米軍の完全撤退を待つことなく、ガニ大統領が国外に逃れ、タリバンが予想を超える速さで、アフガンの政権を掌握したと報道されました。
タリバン政権になったら日本にはどんな影響があるんでしょうか?
これまで、日本がアフガンに何をしてきたかをまとめ、今後を予測します。
タリバン政権の日本への影響は?
タリバン政権移行により日本への影響はどんなものか見てゆきましょう。
2001年9月の米同時テロ後、米国やNATOなどが始めたアルカイダなど対テロ戦争によって、タリバンはアフガンの政権の座を追われました。しかし、その後も国内の山岳地帯や部族支配が続くパキスタンとの国境周辺などに潜伏、徐々に攻勢を強め、主要都市を掌握し、今回の政権掌握に至りました。
アフガンと日本の関わり
アフガンに、直接軍事的に、日本がかかわったことはなく、したがって、タリバンへの攻撃を行ったこともありません。
ただ、アフガン政府への援助は、米国に次ぐ2位までの大きさに達していました。
日本のアフガンへの援助
2001年以降 米国や国連と協調して日本政府はアフガンの復興支援を始める
2001年~2012年 アフガンに対し、総額約49.35億ドルの支援を実施済。
2012年7月 東京会合において、「2012年より概ね5年間で開発分野及び治安維持能力の
向上に対し、最大約30億ドル規模の支援」を行うことを表明。2013年時点で総額約15.95億ドル
の支援を実施。
ユニセフと組んで、小児感染症予防計画、母子手帳推進計画、中央高地三県における学校建設計画などを毎年継続的に行ってきました。
このように、アフガンニスタン国民に利益となる経済的、人道的援助を重ねてきたもので、タリバンに敵対するものではありません。
しかし、2008年8月26日にNGOボランティアで働いていた日本人が拉致され殺害される事件が発生した際、タリバン広報官は拉致について関与を認め、NHKに対して「たとえ復興支援が目的であっても、アメリカに協力して、アフガンを訪れる外国人はすべて敵だ」と語っています。
日本政府は国際協力機構(JICA)を通じ、2014年からアフガン国外での研修などで女性警官の育成を支援しました。
これについては、イスラム教で、女性の社会進出を好まないタリバンですが、タリバンの幹部が、日本政府が育成を支援してきた女性警官を含め、女性の政府職員についてアフガン社会に「必要だ」と認める見解を示しましたので、特に反発はないようです。
また、民間では、アフガンで人道支援活動を続けるNGO「ペシャワール会」の現地代表で、医師の中村哲さんの存在があります。2019年12月4日朝、東部ナンガルハル州ジャララーバードで車に乗っていたところを武装集団に襲われ、銃撃により殺害されましたが、アフガンの国民には慕われ、日本とアフガンをしっかりつなぎました。
また、2001年以降の治安の悪さから、アフガンに進出する日本企業は、ほとんどなかったので、即時撤退などの事態もないと思われます。
従って、特別タリバンが日本を敵視することはないのではと思います。
ただ、日本も含め世界にとっては、広く見ると次のような懸念があります。
4つの懸念されること
・タリバンのイデオロギーは、イスラム原理主義に基づいており、これが、民主化、女性の権利に悪影響を与える。
女性の教育を認めなかったり、不貞行為に対して石打ち刑を科したりし、親族男性を伴わなければ外出さえも認められない。
男性が髭を伸ばすことを強制されたり、音楽を流した派手な結婚式が禁止されるなど、娯楽や文化を否定し、また以前は公開処刑を日常的に行うなど、過激な活動をおこなった。
バーミアンの石仏のように、人間の形をした彫像や美術品は何であれ、イスラム教への冒涜とみなし破壊するか?
タリバンによって破壊された有名なバーミアンの石仏。
破壊されてもなお立ち続けるその不屈の姿は、戦争の虚しさと「争いからは何も生まれない」という強いメッセージをわれわれに伝えようとしているようである。 pic.twitter.com/I7pvzW4riM
— るくれ~る (@leclerk64) September 23, 2014
・潜伏するアルカイダなどの過激派が勢力を盛り返し、国際テロ組織が復活する恐れ
・タリバンが安全を保障したので、大使館員を撤退させないというロシアやパキスタンと関係の深い中国が、米軍撤退後の、タリバン政権に深くかかわってくる。
・タリバンは、ケシの栽培からできるアヘンを資金源としてきており、自らの工場を運営し、採取したケシの乳液を精製して輸出用のモルヒネやヘロインを生産して、タリバンの収入の半分はアヘンの生産からとも言われていました。国土が荒廃する中で、世界のアヘンの80%が生産されているアフガンで、麻薬がさらに世界中に拡散するのではと懸念されます。
日本にできること
今後アフガン情勢がどうなるか、タリバンが日本に対しどのような態度を取るかによりますが、政権移行がスムーズに行われ、国内の混乱が最小限にとどまれば、これまでの実績を生かして、アフガンの復興に寄与することはできます。
治安が大きく改善されることが大前提と思われます。
また、貴重な未開発国として、各国が競って投資を行い、カンボジアのように一気に経済が復興するケースも考えられます。
タリバン政権掌握へのみんなの反応
- 46年前のベトナム戦争終結と全く同じ。米軍が現地政府を見捨てて撤退を決め込んだ瞬間敵対勢力が急激に攻勢をかけてついには首都を制圧。政府要人はこぞって国外逃亡。残されたのはこれまでも戦闘で犠牲になってきた善良な市民たち。
- アフガン民族の人々にとってどちらが正義かは判らないが、日本だって江戸から明治に移行するときの戦争では「勝てば官軍」と言われたのだから、その国にとっての正義はタリバンに有るのだろう。他国が干渉するべきでは無い。速やかに国際社会に参加して世界のルールに準じた平和国家を築いて欲しい。
- 民主主義は必ずしも正しいとは言えないのに欧米の価値観でそれを押し付けてしまったことは帝国主義となんらかわりがない。ある意味武装派とはいえ現地人による政権が再びできたことは押し付けよりも健全だろうな。そもそもこれだけ早く制圧したのは支持が多かったからだろう。
- 元の黙阿弥ということですね。自国の旨味が無くなったから、撤退を決定した米国。世界のリーダーであることより、自国利益第一主義に米国が方針転換をしているなら、日本はどう振る舞うかを真剣に考えなくてはいけない時代に来ているのでは。
- タリバンや反米サイドから見たら 歴史的な快挙ってところですかね 以下、私見ですが 日本含め在米駐留所がある国々とっては好ましくない事例かと…同じことがあるかもしれませんからね
出典:ヤフコメ
まとめ
- 日本はこれまで、アフガンと軍事的なかかわりはなく、政府や、民間によるアフガン国民への復興援助を行ってきたので、タリバン政権が日本を敵視する可能性は小さいのでは思われる
- タリバン政権となることで、国際テロ組織の復活など国際的に見て、懸念される点が4つあります
- 治安が回復されるなら、復興の援助もこれまでよりスムーズに行われ、経済開発が一気に進む可能性もあります
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