コロナ禍の中、異例の2020シーズンを終えたNPB。日本シリーズと前後するように、特にセリーグの中でDH制導入に関する議論が活発になっています。
ところでこのDH制導入、日米のプロ野球ではいつから始まったのでしょうか。採り入れるメリット、デメリットは何なのかと併せて考えてみました。(出典:Wikipedia、各スポーツメディアサイトなど)
DH制はいつから?
プロ野球のDH制。日本では指名打者制とも呼ばれますが、そのDH制導入の歴史をまず振り返ってみます。
そもそもDH(指名打者)とは「野球の試合で攻撃時に、投手に代わって打席に立つ攻撃専門の選手」のことです。本来の野球のルールでは1チームの選手9人が順番に打席に立つので、投手も当然その一人なわけですが、特に近現代のプロ野球ではプレーの専門化が進み、投手は投球専門に特化する傾向が強まっています。
このため投手はおのずと打撃が不得意に。そこで球界ではチームの得点力を落とさないよう、攻撃時には投手の代わりに、バッティングだけを専門とし守備はしない選手が打席に立つルールを新たに考案しました。これが「DH制」です。
発端はMLB。1972年、過度な投高打低状態にあったアメリカン・リーグでは、点が入らず試合の面白みがないため多くの球団で観客動員数が低迷。そこでアスレチックスのオーナーが得点力アップ策としてDH制を考え出し、73年からア・リーグで導入されました。
日本でもそれからほどない75年、やはり人気低迷にあえいでいたパ・リーグが、MLBア・リーグの成功に倣ってDH制導入に踏み切りました。ではそのメリットとデメリットはどこにあるのか、次項で整理してみましょう。
↓(おまけ)「日本一DH」デスパイネ親方の珍場面集
DH制のメリットデメリットまとめ
「一体いつからなの?」か調べてみると、創設した米MLBのアリーグでは1973年から、日本のパリーグでは75年からだと分かったDH制導入。ではそのメリットとデメリットはどこにあるのか、両論にまとめてみました。
DH制のメリット
・投手の体を守り投球に集中できる(=打席に立たないため死球や疲労・捻挫などのリスクがない)。
・打線に切れ目がなくなり、野手全体の打撃成績がアップする。
・その結果得点が入りやすくなり、見て面白いエキサイティングな展開になる。
・打撃が得意な選手の出場機会が増える。
・先発投手交代の必要がなくなり完投率が上がる。
・各選手の専門性がより高まり、野球の実力・レベル向上につながる。
DH制のデメリット
・「投げ打ち走り守る」の野球の伝統が根本的に覆り、本来の姿をゆがめる。
・投手への代打や人選は監督采配の肝。それがなくなり面白みが減る。
・投手が攻撃に参加するという考え方をなくしてしまう。
・ベーブルースや大谷翔平など二刀流で成功する選手の可能性を狭める。
・仕返しの恐れがないので、投手が平気でビーンボールを投げる。
・好投手が完投しやすくなるため、実際は得点力は大して上がらない。
・導入・非導入のリーグ間で投打の成績を厳密に比較できない。
・バントが少なくなり野球の醍醐味が減る。
巨人が遂に導入提案!
こうした〝見解の相違〟から長らくセパで異なるDH体制が続いてきましたが、今年は特にセリーグで導入議論が活発に。背景には「セパ実力差問題」が看過できなくなったことがあります。
セパ交流戦やCSが導入された2000年代以降、セパの戦力差が如実に広がり、交流戦ではこれまでセの勝ち越しは09年のみ。さらに日本シリーズでは12年に巨人が優勝して以降、8年連続でパ球団が優勝。そして19・20年に日本シリーズで巨人が8戦全敗すると「DH制導入してないからこうなった!」との見方が一挙に噴出する形になった訳です。
遂に巨人は先日のセリーグ理事会で「来季のDH制暫定導入」をオーナー名で正式提案。しかし他球団からは「拙速」「DH制以外のことを考えるべきだ」と賛同が得られず見送られました。果たして今後の議論はどう進むのでしょうか。
DH制セでの導入検討にネットの反応は?
- 「伝統」を別にすればいいことずくめのように思える。なぜ巨人以外は頑なに拒否するのか?
- 「パにセが勝つため」だけが目的だとしたら大きな勘違い。パが強くなったのはドラフト戦略、育成等地道な方策あってのこと。DHはその一部でしかない
- 時代が変われば野球も変わる…
- 少なくとも打席にやる気ゼロの投手が立つシーンがなくなるだけでも良い事だとは思うけど
- 采配の妙がなくなるのは残念。でも投手はよりレベルアップするかも。でもでも投手がヒット打つサプライズも結構盛り上がるし……色々悩ましい
出典:twitter
まとめ
今回の記事をまとめると以下の通りです。
- セリーグでDH制導入議論が活発化。巨人が提案も理事会で見送りに
- MLBで73年、パで75年に導入。セでは「伝統ゆがむ」と反対論強く
- ここ20年セパ実力差拡大。格差解消やコロナもあり選手は賛成大勢
巨人が積極的に提唱するセDH制導入については、プロ野球選手会も好意的です。選手会が一部アンケートを行ったところ、強い反対意見はなく9割以上が賛成。「(コロナ下で)投手の負担が減るのはありがたい」「国際大会でも採用しているし自然な流れ」と肯定派が大勢だったそうです。
ただ導入すればチーム編成やスカウト、トレーニング方針などが根底から変わるため逡巡する球団も多い様子。今後、選手会やファンの強い要望が高まれば、リーグを動かすことにもなるかもしれません。
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