新型コロナウイルスの感染終息がなかなか見えない中、社会にはデマや疑心暗鬼が広がり、人々の不安感も募っているようです。
多くの人にストレスが高まっているためか、日本や世界で「コロナハラスメント」とも呼ばれる、他者への不当な嫌がらせや攻撃などの問題が相次いでいます。
「コロナハラスメント」とはどういう意味なのか。その具体的な事例から分かる人の心の「深い闇」や対処法を探りました。
コロナハラスメントとは意味は?
精神科医や労働問題に詳しい弁護士によれば、「他者に対する発言・行動等が、本人の意図には関係なく相手を不快にさせたり、尊厳を傷つけたり、不利益や脅威を与える行為」のことを「ハラスメント」といいます。
人間関係がより複雑になっている現代では「セクハラ」「パワハラ」「モラ(モラル)ハラ」「マタ(マタニティ)ハラ」など、さまざまなハラスメントが問題化しており、その対策や解消が重要な社会的課題となっています。
そして今回の新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、やはり新たなハラスメント被害があちこちで起き始めているようです。「コロナハラスメント」とは、コロナウイルス感染に起因するさまざまなハラスメントのことで、ネットなどでは略して「コロハラ」とも呼ばれています。
では具体的にはどんな「コロナハラスメント」が起きているのか、事例を次に見てみましょう。
コロナハラスメントの事例集
新型コロナウイルスの感染拡大の「二次被害」ともいえる、社会にはびこり始めた「コロナハラスメント」。コロナハラスメントとは具体的にはどんなことなのか、ネット上の書き込みや各種報道からその主な事例を集めてみました。
店員コロハラ
・マスクをしたスーパー店員が業務中くしゃみをしたところ、客が「コロナだろ!他の店員に変われ!」と怒鳴り始めた。店員は花粉症だと説明したが客は聞き入れず他の店員が謝罪。
・マスク在庫がないことに客が怒り「入荷はいつ?いつもないじゃない!」「病人がいるのにいつも買えない。1個くらい取り置きしてよ!」とクレームの嵐。店員は謝罪するばかりで精神的に疲弊。逆にマスクの入荷日には客が殺気立って殺到、店員には過呼吸や貧血を起こす人も。
職場コロハラ
・マスクしていたが喘息のため職場で咳が出た。上司も喘息のことは知っていたのに「周囲を不安にさせたから謝罪するように」と迫られた。
・感染者が確認された町から通勤しているというだけで「あいつコロナかもしれない」と周囲から距離を置かれた。また家族に中国人がいるという理由で出勤停止を命じられた。
電車コロハラ
・地下鉄で乗客が「咳をしているのにマスクしていない人がいる」と非常通報ボタンを押し、最寄り駅で停車。駅員が咳をしている人と通報した人を降ろして話を聞き、和解。
・電車内で咳やくしゃみをした人に、他の乗客が「マスクをしていないなら降りろ」と怒鳴って迫り、客同士のトラブルに。
クルーズ船コロハラ
・日本災害医学会の声明によると、横浜に停泊していたクルーズ船や武漢からのチャーター機の現場で活動した医療関係者が「バイ菌扱い」されるいじめを受けたり、その子供が保育園などから登園自粛を求められる事態が発生。
自治体コロハラ
・外科医らの感染が判明した和歌山県の病院内をドローンで撮影しようとしたり、ふるさと納税に対するその自治体からの返礼品を拒んだりする“地元いじめ”が続出。健康不安を相談するための県の電話窓口に「病院の患者の住所を教えてほしい」との要求も。
海外コロハラ
・イタリアで中国人への暴行や嫌がらせが発生。中国人従業員が帰国してしまい、営業できなくなったローマの有名中華料理店が当面閉店に。米ニューヨークでは黒人男性がアジア系女性に突如殴りかかる。
・中東パレスチナで支援活動中のNGOの日本人女性2人が、通りがかりのパレスチナ人女性から「コロナ、コロナ」とからかわれ、つかみかかられた。現地警察がパレスチナ人女性を暴行の疑いで逮捕。
コロナハラスメントのみんなの反応
- なんかもっと、みんなで優しく生きられないのでしょうか?!花粉症のひとかわいそう
- コロナで人間の汚いところが丸見えだ。生存競争をする上で誰かをけ落とすことは必須。今それがマスク争奪戦だったり、コロハラだったり、転売ヤーの活発化だったり。人間の本質は変わらない
- コロハラってなんやねんwww インフルは「インハラ」っていわん 同じウイルスやん
- コロナハラスメントとか草。考える事が小学生レベルで大げさ過ぎ。コロナなんて免疫力あったらすぐ治るやろ。なんでそんな危機的な感じで考えるんかいね
- やはりコロナハラスメントが出てきたか。なんでもハラスメントになる時代だし、ハラハラになってる気もする
出典:twitter
まとめ
今回の記事をまとめると以下の通りです。
- コロナ禍終息が見えない中、各地でコロナハラスメントが発生
- コロナを起因に他人を不当に責めたり嫌がらせする「コロハラ」
- 事例多数。不安や焦りのストレス蓄積で人心に芽生える悪感情
災害リスク学の専門家によれば、今回のコロハラのように、平穏だった社会が突然断層のように変化し、「マスパニック」を起こす現象は過去の感染症流行でもしばしば見られたそうです。
ウイルスという目に見えない恐怖と漠然とした不安。行政の対応も何か「逐次投入」で“場当たり的”。「絶対に防げる」という決め手がない焦り。これらが私たちのストレスを高め、他人への差別的・攻撃的感情を引き起こすそうです。
専門家は「フラストレーションがたまると、人は不満などを転嫁するスケープゴートをつくりたがるようになる。そしてそれは弱い人へ反感・反発・暴力として向かいがちだ」と警告します。大災害時などとも通じますが、私たちの社会がこうした危機に物質・精神の両面で弱いことが、コロナ禍では再認識させられます。