コロナ禍のため開幕が延期されてきたメジャーリーグ。今年3月中旬に中断したキャンプがようやく各球団で再開されました。全30球団が本拠地でキャンプを行い、今月下旬の開幕に備えます。
しかし米国のコロナ感染状況は依然深刻。球界には被害を懸念する声も多いようで、中には「オプトアウト」行使に踏み切る選手も。この「オプトアウト」とは?コロナ下での開幕〝強行〟に不安を募らせるメジャーリーガー側の反応や動きをまとめました。
オプトアウトとは?メジャーでよく聞くこの用語の意味
コロナ禍で延期し、労使交渉も紛糾した末、4か月近くの遅延を経てやっと今季開幕にこぎつけそうなメジャーリーグ。ただコロナ禍が収まったのかといえば、事態は逆に悪化している感もあります。米ワシントンポスト紙によれば、2日には米国の1日当たり新規感染者は5万5千人に上り、過去最多を更新。特に南部や西部の各州で感染増加の勢いが止まらず深刻な状況だといいます。
こうした中でのメジャーリーグ再開には選手らから心配の声が絶えず、中には「オプトアウト行使」を決断した選手もいます。このオプトアウトとはどういう意味なのでしょうか。
MLBではしばしば耳にするオプトアウト。MLBアナリストコラムなどによると、これは契約用語の一つで「選手側から契約を途中解除すること」です。一般には3年、4年など長期の複数年契約を結んだ「大物選手」に対し、選手側が希望すれば、契約年の途中であっても以降の契約を無効にできる権利を示します。
長期契約は本来選手に有利なものですが、状況が変わって、より有利な条件で別の球団に移籍したい時などには、元の契約のままでは障壁になります。オプトアウト条項があればFA権を行使でき、より条件が良い大型契約を結ぶことも可能になります。
このようにオプトアウトは基本的には「超一流」「高い実力・実績」の選手のみに認められる特別な権利。田中将大、カーショー投手らMLBトップ選手の多くが保有しているとされます。しかしコロナ禍の今、FA目的ではないのに、あえて「オプトアウトを行使する」選手が出ているというのは、どういうことでしょうか。
コロナ禍でオプトアウトした選手とその理由
MLB機構が選手会に「60試合強行開催」を通告、選手会も受け入れ、メジャーの2020シーズンはようやく開幕の方向になりました。球界には歓迎の声がある一方、逆にオプトアウトを行使する選手も。オプトアウトとは「今季の欠場」を意味し、コロナ感染を懸念してプレーを拒否する行為です。
メディアによると、真っ先に6月末、行使を表明したのはダイヤモンドバックスのマイク・リーク投手、ナショナルズのライアン・ジマーマン内野手とジョー・ロス投手の3選手。リーク投手はメジャー通算105勝の先発右腕ですが、代理人は「コロナの世界的流行の間、マイクと家族は今季プレーすることについて何度も話し合った。簡単な決断ではなかった」とコメント。3人ともコロナ感染や安全面を考慮して、今季の欠場を決めたといいます。
ナショナルズ一筋15年、通算270本塁打のベテランスラッガー、ジマーマン選手は、幼い3児の父でもあり「子供と母親が高いリスクにさらされることを考慮した」と理由を説明しました。
またMLBオールスター2回出場のイアン・デズモンド外野手(ロッキーズ)もオプトアウトを行使。夫人が現在妊娠中で4人の子供がいることもあり「(感染の)リスクを負うことはできない。今の僕がやるべきことは家にいてあげること」と語っています。
これらの「出場拒否」選手は、オプトアウト行使により今季の60試合比例年俸は受け取れないことになり、リーク、デズモンド選手ともに満額の37%に当たる今季年俸約6億円を「放棄」することになります。
そのほか、前田健太投手が所属するツインズでも高齢のコーチ2人がベンチ入りをやめるなど、米球界ではコロナに対する懸念が一部で広がっています。
メジャーでのオプトアウトへのネットの反応
- 自分だけじゃなく家族を巻き込む可能性もあるから。お金じゃないっていう立派な判断だと思う
- 日本だと単身赴任や別居って話になりそうだけど、それはありえないんだな
- ただ出場拒否できるのは経済面や実績面から生活の心配の無い一部の選手だけ。マイナーやメジャー入りギリギリの選手はそうも言えない
- ジマーマンはお母様が感染で高リスクな多発性硬化症を患わっていることも大きいらしい
- 家族を大切にする選手は好きだ
出典:ヤフコメ欄
まとめ
今回の記事をまとめると以下の通りです。
- MLBが7月下旬開幕。コロナ懸念で数人の選手がオプトアウト
- 契約を途中で放棄する条項。試合欠場で今季残り年俸なしに
- リーク、ジマーマン、デズモンドら実力選手続々。コーチらも
デズモンド選手は、オプトアウトを表明した自身のSNSで、真っ黒の背景に白の文字で長文を投稿しました。書き出しでは人種差別問題に言及し、米国での白人警官による黒人男性の暴行死事件や自身の少年時代の経験を記述。さらに現在のメジャーについて「今は野球では労使紛争が起こっている。フィールドでは利己主義が蔓延している。クラブハウスには人種差別、性差別、同性愛嫌悪のジョークがあり、うんざりする問題を抱えている」と苦言を呈しました。
そして「コロナウイルスや公民権、命について子供たちの疑問に答えるべく家にいる必要がある」とも綴り、現代米国社会が抱える課題や闇を、今は静かに家族との時間の中で考えたいと表明。一米国人でもあるメジャーリーガーとしての苦悩を、赤裸々に明かしていたのが印象的でした。