目を覚ませ!」と忠告してくれる訳ですよね、自転車が。

物を大切にしなかった僕に対して、自らのタイヤをすり減らし忠告してくれる自転車の姿を想像したらなんだか泣けてきてしまってね。僕は自転車にここまで愛されているのかと感動してしまいましてね。そんな主人思いの自転車をこのままパンクさせておく訳にはいかないなと、強く反省したのです。明日にでも修理に出そうと思います。物を大切にする心を理解し、僕は一つ人間として成長出来たようです。

ワイフに報告

ちなみに帰った後、その自転車と僕の感動的な愛の話をワイフに話してみたところ、怪訝な顔で僕を見てきた。このパンクという出来事が、どれだけ感動的な出来事であるかを力説すればするほど、ワイフは心配そうな表情を浮かべ、僕を見る。

ああ、たぶんワイフは僕をオツムがパンクした野郎だと思っていやがるぜベイビー

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