横浜F・マリノスに所属する中村俊輔のジュビロ磐田移籍が正式に決まった。
2010年にエスパニョールからマリノスに復帰した際、そのままマリノスで現役を引退するものと思っていただけに今回の移籍は残念で仕方がない。この移籍は望んでいたものではなく、クラブに対する不信感からだろう。
移籍を決断した理由を振り返ってみたい。
長期在籍選手に対する冷遇
定期的にゴタゴタ騒ぎを起こすマリノスのフロント。過去には井原正巳、山瀬功治、松田直樹などの中心選手に対して無情な通告を行ってきた。今回は中澤佑二、小林祐三、榎本哲也という長年在籍する選手がターゲットになった。
3年連続フル出場を果たしたDF中澤佑二に対して
横浜は4日、各選手に来季契約を通知し、3年連続フル出場した元日本代表DF中沢佑二(38)は50%近いダウンとなる推定年…
3年連続フル出場を果たしたDF中澤佑二に対して半額提示。遠回しに「辞めろ」と言われているように感じても仕方がない。慌てるように、公式サイトで表明という異例の事態。
その後クラブ側も反省して条件は改善されたようだが、印象は非常に悪かった。
6年間ほぼフル出場を続けた小林祐三の契約延長なし
まだ天皇杯があるから本当のお別れはその後に。
まだチームに貢献したいし残せるものがあると思う。
もうここ数日泣き疲れました。
しばらく泣きたくないのでみなさん、明るく俺に話すときは明るく話してください。
7日のファンサービスにいらしてくれる方は是非そこんとこよろしくです。— kobayashiyuzo13 (@KobayashiYuzo13) November 3, 2016
世代交代とはいえまだ31歳。
横浜一筋27年のGK榎本哲也が浦和レッズへ移籍
【ヨコハマ・エクスプレス】 「話を聞いた瞬間、頭が真っ白になった。プレーヤーとしてまったく評価されていない」 条件提示は『来季の単年契約兼GKコーチ』だった [榎本哲也の浦和レッズ完全移籍について] https://t.co/z0Udx2GUHG #fmarinos pic.twitter.com/wLon9yaJHl
— Yokohama_EX (@Yokohama_EX) January 7, 2017
浦和レッズへの移籍でステップアップにも見えるが、本人のファーストチョイスはマリノスで引退することだった。
浦和は7日、横浜ひと筋27年のGK榎本哲也(33)の完全移籍による加入を発表した。榎本は横浜の下部組織に所属し、02年に…
チーム作りの一つに若返りを図りたいというのは理解できる。ただ、放出するにしても直近の出場機会が減ってるなど、フロント側には言い訳が必要だ。この点は鹿島アントラーズが上手く、長年在籍して他チームへ移籍した本山雅志、野沢拓也、青木剛らはチームを離れる前はベンチ要員。つまり、チームから「要らない」と言われたら首を縦に振る他ない状況だった。
ここまでのフロントの動きに対し、選手から不満が出るのは当然のこと。ネガティブなニュースが続いた後、慌てて中村俊輔を優遇する旨の声明を出したようだが、これも結果的に逆効果となった。
磐田から正式オファーを受けている横浜の元日本代表MF中村俊輔(38)が、クラブの対応に困惑の表情を浮かべた。…
モンバエルツ監督続投
2015年から指揮を執るモンバエルツ監督に対して不満の選手は多い。
去就問題が二転三転していた横浜のモンバエルツ監督(61)が前日21日の続投決定後、初めて取材に応じた。…
成績も2015年が年間7位、2016年が年間10位と2季連続の無冠に終わっている。責任の全てが監督にある訳ではないものの、選手からは監督のコミュニケーション不足、戦術に対する不満が上がっていた。それに加えて中位を彷徨った成績。それでもクラブはモンバエルツ監督の続投を決断した。さらに年俸アップ…。長期在籍の功労者はあっさり切り、中途半端な成績を残した監督は残留&増額するチームなんて他にはない。
マリノスの経営状況
クラブは財政面の問題から、2014年にマンチェスターシティなどを運営するシティ・フットボール・グループの傘下になった。現在の運営はシティ・グループから来たフロント陣の意向が大きいとも言われている。2015年にマリノスタウンを閉鎖、ベテラン勢の切り捨て、モンバエルツ監督続投は、その意向に沿った形の可能性もある。
2016年から日産スタジアム横にある日産フィールド小机や球技場で練習するようになった。専用の練習場ではなく、マリノスタウンのような豪華な設備もない。体のケアが必要なベテラン選手にとって、スモールクラブのような環境は厳しいだろう。
クラブとして厳しい時こそ、選手、スタッフ、フロントが団結しないといけない。
「フルタイム出て50%近いダウンはどの選手でも不安になる。年齢も年齢だし、下がることを拒否してるわけではない。そこは伝えました」
選手の年俸を下げざるを得ない状況に陥ったのは仕方がない。その際に高給取りがターゲットになるのもプロの世界では当然。しかし、繰り返しになるが、今回の件は例えシティ・グループが主導であっても配慮が足りなかった。中澤佑二との交渉(2回目)でフロントは「反省した」との弁だが、何年も前からこのクラブはこういう対応なのだ。
中村俊輔は割り切って残留しようとすればできた。放出対象の選手ではなかったし、中澤のような減俸もなかった。復帰した際に語った「生涯マリノス」は可能だったが、それでも移籍を決断したのは間違いなくフロントの汚点。理由を考えれば必然だったとも言える。その他のベテラン切り含め、フロントのアマチュアっぷりにサポーターはいつまで我慢しなければならないのだろうか?
中村俊輔の残り僅かな現役生活は穏やかに
中村俊輔がジュビロ磐田へ移籍することによって得られる年俸はマリノスより落ちる(報道では推定年俸8,000万円で、マリノスが提示したのは1億2,000万円)。それでも、お金ではなくサッカーのみに集中したい、それがマリノスではできないと判断して移籍した中村俊輔を批判することはできない。
正直今年39歳でフル稼働は厳しく、戦力にならない可能性もある。それでも、残り僅かな現役生活を後悔なく送ってほしいと心から願っている。