コロナ禍で本場所開催ができずにいた大相撲の7月場所が、ようやく半年ぶりに観客入りで始まりました。感染防止のため通常の名古屋から東京・国技館に開催地を変更。一日の観客2500人まで・升席1人・飲酒禁止など多くの制限があるものの、ファンは久々の土俵を大いに満喫しているようです。
ところが肝心の取組初日、横綱鶴竜が珍しい決まり手「腰砕け」で金星を献上。早くも2日目に休場となってしまいました。この「腰砕け」とは?技の意味や過去の例、一般用語との違いなどを調べてみました。(出典:Wikipedia、デジタル大辞泉など)
腰砕けとは意味は?
大相撲では主催の日本相撲協会が決まり手を定めており、1955年夏場所から取組ごとに協会が決まり手を発表しています。決まり手には「押し出し」「寄り切り」など82種類の技があり、このほかに「非技」と呼ばれる、技ではなく勝負結果を示す手が5つ認定されています。
「腰砕け」とはこの非技の一つで、「勇み足」「つき手」などと同類の〝勝負結果〟に分類されます。具体的には相撲の腰砕けとは、相手が技を掛けていないのに自分からバランスを崩し、尻もちをついたり手を後ろにつくことをいいます。
大相撲の決まり手としては大変珍しいものの一つといえますが、私たちが普段文章や放送などを見聞きする中では、「腰砕け」という言葉は結構よく出てくる気もします。「計画が腰砕けに終わった」など、自分でもよく使うという方は多いかもしれません。
このように、日本語には相撲用語から意味が派生した慣用表現がたくさんあります。前述の「非技」は珍しいため実際の取組で登場することは稀ですが、決まり手にちなむ日本語は結構頻繁に使われているといえます。以下に一般用語として馴染みがある相撲由来の言葉の代表例をご紹介しましょう(【 】はその分野での意味)。
・腰砕け …… 【相撲】自らバランスを崩し倒れること。【一般】怖じ気づくなどして物事が途中でだめになること。
・勇み足 …… 【相撲】相手を土俵際に追いつめながら、勢い余って自分の足が先に土俵の外に踏み出ること。【一般】調子づいてやりすぎたり仕損じたりすること。
・肩透かし …… 【相撲】差し手を手前へ引きながら体を開き、一方の手で相手の肩をたたいて前へはわせる技。【一般】意気込んで向かってくる相手の勢いをうまくそらすこと。
・がっぷり四つ …… 【相撲】両力士が相四つでしっかり組み合うこと。【一般】物事に真っ正面から取り組む様子。その両者のさま。
・仕切り直し …… 【相撲】両力士の呼吸が合わないため仕切りをやり直すこと。【一般】試合、勝負事や交渉などを最初からもう一度やり直すこと。
相撲で有名な腰砕けの試合
腰砕けとは、相撲での意味は「相手の技と関係なくバランスを崩して自ら倒れる」こと、そして一般用語では「物事が途中で尻すぼみやダメになること」という意味だと分かりました。では大相撲で、過去に有名な「腰砕け」の決まり手の取組にはどんなものがあったのか、調べてみました。
■20年7月場所 初日・●鶴竜―遠藤○
横綱鶴竜が立会直後、右足で裾払いを狙ったものの、空振りしてそのまま土俵に転がり「腰砕け」に。日本相撲協会が決まり手発表を始めた55年以降で、横綱が腰砕けで敗れるのは初めてという異例な〝不名誉〟記録に。
■13年夏場所 14日目・○琴勇輝-栃乃若●
十両の1戦。突き合いの中で栃乃若がバランスを崩し思わず尻もちをつく形に。場内には「腰砕け」のアナウンスが流れる。
■13年夏場所 14日目・○松鳳山-琴欧洲●
幕内の1戦。両力士が土俵際を移動しながら差し手争いをする中、琴欧洲が自らバランスを崩して足がもつれ、ひっくり返る。
↓その同日2番の動画はこちら
鶴竜腰砕けへのネットの反応
- 鶴竜の腰砕けはあんまり見ないであげてください
- 「腰砕け」なんてシャレにならない決まり手で金星配給しちゃってかわいそう
- 3人目のお子さんが生まれたばかりなのに。しっかり治して次場所につなげてほしいです
- Go To トラベルキャンペーンとかけて「鶴竜vs遠藤戦」と説きます。その心は、どちらも決め手が「腰砕け」
- 鶴竜は二週間の治療で何よりだが国交相は治癒できないだろう…
出典:twitter
まとめ
今回の記事をまとめると以下の通りです。
- 半年ぶり観客入りの大相撲7月場所。鶴竜が横綱初の腰砕けで金星献上
- 腰砕けは非技の一つで、技を掛けられてないのにバランス崩し自ら倒れる
- 一般用語でも「物事が途中で止まったりだめになる」の比喩でしばしば登場
新型コロナを防ぐ数々の工夫をしながら、ようやく本場所開催にこぎ着けた大相撲ですが、いきなり最高位の1人が欠け「白鵬1人横綱」に。横綱鶴竜は場所前の稽古で肘を痛め、本場所でさらに傷を深めたといいます。初日の取組では、得意とする右で前まわしをつかみながら安易に右足を払い、かわされて自滅。土俵上で苦笑いを浮かべた様子からも、体が万全でなかったことが分かります。
5月の夏場所が中止になり、出稽古も禁止されるなど「コロナ休場」の間力士たちには制約が多く、相撲勘や実戦的な稽古不足を心配する声もありましたが、横綱のまさかの腰砕けはそれを証明しているかのよう。技巧派横綱として大相撲を支えてきた鶴竜も8月で35歳。このところ休場がちでもあり、ケガの回復具合が心配されます。