少しずつ観客も増えながら熱戦続くプロ野球。さて12日の巨人vsヤクルト戦で、熱心なプロ野球ファンでも「?」と首をかしげる言葉が球場内に響き、ちょっとした話題となりました。
それは、あるプレーへの判定について審判が場内で説明した際の「ボナファイド」という言葉です。ボナファイドとは?どんな意味で、そもそも何語なの?野球用語での意味合いや、過去に適用された事例などを調べてみました。
ボナファイドとは意味は?
まず12日の試合については次項でご紹介するとして、「ボナファイド」とは何かをご説明しましょう。これは英語で使われるフレーズですが、元来はラテン語で、英語では外来語のように文脈の中で用いられます。新英和辞典(研究社)によると意味は次の通りです。
【bona fide】(形容詞)
1,誠実な、誠意の
2,真実の
(文例)a bona fide offer(虚偽ではない、真正な申し込み)
これはラテン語で「with good faith」の意味、即ち「正しい意図や誠意のある」といった形容の語句です。英語ではそのままあとの名詞を修飾する形容詞として用いられることが多いようです。
では野球用語ではどう使われているのでしょうか。以下に米国の公式野球規則を引用します。
If a runner does not engage in a bona fide slide, and initiates (or attempts to make) contact with the fielder for the purpose of breaking up a double play, he should be called for interference under this Rule 6.01.
:MLB Official Baseball Rulesより(抜粋)
上記はMLBが16年から導入しているルールで、和訳すると「走者が正しいスライディングをせず、ダブルプレイを阻止する目的で野手との接触を開始、または試みる場合、規則6.01に基づいて守備妨害が宣告される」です。ここで「bona fide slide(誠実な、正しいスライディング)」と「ボナファイド」が使われています。
日本の公認野球規則には「ボナファイド」という言葉はありませんが、審判や野球専門家の間では英語をもとに「ボナファイドのガイドライン」と呼ばれており、公認規則では以下の4条件を満たすスライディングが「ボナファイド=正しい」とされます。
■走者は次のスライディングで野手に接触してもインターフェア(守備妨害)とはならない。
(1)ベースに到達する前からスライディングを始め(先に地面に触れる)、
(2)手や足でベースに到達しようとし、
(3)スライディング終了後は(本塁を除き)ベース上にとどまろうとし、
(4)野手に接触しようとして走路を変更することなく、ベースに達するように滑り込む。
過去のボナファイドの事例は?
日本人には聞き慣れないボナファイドとは、元々「誠実な・正しい」という意味のラテン語から由来した英語の形容表現だと分かりました。そして野球界では「正しいスライディング」というルールに出てくる言葉です。
ではこのルールに抵触した過去のプレーにはどんなものがあるのか、以下に見ていきましょう。
■7月12日巨人vsヤクルト戦
巨人が1点ビハインドの6回攻撃中、一死一・三塁で打者が遊ゴロ。ヤクルト内野は5→4→3の併殺を試みたが、一塁走者パーラ選手と山田哲人二塁手がベース上で交錯、送球できず。監督のリクエストを受け審判が検証の結果、パーラ選手の守備妨害と判定され、併殺・チェンジとなった。
山田の走塁妨害だとか言ってる頭にG湧いてる奴らにはこの部分は見えてないんだろうね。
1枚目
左足はベース上にあります。
2枚目
パーラの左足はベースの側面に行かず、ベースの上を削るようにスライディングしている
3枚目
ベースを明らかに通過し、プレーに直接関係はせずとも肘を上げている pic.twitter.com/zfy4g5wvg5— T (@swallows_1106) July 12, 2020
■19年4月の巨人vs中日戦
中日1点ビハインドの6回1死1塁、打者が遊ゴロを打ち、巨人は2塁で併殺を狙ったが、走者ビアヌエバ選手と2塁手が交錯し送球できず。リプレー検証で、ビアヌエバ選手のプレーは走路を外れた併殺崩しの危険スライディングと判定され、走者・打者ともアウトに。
■19年4月のMLBヤンキースvsオリオールズ戦
ヤンキースのウェイド2塁手が、オリオールズの1塁走者ジャクソン選手のスライディングでふっ飛ばされる形に。一見危険そうだが、審判は「ボナファイドの4条件」を全て満たしていると判定、「危険スライディング」とはみなされなかった。
Is this a clean or dirty slide? 🤔 pic.twitter.com/ZN2aUm45mn
— Baseball Bros (@BaseballBros) April 5, 2019
ボナファイドにネットの反応は
- 過走しているし肘当てて転倒させにいってるし、やはりレッドカードに相当する判定が妥当だと思う
- ボナファイド! 全く知りませんでした。野球ルールや用語もMLBに合わせて少しずつ変わるんで対応していかなきゃ
- 審判の厳しい判定というより、ルール通り審判は判定したということ
- 「ボナファイド」って審判が球場で申告した際、みんな聞き慣れてなくてぽかーんとしてた
- 昨日初めて聞いた言葉だけど、サッカーのDOGSO(決定的な得点機会阻止のファウル)みたいなもんだな。要件を満たしてるかで適用される所とか
出典:Twitter
まとめ
今回の記事をまとめると以下の通りです。
- 巨人vsヤクルト戦で「ボナファイド」という耳慣れない言葉登場
- 併殺崩れを狙う危険なスライディングを認定するためのルール
- 滑り込みの4条件を満たすのが「ボナファイド」(正しい)プレー
ボナファイドが話題となった巨人vsヤクルト戦。このプレーで同点を逸したこともあって巨人は敗戦。ファンからは「あれは不可抗力で守備妨害じゃない」との批判も上がりました。しかし責任審判の丹波塁審は「パーラはベースに向けてスライディングをしているが、近くから行って勢いをつけてベースを越えている」と「4条件違反」を指摘。意図があろうとなかろうと、形として条件を逸脱していればアウトだという厳密な判断を示しました。
このルール、元々はあまりにも危険な滑り込みが度重なり、ケガ人が続出したMLBが先んじて数年前から設けたもの。それまでがいかにひどかったか、動画で見ても分かります。
↓MLBの危険スライディング動画集
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