6日、甲子園球場で行われたプロ野球巨人対阪神の一戦が、関係者やファンを巻き込む大論争に発展し話題となっています。
阪神が一方的に大勝したこの試合、問題となったのが巨人の「野手登板」。終盤、増田大輝内野手がマウンドに上がったことが「相手に失礼」「名采配」と大きな議論に。野手登板ってルール違反なの?なぜこんなに論争になるのでしょうか。過去のNPBでの事例やメジャーの実情などとあわせて調べてみました。(出典:Wikipedia、各スポーツメディアなど)
野手登板メジャーでは普通も規制始まった?
まずは論争の発端となった6日の巨人vs阪神戦から振り返ります。阪神が4-0のリードで迎えた8回裏、巨人は5番手の中継ぎ・堀岡投手をマウンドに送りますが大乱調。満塁ホームランを浴びるなどさらに7点を奪われます。
0-11となってどう考えても勝ち目はないと考えたのか、原巨人監督はここで増田大輝内野手に投手をスイッチ。増田内野手は見事、近本、大山選手ら阪神の上位打線を抑えてこの回を終了させました。
増田内野手は徳島県出身の24歳、育成出身の〝苦労人〟。大学中退、独立リーグを経て巨人入りし、内外野守れる俊足のユーティリティーとして徐々に代走起用などで存在感を見せています。
プロの野球は毎年100数十試合をこなす長丁場で、とりわけ移動や日程が厳しいメジャーリーグでは野手登板は珍しくありません。
試合終盤に大差で負けていたり消化試合・延長戦などでは、次の試合を考えてわざわざ大事なブルペン陣を投入するのを避け、野手を登板させることが日常的。過去にはイチロー、青木宣親選手も公式戦マウンドに上がったことがありました。
↓アストロズ時代に青木が登板しヤンキース・ジャッジを抑えたシーン
ただ、昨季は野手登板がメジャー全体で90試合にも上り「興ざめ」といった批判から、大谷翔平選手のような「二刀流」は別として、MLBでは「野手登板は延長戦と6点差以上の試合のみ」という規制が導入される方向になっています。
巨人・増田の野手登板で論争に!有名人もコメント
メジャーでは当たり前な野手登板ですが、ではなぜ「巨人の増田登板」が大論争になるのでしょうか。以下に主な解説者、有名人らの意見をまとめてみました。
【賛 成 派】
■張本勲
「あっぱれだ。私は原監督を評価する。負けゲームと腹をくくっている。投手の疲労を少しでも楽にと。最後に判断するのはファンだが」
■中畑清
「なんでこんなに大騒ぎしてるのかわからない。監督って常にチームのことを考えてアイデアと覚悟をもってタクトを振っている。どうして抑えた増田を評価してあげないの?彼は三刀流をやった。前向きに考えるべき」
■ダルビッシュ有
「最高です。大敗試合なら全然あり。原監督がいかにシーズン全体を見て選手を気遣っているか分かる」
■上原浩治
「内野手が外野守って失礼になる?要は打者が打てばいい話。巨人はダメで他球団OKもおかしい。投手は勝ち試合に残すべきであそこで投げると次の日に影響する」
【反 対 派】
■江川卓
「バッテリー経験者はノー。受け入れられない。やっぱり投手はずっと苦しい思いをしてやっている。野手が上って来るのには抵抗がある」
■堀内恒夫
「巨人はそんなチームじゃない。首位の強いチームがやっちゃダメ。相手は馬鹿にされてると思う。私はすぐTV消した」
■伊原春樹
「巨人の伝統的戦い方からかけ離れてる。試合をあきらめたというのがよくない。私なら監督と喧嘩してでも絶対にやらせない」
というわけで、野手登板議論のポイントは①スポーツ精神・野球道に反するか②戦術としてどうか③ファン目線・サービスとしてどうか―に集約されそうです。
反対派は①で「何点差あろうと真剣勝負に手抜きは失礼で、侮辱行為」、②で「プロ野球は専門性が高く、選手はその道に命を懸けている」、③で「余興が過ぎお金を払っているファンに無礼」という主張。一方賛成派は①で「シーズン優勝の最終目的にかなえばむしろ合理的」、②で「ルール上問題ない投手を助けるチームプレー。優勝には柔軟な発想も必要」、③で「大味な試合の中、かえってレアでファンが喜ぶ」というものでしょうか。
野手登板に関するネットの反応まとめ
- 江川はただ単にプライドとかではなく「普段から野手に助けてもらってる立場からしたら申し訳なく思う」ということだな
- マウンドに上がる野手のレベルの問題もあると思う
- ファンには記憶に残る試合。あんな展開になってしまったことを、投手・野手含めチーム全体で反省する機会にもなると思う
- 甲子園の球数制限にしろ、育ってきた見てきた時代背景によって感覚が違うのは仕方ない気がする
- 昔と違って分業制でリリーバーが重要視され酷使されている現状では、これも戦略の1つだと思うがね
出典:ヤフコメ欄
まとめ
今回の記事をまとめると以下の通りです。
- 大敗した阪神戦終盤に巨人の増田内野手が登板。投手陣温存が狙い
- 合理的な原采配だが野球界は賛否で激論。精神論vs現実主義が対立
- 「相手に失礼」「捨て試合ダメ」vs「優勝のため」「投手に気遣い」
大論争のNPB野手登板ですが、過去の主な例はどうだったのか見てみましょう。
■74年、南海とのダブルヘッダーで日ハム・高橋野手が登板。消化試合のファンサービスで、高橋は一試合で全ポジションを守る日本記録を樹立。
■95年、デストラーデ野手(西武)がオリックス戦で登板。
■2000年、オリックス・五十嵐野手が10点差以上の大敗試合の近鉄戦で登板。NPB史上2人目の全ポジション出場達成。無失点で終えたため仰木監督は投手とコーチを「野手でも抑えた」と叱りつけた。
■96年球宴で全パのイチローが松井秀喜の打席で登板。仰木監督のサービスだったが、全セ野村克也監督は「相手とファンに失礼過ぎ」と高津投手を代打に。
このように過去にも結構例があり、しかも「合理判断」「ファンサービス」な面も多分にあった様子。つまるところ、野手登板の是非は監督や受け手などその人の「野球観」次第でもあるようです。日本では「人生論」でも語られがちな野球独特のことなのか、他スポーツではどうなのか、興味があるところです。
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